2014 Fiscal Year Research-status Report
分子インプリントポリマーを利用した薬毒物分析法の開発と法医学的応用に関する研究
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24590865
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
熊澤 武志 昭和大学, 医学部, 教授 (00186470)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分子インプリントポリマー / 薬物 / 毒物 / 固相抽出法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコカイン、三環系抗うつ薬、農薬を対象として以下の検討を実施した。 1.コカイン:分子インプリントポリマー(MIP)はコカインを鋳型とし、MAA、EGDMA、ABIN、メタノールの存在下で合成した後、メタノール-超純水で洗浄した。固相抽出は血漿及び尿をリン酸緩衝液(pH 7)で調整し、メタノール-酢酸(50:50, v/v)による洗浄、メタノール溶出を行った。定量はGC/MS-SIM分析で行い、回収率は約30%、再現性(CV値)は10~16%であった。また、同法によって鋳型を用いないポリマー合成も行ったところ、回収率は20%であり、本法のMIP合成法は再検討する必要性があった。 2.三環系抗うつ薬:対象薬物としてイミプラミン、アミトリプチリン、トリミプラミンを用いた。MIPはアミトリプチリンを鋳型とし、MAA、EGDMA、ABIN、メタノールの存在下で合成した後、メタノール-酢酸で洗浄した。固相抽出は血漿をリン酸緩衝液(pH 7)で調整後、メタノール溶出を行った。定量はGC/MS-SIM分析を行い、回収率は約40%、検量線は100~500ng/ml、CV値は20%以下であった。また、アミトリプチリンMIPはイミプラミン、トリミプラミンに共有性は低く、さらに再検討の必要性があった。 3.農薬: 対象の農薬はカルボフラン、メトルカルブ、カルバミル、メソミル、イソプロカルブ、フェノブカルブ、プリミカルブのカルバメート系農薬である。MIPはカルボフランを鋳型とし、MAA、EGDMA、ABIN等の存在下で合成した後、メタノール-酢酸(90:10)で洗浄した。固相抽出は血漿及び尿を酢酸アンモニウム緩衝液(pH 6)で調整後、アセトニトリル溶出をそれぞれ行った。抽出された薬物は、HPLCを用いて測定を行った。回収率は約80%、LOQは1~5ug/ml、CV値は約20%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度はコカイン、三環系抗うつ薬、カルバメート系農薬を対象としてMIP合成、固相抽出法、GC/MSあるいはHPLC分析法について検討を行った。しかし、予定していた有機リン系農薬、パラコート及びジクワットを対象とした研究については、現在MIP合成を進めている状況である。また、本年度に実施したコカイン、三環系抗うつ薬の研究結果は良好とは言えず、再検討を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
法医学上問題となる薬毒物について、MIPの合成及びMIP-固相抽出(SPE)法の開発を行い、さらにMIP-SPE法とGC/MS法、HPLC法、HPLC/MS法を組み合わせた人体試料中薬毒物分析システムの構築及びその法医学的有用性の検討と確立を今後目指す予定である。次年度は、本年度までに終了できなかった有機リン系農薬、パラコート及びジクワットがあるほか、結果が不良であったコカイン、三環系抗うつ薬について次のような検討を実施する。最初に各対象薬毒物のMIPを合成し、次に合成MIPを用いたSPE法を全血、血漿、血清、尿等を利用して設定する。薬毒物の検出にはGC/MS法(あるいはHPLC並びにHPLC/MS法)を用い、回収率、検出限界及び検量線の作成による定量性の検討、日内変動率及び日間変動率を指標とした再現性の検討等を行い、本分析システムの品質管理を行う。また、化学構造的に類似性がある同じ系統の薬毒物同士においてMIP-SPE法が共有できるかどうかを比較検討する。さらに、MIP-SPEと検出装置を組み合わせた薬毒物分析システムを死体検案や法医解剖の際に得られた人体試料(血液や尿等)に応用し、法医学的有用性について検討する。なお、この法医実際例の人体試料は、他大学との連携協力によって採取する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた有機リン系農薬、パラコート及びジクワットの検討については、実施することが出来なかった。また、本年度の実験補助者の勤務日数は予定よりも少なく、その残額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費の主なものでは、薬物標準品や試薬類がある(120,000円)。また、GCキャピラリーカラムは、新しく4本を購入する(310,000円)ほか、GC用の純ヘリウムガス7,000 Lを2本購入する(90,000円)。さらに、HPLC用カラム1本(62,000円)、HPLCオートサンプラー用のシリンジ、小型バイアル瓶等(18,000円)を購入する。ガラス器具としては、バイアル瓶、GC用ガラスインサート、GC用セプタム、MIP合成用の試験管、ビーカー及びフラスコ等が含まれる(20,000円)。一方、実験補助者に支払う謝金は日給7,300円、月平均4日間で12ヶ月分の支払い(260,000円)とし、その他の明細には旅費(80,000円)、論文校正代及び複写費(150,000円)等が含まれる。
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