2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590853
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
那谷 雅之 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70241627)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 熱中症 / 高温暴露 / 心臓 / 直接的傷害 |
Research Abstract |
熱中症の死因判定の1つとして、井上らのこれまでの肺脂肪塞栓の研究から、熱暴露により脂肪肝由来の脂肪が溶け出して、血流に乗り、肺脂肪塞栓を形成することが明らかとなっている。しかしながら複数の症例について検討を行ったところ、心疾患を有する者において多くはこの肺脂肪塞栓を認めないことが多く、心疾患を有する場合には脂肪塞栓を形成するに至るよりも前に、短時間の内に熱暴露で死亡する可能性が示唆された。そこで心疾患モデルラットを作成して熱暴露をおこない分子病態学的手法でそれを証明することが本実験の要である。 心疾患モデルラットを作製するにあたり冠状動脈結紮が有効と考え、本実験を遂行することとなった。平成24年度は冠状動脈結紮手技に至る一連の作業に多くの時間を費やすことで手技の確立をめざした。イソフルランによる全身麻酔下で、開胸を行うため気管挿管を行い、その後心臓の冠状動脈を結紮し、閉胸するという過程があるが、それぞれの作業に熟練を要するために1つ1つのステップが重要な課題となった。これまで実験における熱中症モデル作成にあたりラットは300g前後が最適とされていたが、気管挿管及び肝臓動脈結紮をおこなうにあたり、それよりもやや小さめのラット、200g前後を用いることで良好な冠状動脈結紮が行えた。これは人工呼吸器の流量、挿管チューブと気管の比率および胸骨の柔軟さから実験を繰り返し、試行錯誤し、たどり着いた結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ラットの冠動脈結紮術における成功率にバラつきがあり、それが今後の実験過程や実験結果に大きく影響を及ぼすため、慎重を期する必要がある。一連の作業において発生した問題点は、開胸方法、心筋の冠状動脈の結紮及び閉胸方法である。個々の方法と問題点を具体的に述べると、開胸方法においては胸部正中左の第4、5肋間の横切開と、第4、5肋骨を含み縦切開を試行した。前述方法では出血量は少ないが、術野が狭いためにその後の冠動脈結紮法に困難を極める。後述方法においては術野が広く確保でき、冠状動脈結紮は容易に行えるが、肋間動静脈に損傷を与えるために出血が多くなってしまうという結果となった。冠動脈結紮法においては、その位置と結紮強度の模索に労力を費やした。結紮位置及び強度が心筋梗塞の発生率の大きなファクターとなる。すなわち、心筋梗塞の発生部位及び発生率にバラつきが生じると、後の熱中症の比較実験において整合性のない結果とになりうるため、バラつきのない冠状動脈結紮モデルラットの作製がこの実験の要となる。さらに閉胸時には、胸腔内の残存血液による肺の癒着や気胸発生などの問題が生じた。さらに手術時間が後の生存率へ大きな影響を及ぼすことがわかった。これらの事を加味しながら最適な位置や手術時間の短縮を模索するために多くの時間を費やすこととなったが、その方法はほぼ確立しつつある。今後、さらに良好な冠動脈結紮モデルが完成した場合の熱中症モデルの熱暴露方法やその他の手技はこれまでの実験から確立しており、スムーズな実験が可能であることが予測できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本実験の要は、心筋梗塞部位や術後の予後に手技的な影響を受けないバラつきのない冠動脈結紮モデルの作製である。今後さらに実験症例数を増やしバラつきを減らすことが重要である。加えて、冠動脈結紮手技の精通者からの教授、援助により手技をさらに練磨し、手術時間の短縮を行い良好な予後をめざす。冠状動脈結紮後の短期的な影響や手技の影響を考慮すると、冠状動脈結紮後1週間程度は高温暴露実験を行わず、経過観察をし、手術による損傷を回復させることが必要と考える。1週間後、手技による心筋梗塞のバラつきを検討するうえで心臓の病理標本を作製し、均一な心筋梗塞巣が得られるまで同一の実験を繰り返し、均一な心筋梗塞巣が確実に得られるようになった後に次の熱暴露の工程に移ることが正しい実験結果を導き出すうえで重要であると考える。熱中症モデルラット作成における高温暴露の実験方法や心負荷を検出するためのプロトコールはこれまでに確立しているため問題はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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