2013 Fiscal Year Research-status Report
c-Met阻害作用を有する漢方薬の肺がん分子標的治療への応用
Project/Area Number |
24590896
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
花輪 壽彦 北里大学, 付置研究所, 教授 (40164892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日向 須美子 北里大学, 付置研究所, 研究員 (60353471)
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Keywords | 非小細胞肺がん / MET阻害剤 / 麻黄 / EGFR-TKI / MET / EGFR / 漢方薬 |
Research Abstract |
非小細胞肺がんにおけるEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)に対する耐性の獲得メカニズムのひとつとしてMETの過剰発現の関与が見出されたことから、MET阻害剤を併用した治療戦略が、EGFR-TKI耐性を克服する鍵となるものと期待されている。私たちはこれまでに、麻黄がMET阻害作用を有することを見出し、さらに最近、麻黄の活性成分のひとつとしてherbacetinを同定したことから、本研究では、EGFR-TKI耐性克服への応用の可能性について検討を進めている。 今年度は、ヒト非小細胞肺がん細胞株でMET発現が極めて高いEGFR-TKI耐性株H1993細胞における細胞増殖能及びEGFRとMETのリン酸化阻害作用を指標とし、麻黄及びherbacetinについて、エルロチニブとの併用効果を解析した。 H1993細胞の増殖は、麻黄あるいはherbacetinの濃度依存的に抑制され、エルロチニブの併用で、さらに強く抑制された。H1993細胞のEGFR及びMETのリン酸化について解析した結果、1)EGFやHGFによる刺激がなくても恒常的にリン酸化されていること、2)麻黄の単独添加で両者のリン酸化及び発現が低下すること、3)herbacetinの単独添加では、リン酸化及び発現に影響を与えないことが明らかとなった。次に、herbacetinについて、エルロチニブとの併用効果を解析した結果、METのリン酸化には影響を与えず、EGFRのリン酸化のみ抑制された。なお、麻黄とエルロチニブの併用効果については、現在解析を進めている。 本研究の結果から、麻黄とherbacetinは異なる作用機構を介して、EGFR-TKI耐性株H1993細胞の増殖を抑制していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
麻黄及びその活性成分であるherbacetinが、MET高発現EGFR-TKI耐性ヒト肺がん細胞株H1993細胞の増殖を抑制し、EGFR-TKIであるエルロチニブとの併用で、より強い増殖抑制効果を示すことを明らかにした。また、EGFRやMETに対する麻黄とherbacetinの作用が異なることを新たに見出した。 これまでの研究で、herbacetinは、HGF刺激によって誘導されるMETのリン酸化を阻害することが明らかになっていたが、MET過剰発現細胞であるH1993細胞の自己リン酸化は抑制できないことが明らかになった。一方、エルロチニブ単独添加では抑制されないEGFRの自己リン酸化が、herbacetinの併用により抑制されることが明らかになった。今後の更なる検討が必要であるが、耐性機構を探るうえで重要な知見となるものと期待される。一方、麻黄はMET過剰発現による自己リン酸化も抑制すること、さらに過剰発現しているMETの発現量を低下させることが明らかになった。この作用機構の違いについては、予期されなかった驚くべき結果で、麻黄には、herbacetinとは異なる作用機構を示す活性成分が含まれていることを示唆するもので、新たな活性成分の探索が課題となった。 次年度は、ほぼ当初の研究計画に従い、1)麻黄とherbacetinのEGFR及びMETに対する作用機構の詳細な解析、2)H1993細胞移植による腫瘍増殖に対する抑制作用の解析について実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
び主成分のherbacetinについて、MET過剰発現EGFR-TKI耐性ヒト非小細胞肺がん細胞株H1993の増殖に関連するシグナルに対する抑制効果の分子機構について詳細に検討する。具体的には、1)麻黄については、エルロチニブとの併用による、EGFRとMETの自己リン酸化に対する作用と、下流のシグナル分子(Akt, ERKなど)のリン酸化の変化をWestern-blot法により解析する。2)麻黄によるEGFRやMETの発現低下の機構として、エンドサイトーシスの亢進、あるいは遺伝子発現の抑制が作業仮説として考えられ、これらについて詳細に検討する。3)herbacetinとエルロチニブの併用によるEGFRのリン酸化の抑制について、Akt, ERKなどのEGFRの下流のシグナル分子のリン酸化の動態についてWestern-blot法で解析する。これらの検討結果から、麻黄とherbacetinのEGFR-TKI耐性獲得ヒト非小細胞肺がん細胞に対する作用機構を考察する。 また、H1993細胞を移植したヌードマウスを用いて、in vivoにおける麻黄及びherbacetinの単独、あるいはエルロチニブとの併用による腫瘍増殖の抑制効果を解析する。効果の判定は、経時的に腫瘍サイズ及びマウスの体重を計測し、腫瘍サイズがマウスの体重の10%を超える前にマウスを過麻酔により屠殺し腫瘍を切除し、腫瘍重量から最終的な効果判定を行う。また、マウスの体重から毒性発現を推定する。これらの結果から、in vivoにおける麻黄及びherbacetinの腫瘍増殖の抑制効果を明らかにする。 さらに、研究結果を臨床への応用を踏まえて、麻黄を含有する漢方薬の代表として、麻黄湯を選択し、in vivoにおける耐性獲得肺がん細胞によって形成された腫瘍増殖に対する単独効果及びエルロチニブとの併用効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の始めに採用した動物実験補助員が、採用3ヶ月後に妊娠が判明し、退職した。その後、求人を行ったが、適任者に恵まれず、実験補助員を採用できなかったため、予定していた動物実験を次年度に延期することとし、人件費及び動物実験に係る研究費を次年度に繰り越したため。 次年度採用予定の動物実験補助員の人件費を予定している。 また、細胞実験及び動物実験に関連した研究費として、細胞培養関連の消耗品、培地、電気泳動関連試薬、抗体やWestern-blot用検出試薬、PCR関連試薬等の購入を予定している。さらに、ヒト肺がん細胞株の移植用ヌードマウスの購入と飼育に関連する費用を予定している。
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