2013 Fiscal Year Research-status Report
分子インプリントポリマーを利用した薬毒物分析法の開発と法医学的応用に関する研究
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24590865
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
熊澤 武志 昭和大学, 医学部, 教授 (00186470)
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Keywords | 分子インプリントポリマー / 薬物 / 毒物 / 固相抽出法 |
Research Abstract |
本年度はベンゾジアゼピン系催眠・抗不安薬、バルビツール酸系催眠・鎮静薬及びブチロフェノン系抗精神病薬を対象として以下の検討を実施した。 1.ベンゾジアゼピン系催眠・抗不安薬:分子インプリントポリマー(MIP)はジアゼパムを鋳型とし、MAA、EDMA、ABIN等の存在下で合成した後、メタノール-酢酸水で洗浄した。固相抽出は全血及び血漿をリン酸緩衝液で調整後、メタノール溶出を行った。GC/MS分析は選択イオン検出(SIM)法による定量を行った。回収率は60%以上、再現性(CV値)は15~20%以下であった。 2.バルビツール酸系催眠・鎮静薬:対象薬物としてバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタールを用いた。MIPはバルビタールを鋳型とし、2,6-ビス-アクリルアミドピリジン、ジビニルベンゼン、ABIN等の存在下で合成した後、メタノール-酢酸水で洗浄した。固相抽出は全血及び血漿をリン酸緩衝液で調整後、酢酸及びメタノール-酢酸溶出をそれぞれ行った。GC/MS分析はSIM法による定量を行った。回収率は70%以上、LOQは50~150ng/ml、CV値は20%以下であった。また、バルビタールMIPはペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタールに共有性があったが、回収率が40~50%程度であり、さらに検討の余地があった。 3.ブチロフェノン系抗精神病薬: MIPはハロペリドールを鋳型とし、MAA、EDMA、ABIN等の存在下で合成した後、メタノール-酢酸-トリフルオロ酢酸(80:15:5)で洗浄した。固相抽出は血漿及び尿を酢酸アンモニウム緩衝液で調整後、メタノール-酢酸溶出を行った。抽出された薬物は、高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析計を用いた選択イオンモニタリング法によって定量を行った。回収率は約90%、LOQは1~10ng/ml、CV値は10~25%であった。また、ハロペリドールMIPはブロムペリドール、モペロンに共有性があり、回収率は70~90%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はベンゾジアゼピン系催眠・抗不安薬、バルビツール酸系催眠・鎮静薬及びブチロフェノン系抗精神病薬を対象としてMIP合成、固相抽出法、GC/MSあるいはHPLC/MS分析法について検討を行った。しかし、前年度から予定していたコカインを対象としたMIPの合成、固相抽出、検出法については、麻薬指定薬であるコカインの東京都からの購入認可が大幅に遅れており、今年度も検討することができなかった。一方、本年度予定していた三環系抗うつ薬を対象とした研究については、現在MIP合成を進めている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に設定検討した内容を参考にして、法医学上問題となる薬毒物について、MIPの合成及びMIP-固相抽出法の開発を行い、さらにMIP-固相抽出法とGC/MS法(あるいはHPLC/MS法)を組み合わせた人体試料中薬毒物分析システムの構築及びその法医学的有用性の検討と確立を今後目指す予定である。次年度以降の対象薬毒物としては、本年度までに終了できなかった麻薬のコカインや向精神薬の三環系抗うつ薬のほか、農薬の有機リン系、カルバメート系、パラコート及びジクワット等があり、具体的に以下のような検討を実施する。最初に各対象薬毒物のMIPを合成し、次に合成MIPを用いた固相抽出法を全血、血漿、血清、尿等を利用して設定する。薬毒物の検出にはGC/MS法(あるいはHPLC/MS法)を用い、回収率、検出限界及び検量線の作成による定量性の検討、日内変動率及び日間変動率を指標とした再現性の検討等を行い、本分析システムの品質管理を行う。また、化学構造的に類似性がある同じ系統の薬毒物同士においてMIP-固相抽出法が共有できるかどうかを比較検討する。さらに、MIP-固相抽出と質量分析計を組み合わせた薬毒物分析システムの法医学的有用性について、死体検案や法医解剖の際に得られた人体試料を用いて検討し、その研究成果を学会発表や学術雑誌等で公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
麻薬コカインのMIP合成、固相抽出、検出法の検討については、平成24年度から予定していたが、東京都からの購入認可が現在も得られず実施することができない状況である。また、三環系抗うつ薬を対象としたMIP合成、固相抽出、検出法の検討は本年度に完了する予定であったが、現在もMIP合成を進めている段階である。一方、本年度の実験補助者の勤務日数は予定の60%程度で、その残額が生じてしまった。 消耗品費の主なものでは、薬物標準品や試薬類がある(235,000円)。また、GCキャピラリーカラムは、本年度購入分の劣化が激しいため、新しく5本を購入する(390,000円)ほか、GC用の純ヘリウムガス(7,000 L)2本を購入する(90,000円)。さらに、HPLC用カラム2本(82,000円)、HPLCオートサンプラー用のシリンジ、小型バイアル瓶等(20,000円)を購入する。ガラス器具としては、バイアル瓶、ガラスインサート、セプタム、MIP合成用の試験管、ビーカー及びフラスコ等が含まれる(60,000円)。一方、実験補助者に支払う謝金は日給7,300円、月平均4日間で12ヶ月分の支払い(350,000円)とし、その他の明細には論文校正代及び複写費(50,000円)等が含まれる。
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