2013 Fiscal Year Research-status Report
途上国における学校でのメンタルヘルス・プロモーションについての研究
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24590800
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
秋山 剛 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (20579817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 潤 琉球大学, 医学部, 教授 (70225514)
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Keywords | 途上国でのメンタルヘルス / 課外活動 |
Research Abstract |
途上国の学校におけるメンタルヘルスプローモーションについての研究実施にあたり、今年度の前半は、主に前年度に実施した研究活動の結果分析を行い、さらに実施の整備をすすめ、教育介入内容を確定させた。 ア)学生および学校関係者に対するメンタルヘルス・リテラシーとスティグマ等態度の介入研究 介入前に、アジアにおけるメンタルヘルスについての一般住民における知識と態度について、さらに資料と文献の整理を実施し現地で仏教とその土地固有の精霊信仰の文化的な側面と作用を注意することを確認した。また、教育介入のための、カリキュラムと、知識に関する調査票を作成した。これは、カナダの公的機関で作成されたものを基に、現地での理解のしやすさを考慮して、さらに修正をくわえたものである。このほか、スティグマ等、態度について質問する調査票も、学童用ならびに成人用の2種を使用する予定であるが、念のため、翻訳及び使用について作者の許可を得た。上記により、メンタルヘルスに関する知識と態度の両面から、調査を実施する準備が整った。 イ.途上国での、学生のセルフ・エスティームへの学校課外活動の効果についての研究 初年度に課外活動の状況調査を行い、現地での介入も現実的になったことから、介入に使用する教材などの内容をさらに検討、内容の具体化を行った。また、前年度に実施した介入モデルのパイロット的な実施結果を分析し内容について内容を固めた。これらの結果をもとに、先行研究の学校課外活動でのマニュアル等の内容を修正し、教材の準備を整えた。こちらも念のため、25年度に作者から途上国での展開に際して許可を得た。また、世界的な視野により分析を行うため、アフリカ、ケニアの課外活動の状況の観察を実施し、学校トーナメント開催の状況などを確認、介入モデルの世界的な適用の妥当性を確保した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象地域の文献情報および前年度に実施されたパイロット的な介入実施により得られた知見をもとに、調査研究の方法、及び介入に使用する教材の最終検討を行い、調査実施の準備は整った。 本研究は当初、タイのミャンマー国境にあるミャンマー人移民学校を対象とすることを予定していた。しかしながら、ミャンマー国内での内戦停戦と、それに伴う学童のミャンマー国内への学生の帰還促進が現地学校の一部で行われるようなったことや、移民学校のタイ学校との統合が検討されることになったことなどの外部要因から、現地ミャンマー人移民学校の(移民)教育おける存在意義と、教育介入の対象とすることに対して再考しているところである。また現地移民学校の教育委員会の分裂などの状況の変化がおきた上、現地協力機関の人事異動などの要素も重なったこともあり、実際の実施を保留し、研究のデータコレクション及び介入を平成25年度中に行えなかった。そのため、やや遅れているとした。 しかしながら、25年度は本務の勤務地がアフリカになったことから、アフリカでの学校現場の観察を行い、アジアとはまた違う状況についての知見を得ることができた。本研究で策定する学生についてのメンタルヘルス・リテラシーまた課外活動による教育介入は、アフリカでも実行可能であり、タイ、ミャンマー国境地帯にこだわらず、展開をする方向で決定した。特に、アフリカでの学生の状況および教師と学生の関係について、現地の状況を知り得たことは大きい。今後、作成する介入モデルがより世界的な視点をもって検討できるようになった。今後の研究発表や報告にも多いに役立つ知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初、タイのミャンマー国境にあるミャンマー人移民学校を対象とすることを予定していた。しかしながら、ミャンマー国内での内戦停戦と、それに伴う学童のミャンマー国内への学生の帰還促進の動き、また現地移民学校の教育委員会の分裂などの外部条件の変化がおき、また現地協力機関の人事異動などの障害も重なったこともあり、これを機会に、移民学校という比較的社会的立場が特殊な学校を対象とせず、途上国の一般的な学校全般を対象とすることを検討している。この研究により策定されたメンタルヘルス・プロモーションを世界的に展開ために、介入モデルとしてより堅牢なものとする予定である。今年度の研究実施場所として複数の候補を検討しているが、日本から地理的に近いアジアで、英語が通じる住民が多く研究実施が容易なことから、フィリピンのレイテ島等を検討している。とくに、同地では昨年、台風による災害もあり、ポスト・ディザスターにおける学生、学校におけるメンタルヘルス介入や社会的支援について、興味深いモデルを提案できる可能性があることから、現在、現地と交渉しているところである。本研究で使用予定の調査票および介入内容については、当初から途上国で複数の国、地域で対応可能なものを目指しており、当初から世界的な展開は視野にいれていたため、一国、一地域にこだわらず、積極的に進めていくことが可能と思われる。メンタルヘルス・プロモーションが必要な地域、また学校に迅速に展開できるモデルを策定し、現地での介入を本年度中に展開させる予定である。その後、投稿や報告を学会などで早急に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
途上国の学校でのメンタルヘルス・プロモーションについて、より頑健なモデルを作るにあたり、アフリカ、ケニア共和国の配属先での近隣学校での観察を行ったため、今年度は予想外に介入等にかかる費用がかからなかったため。 平成26年度に、介入およびベースライン調査を一気に行う予定である。短期間に調査を実施するため、効率的な準備と綿密な実施計画の策定を行うにあたり、関係者との連絡調整費用、また人件費に予算を30万円ほど使用する。このほか、研究実施場所への国外旅費に10万円を2回ほど予定している。
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