2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代薬毒物スクリーニング法の開発を目指した抗体ファージライブラリーの構築と応用
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24590859
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
笹尾 亜子 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (80284751)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 薬毒物スクリーニング / 法中毒 / 組換え抗体 / 一本鎖抗体 / フルボキサミン / 向精神薬 |
Research Abstract |
本研究は抗体ファージライブラリー法によって抗薬物抗体を迅速に検索・調製し、それによる薬毒物の免疫学的スクリーニング法を構築する事を目的とするものである。平成24年度は、モデル薬物として選択的セロトニン再取り込み阻害薬フルボキサミン(FLV)に対する一本鎖抗体(FLVscFv)を調製し、抗原に対する結合活性の検定や構造機能解析を行う事を計画した。 既に調製済みのFLVscFv産生大腸菌株を液体培地にて培養し、タンパク質の発現誘導を行った後に培養液を遠心分離して菌体を回収した。菌体は緩衝液で再懸濁して氷冷下で超音波破砕し、破砕液を遠心分離して上清を除いた。6M塩酸グアニジンを含む緩衝液で沈殿物を再溶解し、室温下で数日間混和した後にアフィニティクロマトグラフィーにて目的分画を回収後、透析法にて試料中の変性剤を徐々に除いてタンパク質の巻き戻し操作を行った。さらにゲルろ過クロマトグラフィーで精製し、FLVscFv分画を濃縮してELISA法で活性の検定を行った。その結果、1L培養当たり約6.97mgのFLVscFvが高純度に得られ、ELISA法にてFLVに強く結合する事が確認された。 さらにFLVとFLVscFvとの詳細な相互作用解析を行うため、Biacore2000を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)解析を行った。つまり、卵白アルブミンとFLVの複合体をBiacore専用のセンサーチップに固相化し、これに対するFLVscFvの結合及び解離速度定数を算出した。その結果、結合速度定数は(2.3±0.18)×105(M-1s-1)、解離速度定数は(5.1±0.66)×10-4(s-1)、解離定数は(2.2±0.43)×10-9(M)であった。一般的なモノクローナル抗体の解離定数は10-7~10-9(M)である事から、得られた一本鎖抗体は十分な抗原結合活性を持つ事が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「抗フルボキサミン一本鎖抗体(FLVscFv)の調製と構造機能解析」を実施するよう計画しており、その細目として1)FLVscFvの調製、2)FLVscFvの構造機能解析を予定していた。1)については、予定通りに実施し高純度なFLVscFvの調製方法を確立した。また、2)についてはBiacore2000によるFLVとFLVscFvとの詳細な相互作用解析を実施し、その結合速度定数等を得る事ができた。しかし、その後に実施を予定していたBiacoreT100を用いた熱力学的相互作用解析については、センサーチップに固相化する抗原(卵白アルブミンとFLVの複合体)に十分なFLV量が認められなかったため、その調製方法に改善が必要となった。現在は調製法の改良を試みており、当初の計画よりやや遅れが出ている。しかし、概ね計画通りに進行している事や調製したFLVscFvが想定以上の抗原結合能を持つ事が確認できたため、今後予定していたファージライブラリーによる高親和性一本鎖抗体の調製を省略する事が可能と予想できる事から、本研究の進捗状況として「(2)おおむね順調に進展している」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、昨年度に作成したFLVscFvの特異性やその他薬物などに対する交差反応性を調べ、その特性を明確にする。また、引き続き当初予定していた「抗体ファージライブラリーの調製と新規抗体の創出」という課題のもとに以下の研究を推進する事を計画している。具体的な方策を下記に示す。 (1)一本鎖抗体ファージライブラリーの調製 平成24年度の結果に基づき、既に調製済みのVH 、VL遺伝子(重鎖、軽鎖の可変領域発現遺伝子)に対してError-prone PCR(アミノ酸の変化をタンパク質に導入するためのランダムな突然変異導入法の1つ)を行って突然変異を導入する。シークエンス解析を行って十分な変異の導入率等が確認された後、リンカーで繋いだVH 、VL遺伝子をファージミドベクターへ組み込む。これを大腸菌に形質転換し、ヘルパーファージを重感染させて一本鎖抗体ファージライブラリーを調製する。 (2)ファージライブラリーからの新規抗体の創出 (1)項目で調製した一本鎖抗体ファージライブラリーを用いて、現在、免疫学的な検出法が得られていない薬物のうちでFLVの化学構造に一部類似した構造を持つ薬物(抗うつ薬パロキセチン、ミルナシプラン等)に対する反応性を示すファージが得られるかどうかを調べる。つまり、各薬物を固相化したプレートを用意して(1)で調製した一本鎖抗体ファージライブラリーを加えてインキュベートし、プレートを数回洗浄した後に結合しているにファージを選別、一本鎖抗体を調製してその抗原結合活性を調べる。新たな薬物に対して十分な結合活性を持つ新規抗体タンパク質が得られるかどうかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年10月より産前・産後休暇及び育児休暇取得のため研究を一時中断した。そのため、平成24年度に配分された研究費の約6割を残している。 本年度は平成24年度分と本年度分経費を合算し、平成24年度に購入予定であったタンパク質精製のための機器類やカラム類、試薬類を購入する予定である。また、平成25年度の研究計画上必要となる遺伝子配列解析のための試薬類などを購入予定である。さらに、研究成果発表のための旅費や論文の英文校正のための支出を予定している。
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Research Products
(3 results)