2014 Fiscal Year Annual Research Report
癌・間質相互作用を標的とした胃癌転移に対する新しい治療法の開発
Project/Area Number |
24590918
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
北台 靖彦 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 准教授 (10304437)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癌間質相互作用 / 分子標的治療 / 胃癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景と目的】我々はこれまで大腸癌間質においてPDGFRが過剰に発現していることを報告している。ヒト大腸癌同所移植モデルを用いてPDGFR阻害作用を持つニロチニブの効果を病理組織学的に検討したところ、間質反応の抑制とともに、腫瘍の浸潤及びリンパ節転移の抑制が観察された。ニロチニブの標的分子にはPDGFRの他にDiscoidin Domain receptor 1(DDR1)が知られている。DDR1はコラーゲンをリガンドとするレセプター型チロシンキナーゼである。本検討では大腸癌細胞におけるDDR1の発現と大腸癌の浸潤、転移との関連について検討した。 【方法】ヒト大腸癌切除標本を用いてDDR1の免疫染色を行った。10株のヒト大腸癌細胞株を用いてRT-PCRとWestern blottingでmRNAレベル、蛋白レベルでのDDR1の発現を検討した。細胞の増殖や遊走を継時的に撮影し、定量化することの出来るリアルタイムイメージングシステムを用いて、大腸癌細胞株の増殖能や遊走能に対するニロチニブの影響を検討した。DDR1のsiRNAを用いてDDR1の発現を抑制したヒト大腸癌細胞を作成し遊走能を検討した。またニロチニブ,コラーゲン投与による遊走能の変化を検討した。 【結果】深達度によらず20/24症例で癌細胞に一致してDDR1の発現が見られた。細胞株においても種々のレベルでDDR1の発現が確認された。ニロチニブ投与による大腸癌細胞株の増殖能の変化はみられなかったが、DDR1の発現が強かった4種の細胞株で濃度依存性にニロチニブ投与による遊走能の低下がみられた。コラーゲン投与により細胞形態の変化がみられ、遊走能も有意に上昇していた。siRNAを用いてDDR1の発現を抑制した細胞では、DDR1の発現を抑制していない細胞と比較して遊走能は有意に低下していた。またこの遊走能の低下にニロチニブは影響を与えなかった。 以上より、コラーゲン/DDR1シグナルを介した癌・間質相互作用が大腸癌の浸潤、転移に重要であることが示唆された。
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