2012 Fiscal Year Research-status Report
高齢者慢性疾患のケアに対する汎用性の高いシステムを用いた遠隔診療の臨床的有効性
Project/Area Number |
24590815
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
本間 聡起 杏林大学, 医学部, 准教授 (30190276)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遠隔診察 / テレケア / テレモニタリング / 高齢者診療 / 内科診察手法 / 生活習慣病 / 慢性疾患 / 老年症候群 |
Research Abstract |
今年度は遠隔診療(テレケア)の本実験に向けて、研究フィールドの協力スタッフとの協議を重ねて次年度初めから開始する準備を整えた。その中でフィールドとして予定した施設のうち、東京都内のものは民営化に伴い協力が困難となったため、対象施設を福島県郡山市の老人ホーム施設群に限定し、その施設利用者状況を調査した結果、30~35名の予定人数を確保できる見込みとなった。 また本研究の目的である、高度なIT技術と知識がなくても、通常のパソコンを扱う程度のITリテラシーのある一般の医療関係者でも導入が可能な、市販の機器や通信サービスから成るテレケア・システムを構築し、接続試験を概ね完了した。このようなテレケア・システムは、以前、同一施設内を結ぶ疑似遠隔での実用実験で使用したが、この数年間で通信規格の標準化が進み、測定機器である生体センサの通信方式についても、Bluetoothによる無線方式のほかに、現状では、よりデータ送信の安定度が高いNFC(フェリカ)による市販品が多く市場に出てきた。このため、日常のモニタデータをアップロードするために、実験協力者自身が施設の事務所まで測定機器を持参する方式を当初、計画していたのを改め、ホームのスタッフが実験協力者の居室を巡回する際にスマートホンを持参し、これをゲートウェイ機器として測定機器にメモリされたデータを携帯電話網からアップロードする方式に変更した。これにより、本システムは施設高齢者ばかりでなく在宅高齢者にも応用可能なものになった。また、月1回の遠隔診察に際しても、リアルタイムで遠隔聴診のできる電子聴診器システムも含めた6種類の生体モニタにテレビ電話を備えたシステムを構築し、その接続試験も完了した。以上から、一般の医療者にも容易に導入可能で、かつ、過去の経験も踏まえた運用上の問題点も克服した、汎用性の高いシステムを本実験に供用可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、本実験を今年度末に開始できなかったが、研究目的の遂行には、当初計画より質の高いシステムを構築することができた。その具体的内容は、 1. 当初、予定していた2か所の実験フィールドのうち、東京都の施設については、民営移管の関係で施設側の協力が困難になった。このためもう一つの予定実験フィールドである福島県の高齢者施設群の中の1つないし2つの施設で目標対象人数を設定できるように調整した。 2.本研究では、その成果が直ちに一般の臨床の場に適用できるような遠隔診察(テレケア)・システムを提示することが目的であるため、市販の機器と通信システムを用いている。その生体センサの種類に変更はないが、予定していた機器・システムの開発や商品化がメーカー側で遅れたものがある一方で、通信システムがより扱いやすいものになったものもあり、それらの機器のベンダーとの折衝や接続試験に時間を要した。例えば、電子聴診器所見については、患者側と遠隔側の医師の両者のPC上にリアルタイムで共有するシステムの市販が遅れており、当該年度末に至って接続試験を完了した。 以上より、当該年度末に本実験を開始する予定であったが若干の遅れが生じた。しかし、現時点で、実験フィールド側の協力により実験協力者の選定作業に入っており、使用する携帯電話網の業者による通信環境の調査も終了し、各生体センサの接続試験も次年度5月前半までに完了する予定で、6月には本実験が開始できる見通しがたった。1人の患者につき1か年の実験期間であるため、3年間の期間中に本実験と実験終了後の解析に要する期間も確保できる見通しで、ほぼ予定通りの研究遂行と考える。さらに実験システム自体も当初より操作・運用が容易で通信精度も向上した機器やシステムで構成されたものとなったため、当初計画より操作性の向上した実用的なプロトコールで実験が行えることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、平成25年6月より12月までに順次、エントリーした実験協力者への協力内容の説明と同意を得たうえでの遠隔診察を開始する。当初の予定通り各実験協力者につき1か年の期間、日常的なモニタリング(血圧、体重計、歩数計、体温計)と月1回の遠隔診察(テレケア)を行う。なお、上記モニタしたデータのサーバへのアップロードについては、当初、実験協力者が各自のモニタ機器を居室から各施設の事務所に定期的に持参してパソコンを介して実施する予定であったが、施設スタッフが定期的に巡回しながら、通信方式もより安定度の高いNFC(フェリカ)によりスマートホンから携帯電話網でアップロードする方式とした。これにより、実験協力者が測定機器を居室から施設の事務室まで運搬する負担がなくなったため、配布するモニタリング機器について医学的有用性があると思われる体重計を追加できた。また、各実験協力者のかかりつけ医での診療録の確認も定期的に開始する。 本システムの接続試験については、平成25年度の初頭までに終了する予定のため、システムの構成内容と接続試験に関して学会等での発表を年度内にも行っていく計画である。実験全体の稼働状況や医学的効果判定については、平成26年度の全実験協力者の遠隔診療実験の終了後に、順次、成果の公表を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. システムを構成する機器の購入・・・現在、実験協力者全員に配布する機器の予定個数のうち約半数のみ購入済みのため、エントリー状況をみながら随時、追加購入する(50万円程度) 2. サーバ・ASP契約、通信回線料・・・遠隔診療の本実験の開始に伴い、各データの格納先のサーバ使用・管理料、およびホームゲートウェイとなるスマートホンの毎月の回線使用料が平成25年5月より順次、発生する(平成25年度で月合計6万円×今年度分10か月程度)。契約内容は、種類によって異なるが、半年または1年分の一括契約となるものもあるため、その契約期間に応じて今年度(本研究3年の期間のうち2年目)内の支出も若干の変動があり得る。 3. 謝金・・・実験フィールド施設での遠隔診察やモニタデータ収集などの作業の実験協力に関する人件費(平成25年度で月5.5万円×10か月程度) 4. 旅費・・・実験を遂行する医師の実験フィールド(福島県)、および学会参加と発表のための出張旅費(平成25年度で40万円程度) 5. その他・・・福島の施設で予定対象数を満たすため、同系列の別の施設の建物内に遠隔診療用の機器一式を揃える必要が生じた場合は、このため約30万円を要する。このほか、運搬費、電池等の消耗品などの雑費で5万円程度を予定する。
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