2012 Fiscal Year Research-status Report
活性型血小板を介した糖尿病性細小血管症の進展抑制効果を有する生薬の探索
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24590880
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
柴原 直利 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10272907)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖尿病性細小血管症 / 活性型血小板 / 血小板マイクロパーティクル / 生薬 |
Research Abstract |
生活習慣の欧米化により糖尿病患者は増加の一途を辿り,合併症である糖尿病性腎症・網膜症・神経障害などの一因として動脈硬化の進展に伴う細小血管症の進展を抑制する治療法の開発が求められている。今回,糖尿病性細小血管症の発症・進展の過程で鍵となる活性型血小板及びマイクロパーティクル(PDMP)に対する生薬の効果を基礎的に研究し,糖尿病性細小血管症発症・進展抑制効果を有する生薬を探索することを目的とした。 7週齢Wistar系ラットにStreptozotocin (STZ, 60mg/kg)を腹腔内単回投与して糖尿病を誘発し,血糖値が300mg/dlで安定するSTZ投与1週間後に血糖値を測定して糖尿病の発症を確認した。漢方医学的に駆オ血効果を有する生薬の抽出エキスは常法に従い,生薬(牡丹皮,牛膝,益母草,紅花,丹参) 100gに水500mlを加えて30分間煎出し,濾過後に凍結乾燥法により生薬エキスを作製し,糖尿病モデルラットに経口強制投与した。STZ投与5週間後においてペントバルビタールを腹腔内投与して麻酔し,開腹した後に下大静脈より静脈血を採取した。採取した血液は遠心分離して多血小板血漿・乏血小板血漿に分離し,乏血小板血漿を用いて多血小板血漿の血小板数を調整した上で,抗Pセレクチン,抗CD62,抗PDMP抗体を用いてフローサイトメトリー(FACS)により活性型血小板マーカーを測定した。 糖尿病群はSham群に比較して活性型血小板,及びPDMPが増加していた。生薬エキスの効果の検討では,紅花エキスの投与により活性型血小板数が低下する傾向を示し,牡丹皮,牛膝,益母草,丹参の各エキスでは変化がみられなかった。一方,PDMPにおいては,牛膝エキスと紅花エキスによりPDMPは減少したが,その効果は有意ではなく,他の生薬エキスでは変化がみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STZ誘発糖尿病モデルラットは予定通り作製できた。生薬エキスについても常法の通りに施行し,生薬100gに水500mlを加えて30分間煎出した後に,濾過後に凍結乾燥法により生薬エキスを得た。また,その投与についても計画通りに経口強制投与が行われた。生薬エキスの活性型血小板、および血小板パーティクルに対する効果については、FACSによる計測値の変動が大きいこともあり,有意な差が得られていない。この点については,一群のラット数を増やすことにより確認する必要がある。以上の結果より、達成度は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度と同様に,STZ誘発糖尿病モデルラットに各種生薬エキスを経口投与し,活性型血小板,および血小板マイクロパーティクルをFACSを用いて測定し,活性型血小板,あるいは血小板マイクロパーティクル抑制効果を有する生薬を探索する。また,活性型血小板,あるいは血小板マイクロパーティクル抑制効果抑制効果が認められた生薬エキスについて,投与量による活性型血小板抑制効果および糖尿病性細小血管症抑制効果の相違を検討する。さらに,腎機能マーカー,腎組織学的検討により糖尿病性細小血管症を評価するとともに,大動脈のeNOS及びiNOSをウェスタンブロット法により定量する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度における研究は概ね順調に進展したが,活性型血小板を測定する抗体の納入価格の変動により,1,743円を次年度に使用することとなった。平成25年度はSTZ誘発糖尿病モデルラットが必要であり,その作製の為に6週齢Wisterラット(150匹,1匹2,000円,300,000円),およびSTZ(90,000円)を購入する。また,STZ誘発糖尿病モデルラットより血液,大動脈,腎臓を採取する際に用いる麻酔薬(pentobarbital,15,000円),および実験に用いる生薬(35,000円),活性型血小板マーカー測定に必要となる抗Pセレクチン,抗CD62,抗PAC-1,抗PDMP抗体の購入が必要である(494,000円)。さらに,動脈硬化進展の判定には組織学的検討が不可欠であり,大動脈及び腎臓のパラフィン固定,染色を外部に委託する必要があり,その経費を計上した(366,000円)。
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