2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノマテリアル・ナノ粒子のアクシデンタルな曝露による生体影響
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24590868
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
菅野 さな枝 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (50391090)
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Keywords | ナノマテリアル / 暴露 / インフラマソーム / Rho-kinase |
Research Abstract |
ナノ粒子やナノマテリアルのアクシデンタルな暴露による生体影響を調べるため、細胞を用いた実験を行った。アスベストやシリカなどの繊維状の汚染物質の吸入が、肺疾患に関係することが知られている。しかし、それらが肺疾患を引き起こす機構については不明であった。最近の報告で、これらの繊維状物質による、肺疾患に関連する炎症誘発の機構として、細胞質にあるNalp3インフラマソームと呼ばれるたんぱく質複合体が関与することが明らかとなった。そこで、本研究では生体反応の一つとして、繊維状ナノマテリアルによるインフラマソーム誘導の機構を明らかにするために実験を行った。本研究では繊維状ナノマテリアルとして、アスベスト、及び形状がアスベストと似ており工業用に広い範囲で使用され始めているカーボンナノチューブ(CNT)を用いた。その結果、インフラマソーム誘導に、GTP effectorであるRho-kinase(ROCKs)が関与することを、ノックダウン細胞および阻害剤を用いた実験から明らかとした。痛風の原因であり、生体内で生成される繊維状粒子の一つである尿酸結晶によるインフラマソームの誘導にも同様にROCKsが関与していることを実験にて明らかにした。ROCKsの阻害剤により、肺疾患に結び付くインフラマソームが阻害されることもわかった。これらの研究成果を論文にまとめ投稿中である。現在、さらに詳細にその機構を明らかにするため、関与していると推定されるたんぱく質などの基礎データの収集および実験条件の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺胞マクロファージによる環境中微粒子の認識機構、および疾患との関連を明らかにするために、細胞を用いて実験を行った。取り込み機構は、貪食の阻害剤を用いて一部明らかにした。また、繊維状粒子の引き起こす疾患に関与する免疫反応の一つであるインフラマソームに、GTP effectorであるRho-kinase(ROCKs)が関与することを、ノックダウン細胞および阻害剤を用いた実験から明らかとした。ROCKsの阻害剤により、肺疾患に結び付くインフラマソームが阻害されることがわかった。これらの結果は学会にて報告し、論文にまとめ投稿中である。これらの理由から研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今まで検討してきた条件を基に、さらにインフラマソームを含めた生体影響を明らかにするために、関与すると推測されるたんぱく質の遺伝子導入実験やノックダウン実験を行う予定である。また、今まで株化された細胞を用いていたが、より生体に近い反応結果を得るためにマウスより採取した骨髄由来マクロファージを用いて実験を検討中である。実験材料として繊維状ナノマテリアルだけでなく、我々の用いるスプレー剤などに含有されているナノ粒子などを用いて、活性酸素の産生などを調べ、疾患への関与を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、本実験と共に次の研究のための実験条件の検討などを綿密に行ったため、次年度にまとまった実験を行う予定である。次年度は試薬などに研究費が多く必要となる。 ノックダウン実験や遺伝子導入にかなりの研究費を使用する予定である。また抗体やELISA購入にも使用する。
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