2013 Fiscal Year Research-status Report
ADAMプロテアーゼ活性化分子ナルディライジンを標的とした消化管癌治療法の探索
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24590914
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米門 秀行 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (90452359)
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Keywords | 胃癌 / 大腸癌 / 抗癌剤 / ナルディライジン |
Research Abstract |
ナルディライジン(NRDc)は、胃癌や大腸癌細胞で高発現する。癌細胞株においてNRDcをノックダウンすると、TNFalpha/NFkBの活性化が抑制され、IL6/STAT3経路および細胞増殖も抑制された。またNRDcのノックダウンによって、癌細胞からの炎症性ケモカイン分泌やインターフェロン応答シグナルも低下したことから、NRDcが癌免疫応答を制御する可能性が示唆された。NRDcをノックダウンした癌細胞株に種々の薬剤を投与すると、細胞周期制御因子と癌細胞の増殖が変動した。さらに抗NRDcモノクローナル抗体の投与によって、有意に癌細胞の増殖は抑制された。そのため、癌細胞のオートクライン的な増殖因子およびサイトカイン・カスケードを遮断することが、NRDcを標的とする抗癌治療につながる可能性が示唆された。本研究ではこれらの検討を通じて、NRDcの臨床応用を目指した基礎的知見を得ることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに本研究では、以下の結果を得た。 1.癌細胞株においてNRDcをノックダウンすると、TNFalpha/NFkBおよびIL6/STAT3経路の活性化、細胞増殖が抑制された。NRDcのノックダウンによって、癌細胞からの炎症性ケモカイン分泌やインターフェロン応答シグナルも低下した。さらにNRDcノックダウンによって、細胞周期調節因子が変動することも示した。このように、NRDcの下流で変動する諸因子を明らかにした。 2.抗NRDcモノクローナル抗体を用いて、NRDcの活性を制御し、オートクライン的なサイトカイン・カスケードを遮断した。その結果、胃癌や大腸癌などの癌細胞株では、細胞増殖アッセイの結果、有意に細胞増殖が抑制されていた。 これらの実験により、NRDcが抗癌剤治療に与える影響を検討し、さらにNRDcが果たす役割を主として細胞レベルで包括的に検討することができた。したがって、本研究は平成25年度において当初の計画通り、おおむね順調な進捗状況を示していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに得られた結果をもとに、以下の検討を行う。 1.NRDc発現上昇による消化管癌細胞の抗癌剤感受性の変化:NRDcが胃癌細胞において、Cyclin D1、c-Myc、Bcl-2遺伝子の発現を維持していること、インターフェロン応答に関与する遺伝子の発現を抑制していることなどが明らかになった。そのため、NRDcを機能抑制した癌細胞では、細胞障害性抗癌剤やEGF受容体シグナル等を標的とした分子標的治療薬で処理した場合に、野生型癌細胞と比べ、より強くアポトーシスが誘導されることが予想される。そこで、薬剤で消化管癌細胞を処理した場合の生存細胞数の経時的な減少を、NRDcノックダウン細胞及びコントロール細胞間で比較する。また、その際に誘導されるアポトーシスシグナルの差異を解析する。NRDcノックダウン細胞にCyclin D1やBcl-2を過剰発現させるか、またはIRFをノックダウンし、薬剤処理時のアポトーシス誘導が低下するか否かの解析も試みたい。 2.in vivoにおけるNRDcを標的とした消化管癌治療法の探索:in vitroの細胞増殖アッセイを用いて、NRDcの機能を抑制する抗体クローンを同定するためのスクリーニング実験を行う。次に、中和機能が確認できた抗体のin vivoでの活性を解析するため、ヒト消化癌細胞をヌードマウスの皮下に局注した後、中和抗体もしくはコントロール抗体をマウスの腹腔内へ投与し、腫瘍増殖の差異を解析する。差異が生ずるメカニズムを解明するため、xenograft腫瘍から抽出したRNAや蛋白質を用いて、細胞増殖やアポトーシスシグナル経路の変化について、in vitroの実験結果を踏まえて解析する。 これらの検討を通じて、NRDcの癌進展における役割を明らかにし、将来的な臨床応用へ向けた基礎的治験を得る。得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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