2012 Fiscal Year Research-status Report
ADAMプロテアーゼ活性化分子ナルディライジンを標的とした消化管癌治療法の探索
Project/Area Number |
24590914
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米門 秀行 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (90452359)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 胃癌 / 大腸癌 / 抗癌剤 |
Research Abstract |
生体内の種々の活性物質は膜結合型の前駆体蛋白として合成される。ADAM(a disintegrin and metalloproteinase)ファミリーは、この前駆体蛋白を細胞外で切断して活性化する。M16ファミリーに属するメタロエンドペプチダーゼであるナルディライジン(nardilysin、NRDc)は、ADAMプロテアーゼ群の活性化因子であり、HB-EGFやTNF-αのシェディングを活性化する。NRDcが胃癌や大腸癌の癌上皮細胞において高発現し、胃癌細胞株でRNAiによってNRDcの発現をノックダウンすると、細胞増殖が抑制される。また、胃癌細胞株ではNRDcがTNF-αのシェディングを促進する。そこで本研究課題では、NRDcが消化管癌細胞の増殖に及ぼす影響およびその機序について、より詳細に解明する。具体的には、胃癌細胞や大腸癌細胞においてRNAiによりNRDcの発現抑制を行い、NF-κBシグナルの他、Wntシグナル、ケモカイン分泌、インターフェロン応答シグナルについて解析を行う。また、癌細胞内でNRDcを活性化している転写因子の同定を行う。さらに、消化管癌治療への応用の可能性を探索するため、胃癌細胞や大腸癌細胞に対する抗癌剤や分子標的治療薬の抗癌効果が、NRDcによってどのように変化するかを解析する。また、xenograftモデルを用いて、抗NRDc中和抗体のin vivoでの治療効果について評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、ヒト胃癌や大腸癌組織中の癌上皮細胞においてNRDcが高発現することを、免疫染色および定量的PCR法で確認した。また、症例数の集積により、NRDcの発現が癌患者の癌部だけではなく、血清中でも上昇していることを確認した。一方、胃癌や大腸癌の細胞株においてNRDcの発現をRNAiでノックダウンすると、癌細胞の増殖が抑制されることを確認した。また、胃癌および大腸癌の細胞株においてNRDcがTNF-αのシェディングを促進し、分泌されたTNF-αが内因性のNF-κBを活性化させることを確認した。さらに、これらの細胞株では、NF-κBの下流では、IL-6の発現が亢進しており、オートクライン的に胃癌細胞のSTAT3を活性化することも示した。これらのデータは、胃癌または大腸癌において、癌細胞が自律的に増殖し、癌が進行していくメカニズムの一端を明らかにしたものであり、別項記載のごとくその内容を論文発表することが出来た。その他に、平成25年度の解析に備えて、抗NRDcモノクローナル抗体の作製を進めており、複数のクローンを樹立済みである。それらクローンのNRDc中和活性の確認も併せて進めており、今後の研究を推進するに当たっての準備も順調と思われる。したがって、本研究は平成24年度において当初の計画通り、おおむね順調な進捗状況を示していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、主に胃癌または大腸癌細胞株を用いて、NRDcのシェディングに関わる機能が、どのように癌の進行を促進するかを検討した。今後は、これらの知見に基づいて、以下の方策により研究を推進する。 1.NRDc発現上昇による消化管癌細胞の抗癌剤感受性の変化:研究代表者のこれまでの解析により、NRDcを抑制した癌細胞では、細胞障害性抗癌剤や分子標的治療薬で処理した場合に、野生型癌細胞と比べより強くアポトーシスが誘導されることが予想される。そこで、それらの薬剤で消化管癌細胞を処理した場合の生存細胞数の経時的な減少、およびアポトーシスシグナル(活性型カスパーゼの発現やTUNEL陽性細胞数)の差異を解析する。 2.in vivoにおけるNRDcを標的とした消化管癌治療法の探索:将来、臨床応用が可能な手法を用いてin vivoでNRDcの機能抑制を行い、治療効果が得られるかどうかを探索する。そのために、研究代表者らは抗NRDcモノクローナル抗体を作製している。in vitroの細胞増殖アッセイを用いて、NRDcの機能を抑制する抗体クローンを同定するスクリーニング実験を行う。その結果中和機能が確認できた抗体を、xenograftモデルマウスに投与して、腫瘍増殖の差異をin vivoで解析する。同様に、NRDcを抑制した場合の、他の抗癌剤や分子標的薬による抗癌作用の変化も解析する。 これらの検討により、将来的なNRDcの臨床応用を目指した基礎的知見の集積を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)