2012 Fiscal Year Research-status Report
ハイドロダイナミック力を用いた肝ミトコンドリアへの遺伝子導入システムの開発
Project/Area Number |
24590961
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
須田 剛士 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10361916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾田 雅文 新潟大学, 産学地域連携推進機構, 教授 (80372473)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / ミトコンドリア / ハイドロダイナミック |
Research Abstract |
平成24年度は、ミトコンドリア(Mit)に特異的なプロモーター、リポーター遺伝子、終止配列から構成されるプラスミドの新規クローニングを行いました。pAcGFP1-C1(Clontech)とpDsRedE2はそれぞれGFPとDsRedをリポーター遺伝子として有するプラスミドで、今回はプロモーターとしてD-loopを、終止配列としてTER配列、あるいはMitの複製起点(Ori)を用いました。D-loop-GFP-TER をpMit-GFP、D-loop-GFP-Oriを pMitGFP2、D-loop-DsRed-Oriを pMitDsRedE2としてクローニングし、核とMitでのコドン使用の差異によるMit特異性を担保するために、GFPのG174A、G719A、ならびにDsRedのG429A、G678A変異を導入しました。 各プラスミドを生理食塩水に溶解し、体重の10%容量を8週齢マウスの尾状脈より10秒間で静注することで、肝細胞への遺伝子導入を行いました。遺伝子導入法自体の陽性コントロールとしてCMVプロモーター制御下に核由来のGFPを発現するpCMV-GFPを用い、蛍光顕微鏡による評価とリアルタイムRT-PCRによるメッセージの定量を行いました。 結果として、GFPシグナルは自家蛍光と交絡するため微弱な陽性シグナルの検出に最適な方法ではないこと、ならびにpCMV-GFP導入マウスではGFPのメッセージが確認される一方で、他のプラスミドが導入された肝臓に核由来リポーター遺伝子発現の認められないことが確認されました。 また、26年度に使用予定の遺伝子導入機の開発を進め、ラットを対象として導入効率と安全性の検証を行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目標は、Mitに特異的なプロモーター、リポーター遺伝子、終止配列から構成され、核由来の遺伝子発現を認めない発現ベクターを構築すること、ならびに小動物用のハイドロダイナミック遺伝子導入(HGD)システムを検証することでした。 概要に記載の通り、Mitゲノムに内在する配列であるD-loopをプロモーター、TER、あるいはOriを終止配列として配置し、リポーター遺伝子となるGFP、あるいはDsRedの配列に、核で終止コドン、Mitでアミノ酸をコードする変異を導入することで、Mitへの特異性を担保したプラスミドを3種類、クローニングしました。 用手的なHGDにより各プラスミドをマウスの肝臓へ導入した結果、野生型pCMV-GFPでは核由来のGFP発現が蛍光顕微鏡と定量PCRのいずれでも確認されたのに対し、pCMV-GFPを含め Mit特異的プラスミドを導入した肝臓には、いずれの方法でも明らかな発現は確認されませんでした。唯一、pMit-GFP導入肝において、逆転写前に比し逆転写後の定量PCRで極軽度のメッセージ量の増加が示唆されました。 当初目標としたD-loop-GFP-TERのクローニングに加え、リポーター遺伝子と終止配列の構成を変更したD-loop-GFP-OriとD-loop-DsRed-Oriも追加でクローニングし、いずれも核由来発現を示しませんでした。また、HGDシステムを用いルシフェラーゼ、ならびにヒト凝固第IX因子遺伝子の導入を行い、導入効率と安全性が検証されたことから、平成24年度の目標は十分に達成されました。
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Strategy for Future Research Activity |
pMit-GFP導入肝において、わずかにGFPメッセージが増加している可能性が示唆されたことから、まずは導入プラスミド量の増量、HGD条件の変更などを加えることで、Mit由来遺伝子発現の検出を試みます。 プラスミド単独を用いたHGDによる遺伝子導入ではMitに特異的な遺伝子発現が確認されない場合、当初の計画通りmitochondria localization signal(MLS)を用いた導入システムへと展開する予定です。そのためには最初にMLSとmitochondrial transcriptional factor A(TFAM)との融合蛋白を調整します。Mitゲノム結合蛋白であるTFAMは、Mitゲノム配列を有するプラスミドと複合体を形成することが予想され、またMLSと融合していることから、細胞質内に存在した場合にはMitへと輸送されることが期待されます。 申請者らのこれまでの研究から、HGDによりプラスミド、ならびに融合タンパクを細胞質内へ送達することは容易であり、MLS-TFAMとプラスミドを同時に送達することで、細胞質へ送達されたプラスミドがMitへ移動し、Mit特異的な遺伝子発現を示す可能性が期待されます。 同様に細胞質内でMitへの集積性を有するDQAsomeを用い、各プラスミドがMitに特異的な発現を示す可能性をin vitroでも検討します。また、クローニングしたプロモーターや終止配列がMitにおいて有効に作働しない可能性もあり、ラットとマウスの異種間でMit自体を導入することも試みます。さらに平成26年度のラット肝臓を対象とした局所的なHGDによる導入を目指し、HGDシステムの更なる改良を継続します。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、融合タンパク調整のための発現ベクター、タンパク精製キット、DQAsome調整のための試薬、in vitro導入実験のための細胞系列、Mitの単離キット、単離Mitの活動性評価に必要なELISA試薬などの購入と、HGD導入システムの構成と改善に必要な費用、ならびに研究結果の発表に必要な旅費などに充当する予定です。
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Research Products
(3 results)