2012 Fiscal Year Research-status Report
肝幹細胞の分化決定と細胞移植効率に関わる分子機構の解析
Project/Area Number |
24590957
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 寄附講座教員 (30372444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175127)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 移植 / 発生・分化 / 再生医学 / 肝疾患治療 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
研究代表者らは、高度に濃縮されたマウス初代肝幹細胞分画を用いて、分化誘導培養系とウイルスベクター を利用して、肝幹細胞の分化決定及び終末分化に関与する分子機構を網羅的に解析し、特定の標的分子の発現を調節して移植細胞の分化方向と分化段階を調節し、移植の効率が最適化される分化度を決定することを目的とする研究を行い下記の成果を得た。 (1)マウス肝幹・前駆細胞の形質解析(柿沼):研究グループはマウス肝臓から高速セルソーターを用いて初代肝幹・前駆細胞を分離・濃縮し、分化誘導するとともにその形質を解析した。その結果、Wnt5aが門脈周囲の肝幹・前駆細胞による胆管形成を抑制的に制御し、正常に進行させるために重要な因子であること、さらに肝幹・前駆細胞におけるWnt5aの標的分子がCaMKIIである可能性をそれぞれ初めて示し、胆管形成に係わる新たなメカニズムを提示した(Hepatology 2013, in press)。 (2). レポーター遺伝子を用いた分化段階の均質化とcDNA microarray解析(柿沼):分化段階をモニタリングするために、肝細胞系譜、もしくは胆管細胞系譜に特異的なレポーター遺伝子をレンチウイルスベクターによって導入し、その上で分化誘導を行った。現在、その細胞群を用いて、二方向性分化あるいは終末分化に関与すると考えられる因子を抽出すべくcDNA microarray解析を進めている。 (3). cDNA microarray解析結果のvalidation, (4). 分化決定因子による分化調節機構の解析(柿沼・朝比奈・渡辺):分離直後の肝幹・前駆細胞を用いたcDNA microarray解析も並行して進めた。前記Wnt5a欠損マウスにおけるcDNA microarray解析及びCaMKIIに関して報告した(JDDW2012にて発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画したとおり、(1)マウス肝幹・前駆細胞の形質解析については、想定通りの進捗を得た。すなわち、その結果をまとめた論文は肝臓病学で最も難易度の高い国際学術雑誌:Hepatology に採択され発表することができた。本論文の結果は、Wnt5aが門脈周囲の肝幹・前駆細胞による胆管形成を抑制的に制御し、正常に進行させるために重要な因子であること、さらに肝幹・前駆細胞におけるWnt5aの標的分子がCaMKIIである可能性をそれぞれ世界で初めて示し、胆管形成に係わる新たなメカニズムを提示したと言える。 次に(2). レポーター遺伝子を用いた分化段階の均質化とcDNA microarray解析については、交付決定後に必要となる実験材料を作成したにもかかわらず、予定通りの進捗が得られ、現在は網羅的解析の結果を慎重に検証している段階である。予定通り、次年度にはその結果から新たな進捗が得られると考えている。 また(3). cDNA microarray解析結果のvalidationについては、前記の結果を解釈しつつ、分離直後の肝幹・前駆細胞を用いたcDNA microarray解析も並行して進めた。Wnt5a欠損マウスにおけるcDNA microarray解析の結果は既に前記の論文に掲載することができた。 (4). 分化決定因子による分化調節機構の解析についても、Wnt5aの下流分子として同定したCaMKIIに関してその結果を報告した(JDDW2012 日本肝臓学会大会にて発表)。以上の如く、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前記(1)-(4)に関しては平成24年度の結果に基づき、さらにこれを継続して遂行する。 まずは、Wnt5aの下流分子として同定したCaMKII分子に関して、肝幹・前駆細胞の分化とどのように関わるのか、siRNA knock down及び特異的阻害剤の効果について詳細に解析を進める。siRNA knock downについては既にLentiviral vectorsも作成している。 さらに追加して下記を行う。 (5). ApoE欠損マウスをレシピエントとしたマウス肝幹・前駆細胞移植後の細胞動態の解析:既に研究グループではApoE欠損マウスをレシピエントとして移植を行うと、ドナー細胞が産生するApoE蛋白によって高コレステロール血症が長期改善し、細胞移植の治療効果が得られることを確認した。血清ApoE蛋白をELISAで定量することによって、ドナーキメリズムのモニタリングと定量化が可能になるため、この手法を継続して行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前記(1)-(4)に関しては平成24年度の結果に基づき、さらにこれを継続して遂行する。 さらに追加して下記を行う。 (5). ApoE欠損マウスをレシピエントとしたマウス肝幹・前駆細胞移植後の細胞動態の解析(柿沼・朝比奈):我々は移植した初代肝細胞・初代肝幹細胞によって、高度のドナーキメリズムが得られる細胞移植系を独自に開発した。本移植系においては、細胞移植後24週以上にわたって、ドナー肝細胞がレシピエント肝臓に生着・増殖することが可能である。 さらにApoE欠損マウスをレシピエントとして移植を行うと、ドナー細胞が産生するApoE蛋白によって高コレステロール血症が長期改善し、細胞移植の治療効果が得られることを確認した。血清ApoE蛋白をELISAで定量することによって、ドナーキメリズムのモニタリングと定量化が可能になる。一方で、本法のみで移植効率が定量化し難い場合には、GFPでテスト細胞を標識し、DsRedを用いてコントロール細胞を標識した上で、同時に移植するcompetitive repopulation assay によって定量的に評価する。研究代表者はこの移植解析系を用いて、前述の(1)-(4)によって抽出された標的分子を強制発現もしくはknockdownした細胞を用いて、移植を行い、移植効率に与える影響を解析する。遺伝子改変動物の入手が可能な場合には、それも併用して解析も進める。これらによって、より効率的な移植細胞の分化状態を探索する。
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Research Products
(11 results)