2013 Fiscal Year Research-status Report
骨髄由来EPCの深部静脈血栓塞栓症への関与の解明と新しい血栓陳旧度判定法の確立
Project/Area Number |
24590863
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
野坂 みずほ 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00244731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 裕子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10364077)
木村 章彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60136611)
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
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Keywords | 深部静脈血栓塞栓症 / IFN-gamma / TNF-alpha / IL-6 / 血管内皮前駆細胞 |
Research Abstract |
マウスを用いて下大静脈結紮による深部静脈血栓症(DVT)モデルを作成して,その血栓における血液凝固線溶系因子,血栓溶解に関わっていると考えられるサイトカイン,およびその受容体,さらに骨髄由来線維細胞(fibrocyte),血管内皮前駆細胞(EPC)の,血栓陳旧度にともなう動態を検討している. 野生型マウスに比較してIL-6ノックアウトマウスでは,血栓の溶解が遅延することが明らかとなり,IL-6が血栓溶解の促進因子であることを見出した.同時にIL-6/STAT3シグナル伝達系の欠損が,細胞外器質分解酵素群(MMP)またウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性因子(uPA)などの血栓溶解促進因子を阻害することを明らかにした.血栓内のIL-6の解析は,剖検例においても血栓の陳旧度判定に有用な指標となり得る可能性も示唆されている.さらに,IL-6の動態を把握することが血栓症の予防や治療方法の開発に有用であると考えられた. またGFP骨髄キメラマウスを用いて深部静脈血栓塞栓症モデルを作成したところ,その下大静脈の凍結切片の血栓内に多数のGFP陽性細胞が観察できた.これは骨髄細胞が骨髄から遊走してきたことの証明になった.またパラフィン包埋切片についても,免疫組織化学的染色により,GFP陽性細胞を検出することを可能にしており,血栓におけるEPCの動態についての今後の研究の幅を広げることができると考えている. すでに野生型マウスの血栓パラフィン包埋切片のCD45とcollagen type 1の蛍光二重染色によりfibrocyteは血栓陳旧度にともなって変化し,下大静脈結紮後14日後に最も増加することが明らかになっている.さらにCD34とFlk-2の蛍光二重染色によりEPCの動態を解析することにより,血栓の予防・治療方法の開発に重要な結果を得られる可能性があると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型マウスおよび遺伝子改変マウスを用いてDVTモデルを作成し,その下大静脈のパラフィン包埋切片のヘマトキシリン・エオジン染色,マッソン・トリクローム染色を行った.さらに白血球(好中球,マクロファージ)や細胞外基質分解酵素群(MMP),ウロキナーゼ型および細胞型プラスミノーゲン活性因子(uPA,tPA),サイトカイン,ケモカイン,骨髄由来線維細胞(fibrocyte),EPCについての免疫組織化学的染色または蛍光二重染色を,用手法ならびに,自動免疫染色装置にて行っている.血栓におけるサイトカイン,MMP,uPA,tPAの遺伝子発現を,リアルタイムRT-PCRによって定量的に評価し,血栓陳旧度にともなう分子生物学的変化に関する結果を集積しているところである.特に血栓陳旧度判定においては,IFN-gamma,TNF-alpha,TNF-Rp55,IL-6の免疫組織化学的染色結果より,血栓陳旧度の基準となり得る新たな指標を見出し,研究成果の発表を予定している. 血栓形成過程におけるEPCの動態解析を行うために,GFP骨髄キメラマウスを用いて深部静脈血栓塞栓症モデルを作成した.GFP骨髄キメラマウスは,GFPトランスジェニックマウス(ドナーマウス)から骨髄細胞を無菌的に採取して,12Gyの放射線を照射された8~12週齢のC57BL/6マウス(レシピエント)に骨髄細胞を静脈投与して作成している.そしてマウスの下大静脈を3-0絹縫合糸により結紮することにより,血栓を惹起する.結紮後一定期間生存後に安楽死させ,血栓を含む下大静脈部を採取または,下大静脈内から血栓のみを採取し,これらについて凍結切片,パラフィン包埋切片,または血栓重量等の測定の後,遺伝子発現の評価に用いている.本研究の目的を達成するために,必要な結果を着実に得ており,最終年度終了までに目的を達成できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
DVTを惹起する要因が,国内外において今後も増え続けることが予想される中,本研究の結果はDVTの予防・治療方法の確立においても重要な示唆を与えると考えられる.そこで次の点に重点を置いて研究を推進する. 骨髄由来細胞の血栓部位への遊走を確認するために,下大静脈を結紮したGFP骨髄キメラマウスから採取した下大静脈組織のパラフィン包埋切片を作成して,抗GFP抗体にて免疫組織化学的染色を行い,さらに血栓およびその周辺部におけるGFP陽性細胞およびマクロファージやケモカインレセプターとの蛍光二重染色を行う.最終的にはこれらの細胞の血栓陳旧度にともなう動態を明らかにする. 経時的に採取した下大静脈組織の細胞を単離し,EPCの細胞表面抗原に対する抗体を組み合わせて反応させた後,フローサイトメーターによりEPCを検出し,血栓形成・溶解過程におけるEPCの経時的動態を検索する. 経時的に採取した下大静脈組織のパラフィン切片を作製する.各切片について,抗CD34抗体と抗Flk-1抗体の組み合わせと抗c-kit抗体と抗Tie-2抗体組み合わせによる二重免疫蛍光染色を行い,EPCを組織レベルで検出する.これまでに得られた結果と総合的に判断して,どちらの抗体組み合わせがEPC検出のためにより適切かを検討する.さらに,いずれか適した抗体の組み合わせを決定後,EPCにおけるケモカインレセプターの発現解析の結果,最も強く発現しているケモカインレセプターに対する抗体を含めた三重免疫蛍光染色を行い,より特異的にEPCの検出を試みる. 法医剖検例において,血栓試料について,基礎的実験で得られた結果をもとに,血栓溶解に関わっていると考えられるサイトカインやケモカインについての免疫組織化学的染色を行う.さらに 血栓形成および溶解過程におけるEPCの動態を解明することにより法医実務的研究へと発展させる.
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Sudden unexpected neonatal death due to late onset group B streptococcal sepsis―A case report2013
Author(s)
Kawaguchi T, Hama M, Abe M, Suenaga T, Ishida Y, Nosaka M, Kuninaka Y, Kawaguchi M, Yoshikawa N, Kimura A, Kondo T
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Journal Title
Legal Medicine
Volume: 15
Pages: 260-263
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Essential involvement of tumor-derived IDO in ovarian cancer progresssion
Author(s)
Tanizaki Y, Kobayashi A, Yahata T, Yamamoto M, Shiro M, Mabuchi Y, Minami S, Nosaka M, Kondo T, Ino K
Organizer
15th International Congress of Immunology
Place of Presentation
Milano Congressi, Milan, Italy
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