2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変マウスを用いた肝線維化の発症機序の解明と新規治療法の開発
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24590967
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岩佐 元雄 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (80378299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GABAZZA Esteban 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00293770)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 凝固線溶系 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実施計画に従い、プロテインS遺伝子改変マウスを四塩化炭素(CCl4)で処理して線維化を惹起し、プロテインSの抑制効果の検討を行ったが、2度の実験で異なる結果であったことから、現在再現性を確認するとともに、並行して、エタノール(EtOH)投与実験を施行した。以下に後者の結果を記す。 study1:ヒトProtein Sトランスジェニック(hPSTG)マウスにEtOHを腹腔内投与し、血清AST、ALT、肝内TNF-α、IL-4、IL-13、osteopontinが著増した。FACS解析では、肝NKT細胞数が増加し、これらはAnnexin-V陽性の減少、FasL陽性の増加を示し、NKT細胞のアポトーシスの抑制の結果と考えられた。study2:hPSTGマウスより分離培養したNKT細胞ではFasL陽性NKT細胞が有意に増加し、アポトーシスが抑制されていた。study3:WTマウス肝より分離培養した単核細胞にhPSを添加後、α-Galactosylceramide(GalCer、NKT細胞リガンド)を加えたところ、上清中のIFN-γ、osteopontinは有意に上昇した。study4:hPSTG、WTマウス肝より分離した単核細胞にGalCer添加しFACS解析をした。GalCer添加によりhPSTG群ではNKT細胞数が増加し、NKT細胞のアポトーシスは抑制されていた。また、GalCerを添加したhPSTGマウス細胞上清中のTNF-α、IL-4、IL-13、osteopontinは有意に上昇していた。 以上の結果から、Protein Sは肝NKT細胞のアポトーシスを抑制することでアルコール性肝障害の発症・進展に関与するという新しい知見が得られ、Protein Sの制御によりアルコール性肝障害の治療に繋がる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは、以前から炎症性肺疾患(J Thromb Haemost 2010; Eur J Immunol 2006)、肥満症(Diabetes Care 2006; Diabetes Care 2004)、糖尿病性腎症(Diabet Med 2007)の病態進展における凝固線溶因子の関与に着目し、活性化プロテインC、トロンビン、thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)などの炎症抑制作用、動脈硬化・腎症進展抑制効果(J Thromb Haemost 2008; J Clin Endocrinol Metab 2003)を報告してきた。即ちプロテインSは活性化プロテインCの補助因子として抗凝固因子として働くが、プロテインS自体が炎症調整作用やアポトーシス抑制作用を持つことを明らかにした(J Thromb Haemost 2009)。そこで、今回、プロテインSの肝線維化抑制作用を想定し検討を行ったが、現在のところ、四塩化炭素(CCl4)投与慢性線維化モデルでは2度の実験で異なる結果であった。しかし、アルコール投与急性肝障害モデルでは、Protein Sは肝NKT細胞のアポトーシスを抑制することでアルコール性肝障害の発症・進展に関与するという新しい知見が得られ、Protein Sの制御によりアルコール性肝障害の治療に繋がる可能性が示唆された。後者の結果は、「Protein Sが炎症調整作用や肝細胞に対するアポトーシス抑制作用を有し、肝線維化を抑制する」という作業仮説とは異なるものであったが、「肝NKT細胞のアポトーシスを強く抑制し、肝障害の進展に促進的に働く」とする新しい知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテインSの肝NKT細胞抑制作用による肝障害進展が、異なる肝障害モデルで普遍的に存在するか確定する必要があることから、平成25年度は、当初の研究実施計画に従い、引き続きプロテインS遺伝子改変マウスを長期間CCl4で処理して線維化を惹起し、プロテインSの関与を検証する。並行して、培養細胞での検討を行う。以下に検討項目を記す。 #1. プロテインS遺伝子改変マウスを用いたプロテインSの肝線維化に及ぼす影響 #2. 培養星細胞を用いたプロテインSによる炎症性サイトカイン産生の検討 #3. 培養星細胞を用いたプロテインSの線維化に及ぼす影響 #4. FκB経路に対するプロテインSの作用の検討 #5. プロテインS処理によるアポトーシスの抑制効果 さらに、研究実施計画に従い、thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)遺伝子改変マウスをCCl4で処理して線維化を惹起し、TAFIの作用を検討する。以下にその検討項目を記す。 #6. TAFI遺伝子改変マウスを用いたTAFIの肝線維化に及ぼす影響の検討
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
#1. プロテインS遺伝子改変マウスを用いたプロテインSの肝線維化に及ぼす影響:プロテインSトランスジェニックマウス、コントロールマウスをCCL4投与群、プラセボ投与群に分類し、薬物を8週間腹腔内に投与、肝、脾を採取し、hydroxyproline含量、活性化星細胞マーカーの免疫染色、Axlなどの発現量の比較を行う。炎症性サイトカイン量及び各種凝固関連因子などを定量し、その変化を比較検討する。 #2. 培養星細胞を用いたプロテインSによる炎症性サイトカイン産生の検討:野生型マウス由来星細胞を分離し、プロテインSとLPSの存在下で培養し、培養上清中のTNFαとIL-1βの発現量をで確認する。 #3. 培養星細胞を用いたプロテインSの線維化に及ぼす影響:細胞を分離し、プロテインSとLPSの存在下で培養し、collagenの発現・産生を測定する。 #6. TAFI遺伝子改変マウスを用いたTAFIの肝線維化に及ぼす影響の検討:TAFI遺伝子改変マウスをCCl4で処理して線維化を惹起し、TAFIの抑制効果を検討する。 これらの研究は主に所属研究室で実施するが、マウス飼育などは本学の生命科学研究支援センター内の専門施設で実施するため、実験に使用するほとんどの設備・機械類は設置されており、研究費の多くは研究試薬などの消耗品の購入に用いる予定である。
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Research Products
(1 results)