2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590931
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 篤生 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80534932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 喜裕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10529192)
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Keywords | 癌 / 小腸 |
Research Abstract |
H25年度は昨年の研究により発見したSIAC株のβcatenin蛋白の変異体に着目して研究をすすめている。変異型βcatenin蛋白は、エクソン3-4にまたがる381塩基が欠失しているために、重要なリン酸化部位である11-137アミノ酸をもっていなかった。この変異型βcatenin遺伝子をクローニングし、細胞内導入すると野生型よりも強いWntシグナル活性が得られた(野生型4.4倍vs 変異型6.1倍 p<0.05)。またこれらの蛋白を293T細胞内に発現させシクロヘキサミドで蛋白合成を阻害し、蛋白量の変化を検討したところ、変異型βcatenin蛋白は、野生型蛋白よりも分解されにくいことを見出した。またSIAC株を同様にシクロヘキサミド処理して検討したところ、野生型βcateninアレルから発現しているβcatenin蛋白は6時間程度で蛋白量が1/4に減少したのに対し、変異型βcatenin蛋白は12時間後でも1/2以上の蛋白量を認め、蛋白分解に対して抵抗性を示すことが分かった。 つづいて前年度の薬剤スクリーニングによって抗癌効果を認めたEribulinの作用機序を検討した。SIAC株にEribulinを作用させてWntシグナル活性を測定したところ、濃度依存性にWntシグナルを抑制していることが分かった。さらにWntシグナルの標的分子のc-MycやサイクリンD1蛋白の発現が低下していた。Eribulin投与後のβcatenin蛋白についてイムノブロットで調べたところ、野生型、変異型βcatenin蛋白の発現量が経時的に減少していることがわかった。これらの結果よりEribulinはSIAC株の変異型βcatenin蛋白を標的としてその抗癌作用を発揮していると考えられた。 Vitroの検討で効果を認めたEribulinをSIAC細胞株の移植マウスに投与したところ、コントロールと比較してEribulin投与のマウスで有意に腫瘍体積の減少が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
cDNAライブラリーを用いた癌原遺伝子のスクリーニングには着手できていないが、小腸癌に重要と考えられる遺伝子異常を発見し、さらにその発癌への寄与について作用機序を明らかにできている。 また昨年までのin vitroの検討で発見した薬剤が、in vivoのマウス移植モデルでも効果を示すことや、その作用機序が上記小腸癌特異的な遺伝子異常を標的としていることなどを明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、現在まで樹立しえた小腸癌細胞株の分子生物学的特性が、臨床的に有用であるか、臨床標本を用いて遺伝子変異や蛋白発現の異常を検討する。 さらに分子生物学的な特性を明らかにするためにあらたな小腸癌細胞株の樹立を試みる。 現在までに発見した小腸癌の分子異常(βcateninの欠失変異やTGFβRIIの発現低下など)をマウスの臓器特異的に導入し、これらの遺伝子変異が小腸癌の発生に十分であるか、また必須であるか明らかにする。発癌が見られた場合には上記薬剤で治療効果があるか病理学的に検討する。
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