2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590916
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上尾 太郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30569611)
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Keywords | 胃炎 / 胃癌 / 幹細胞 / 癌幹細胞 |
Research Abstract |
慢性炎症により生じる組織変化での胃粘膜上皮細胞の役割を検討するため、Lgr5-EGFP-ires-CreERT2/ROSA-LacZマウスにH.felisを感染させた。感染が進むに従い、前庭部胃炎が出現したが、その後12か月の観察期間ではディスプラジアと呼ばれる組織異形や腫瘍病変を認めなかった。また、H.felisを感染させなくとも、胃に慢性炎症が自然発生し、生後10か月ごろより腫瘍ができると報告されているK19-Wnt1/C2mEマウスを導入し、これとLgr5-EGFP-ires-CreERT2/ROSA-LacZマウスとを交配させ、K19-Wnt1/C2mE/ Lgr5-EGFP-ires-CreERT2/ROSA-LacZマウスを作出したが、当施設での生後12か月の観察期間では胃腫瘍ができなかった。両マウスの観察期間を18か月まで延長し、評価する方針とした。 そこで、胃癌細胞おいて、WntシグナルやHedgehogシグナルの増強が報告されていることに着目し、胃にWntシグナルが発現増強し、微小腺腫ができるLgr5-EGFP-ires-CreERT2/ctnnb1lox(ex3)マウスに、Hedgehogシグナルの下流の転写因子Smoothenedが過剰発現するマウスを交配し、Lgr5-EGFP-ires-CreERT2/Rosa-Smo/ctnnb1lox(ex3)マウスを作出した。タモキシフェン投与したところ、多数の腫瘍の形成を認めた。このマウスにH.felisの感染を加えることで、胃の炎症が腫瘍形成にいかなる影響をあたえるか、検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
12か月の観察では、H.felisをマウス胃に感染させても、組織異形や腫瘍は出現しなかった。観察期間を延長するとともに、今回新たに炎症がなくも腫瘍ができるLgr5-EGFP-ires-CreERT2/Rosa-Smo/ctnnb1lox(ex3)マウスを作出した。このマウスにH.felisの感染をおこすことで、炎症による組織変化が、遺伝子変異をもった幹細胞による腫瘍形成にどのように影響をあたえるのか、を検討する予定である。腫瘍の大きさや個数を計測評価するのみでなく、マウス腫瘍組織を用いた免疫染色により腫瘍の増殖能やアポトーシスの程度も検討をする予定である。さらに、腫瘍中のLgr5陽性幹細胞をFACSにて回収し、次世代シークエンサーにて発現遺伝子を検討することにより、癌関連の遺伝子変異と慢性炎症によって、どのような遺伝子群が誘導されるかを網羅的に検討することができると想定される。
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Strategy for Future Research Activity |
H.felis感染後期のマウス胃における幹細胞制御に関する検討をするため、Lgr5-EGFP -EGFP-ires-CreERT2/ROSA-LacZマウスの観察期間を18か月から24か月に延長し、前庭部にディスプラジアと呼ばれる組織異形や腫瘍病変が出現するかを検討する。 今回新たに作出したLgr5-EGFP-ires-CreERT2/Rosa-Smo/ctnnb1lox(ex3)にタモキシフェンを投与し解析したところ、予定通り、炎症のない状態で消化管腫瘍が多数出現していた。そこで、このマウスにH.felisを感染させ、Wntシグナルやhedgehogシグナルが慢性胃炎にどのように影響をあたえるのか、感染の有無や炎症の進度により腫瘍発生に影響がでるか、を検討する方針である。さらに、両マウスを用いて、FACSにてLgr5陽性幹細胞を回収し、次世代シークエンサーにより、発現遺伝子の解析比較を行うことで、発がんに関連するWntシグナルやhedgehogシグナルと慢性炎症がお互いにどのように影響をあたえ、腫瘍形成を進めていくのかを検討考察する方針である。
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