2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590853
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
那谷 雅之 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70241627)
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Keywords | 熱中症 / 高温曝露 / 心臓 / 直接的傷害 |
Research Abstract |
熱中症の死因判定方法の1つとして、井上らのこれまでの肺脂肪塞栓の研究から、脂肪肝由来の脂肪が熱暴露により溶出して、血流に乗り、肺脂肪塞栓を形成することが明らかとなっている。しかしながら複数の症例について検討を行ったところ、心疾患を有する者において多くはこの肺脂肪塞栓を認めないことが多く、その理由として、心疾患を有する場合には脂肪塞栓を形成するよりも前に、短時間の内に熱暴露で死亡する可能性が考えられた。そこで、心疾患モデルラットを作成して熱暴露を行い分子病態学的手法でそれを証明することが本実験の要である。心疾患モデルラットを作成するにあたり冠状動脈結紮が有効であると考え、本実験を遂行することとなった。 平成24年度は冠状動脈手術を行うにあたり心臓へのアプローチや呼吸管理に難渋したことで、低い成功率しか得られなかった。そこで平成25年度は冠状動脈結紮手術の方法を見直すことにより、最小の手術創で心臓にアプローチができ、かつ短時間で冠状動脈結紮術を行うことが可能となり、ほぼ100%の結紮術成功率を達成することができた。しかしながら、当初は術後7日目に行った梗塞部位の均一性がとれていないことから、個体毎の冠状動脈走行に対応した結紮部位の修正が必要となり修正を施した。その結果として、心筋の前壁から側壁に至る梗塞を均一して得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
冠状動脈結紮手術の不備からバラツキのない心筋梗塞モデルラット作成に至るまでの経過に時間を費やしてしまった。手技が確立したことから今後はスムーズな実験進行が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
心疾患モデルラットを従来から当教室で行っている熱暴露(熱暴露条件:37℃90分)を行ったところ、現在の実施数は少ないが、正常対象ラットに比べて熱暴露中に死亡するケースが多く見られた。このことから、心疾患では熱に対する脆弱性が正常対象よりもきわめて高い可能性があり、今後、体温上昇度合いや死亡時間を実験数を増やすことで確かなデーターとして補足していく予定である。さらに熱暴露に対する脆弱性を確認後、どのような機序で脆弱化しているのかと言うことを心筋中のmRNA検索や蛋白発現等で正常対象ラットと比較する必要がある。加えて、心筋梗塞の早期診断に有用であるトロポニンTは冠状動脈結紮術24時間後に採血して測定したところ、いずれも強い陽性反応を示したが、7日後には陰性化していた。さらにこの後、熱暴露を行ったところ、熱暴露に起因する心負荷が生じた可能性があるにもかかわらずトロポニンTは再度陽性化しなかった。このことは通院歴の無く、潜在心疾患を有している可能性がある患者に対して初期診断でトロポニンTで心疾患の有無を決定するということが危険であることを示している可能性が考えられる。併せて、この様なトロポニンTの動態の機序も精査していく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
冠状動脈結紮手術の不備からバラツキのない心筋梗塞モデルラット作成に至るまでの経過に時間を費やしてしまった。 冠状動脈結紮手術の手技が確立したことから、今後はスムーズな実験進行が期待され、遺伝足発現、タンパク発現について検討する予定である。
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