2013 Fiscal Year Research-status Report
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24590806
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
小田切 陽一 山梨県立大学, 看護学研究科, 教授 (20152506)
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Keywords | 自殺 / 損失寿命 / 早死 / 失業 |
Research Abstract |
前年度の研究成果において、わが国の主要死因である悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、不慮の事故による損失寿命は1993年以降、基本的には低減しているにも関らず、自殺による損失寿命だけは例外的に増大傾向にあることが示され、とくに1998年に急増して以降も、増加し続けており、男性でその傾向がより顕著であることが明らかにされた。このことの背景として中年期の自殺率の低下と若年層における自殺率の増大が想定されたことから、平成25年度は、都道府県別の自殺による損失寿命(YPLL65)と、若年者の自殺との関連が疑われる要因を抽出することを目的として、都道府県別の公的統計データを収集し、それらを(1)人口・世帯、(2)産業、経済(雇用を含む)、(3)医療・福祉の各要因に大別して、YPLL率との相関係数を求め、地域相関研究を行った。結果として、雇用・経済関連の要因との関連が示唆されており、とくにその観点からは、年齢と時代、世代リスクの関連性を追及する意図で、Age-period-Cohort(APC)分析を追加して実施した。1993~2010年の労働力調査より完全失業率や雇用形態別では非正規雇用割合との相関が強く認められた。また自殺率と完全失業率のAPC分析の結果からは、男性での40-50歳の失業リスクの増大、男女に共通してバブル経済崩壊後2002-3年までの時代による自殺リスクの増大が合致するトレンドを示し、両者の関連性が示唆された。また損失寿命との関連では、雇用形態(非正規雇用割合)とのトレンドに関連が示唆される結果が得られているが、他の抽出された要因から、若年層の自殺との関連の想定される要因として(未婚者割合・大卒就職率等)等の要因が抽出された。重回帰分析の候補要因の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自殺の都道府県別損失寿命(YPLL65)について直近の年度を含めた算出は当初の研究計画の通り進められ、終了している。この結果については、H25.9にオスロで開催された国際自殺予防学会において発表した。また、本研究で把握された自殺の損失寿命の増大傾向に対して、若年層の自殺率の増大が背景にあることが想定されるため、社会要因については、人口・世帯、社会・経済および医療・福祉要因について、存在する公的統計を収集しており、概ね終了している、これらの要因間の相関マトリクスを作成して、地域相関研究において相関に共線性を示すものについての検討を進める一方で、とくに雇用・労働要因が自殺率との強い相関をしめしたことから、完全失業率と自殺率(H25.5日本産業衛生学会で発表)、また雇用形態別には非正規雇用者割合と自殺損失寿命についてAge-period-cohort分析を計画に加えて実施できていることから、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
自殺損失寿命の背景にある社会要因について、若年層の自殺との関連が想定される要因に関して、さらに公的統計の探索・収集を行うとともに、諸要因と損失寿命の地域相関分析を進め、抽出された要因から、多重共線性の検討などを経て、説明要因の候補を絞り込んだ上で重回帰分析を行う計画である。また、損失寿命と各社会要因を入れたクラスター分析によって都道府県間の類型化を行い、人口・世帯、経済・産業、医療・福祉の視点から関連要因との関連において、自殺の損失寿命の地域特徴を明らかにし考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画段階での論文作成による、英文校正費用、別刷代金の執行が遅れているため。 論文作成に合わせて、英文校正費、別刷代金として執行する計画である。
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Research Products
(2 results)