2013 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変マウスを用いた肝線維化の発症機序の解明と新規治療法の開発
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24590967
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岩佐 元雄 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (80378299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GABAZZA Esteban 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00293770)
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Keywords | アルコール性肝障害 / プロテインS / NKT細胞 / TAFI |
Research Abstract |
ヒトプロテインS(PS)過剰発現マウスにエタノール(EtOH)を短期間投与する急性アルコール性肝障害モデルを用いて検討したところ、PSは肝NKT細胞のアポトーシスを抑制することでアルコール性肝障害(ALD)の発症・進展に関与するという新しい知見が得られたので、25年度は肝生検組織、NKT細胞と肝細胞の相互作用に関する実験を加え、ALDにおけるNKT細胞の関与を検討した。 肝生検が施行されたALD患者15例を対象に肝内PSおよびCD1d発現量を免疫染色にて検討したところ、ALD患者肝におけるPSおよびCD1d の発現は、手術時などに得られた健常者肝と比較し有意に増加していた。WTマウスより肝細胞を分離培養し、ヒトPS、EtOHを添加し、肝細胞におけるCD1dの発現をPCRとFACSで解析したところ、PS処理後EtOH添加された肝細胞におけるCD1dの発現は、EtOH単独処理された肝細胞に比較して有意に増強していた。以上より、ALD患者肝組織ではPS、CD1dが高発現しており、肝障害への関与が示唆された。さらに、PSはNKT細胞のアポトーシスを抑制するとともに、肝細胞のCD1dの発現を増強することによりNKT細胞の活性化を高め、ALDを増悪させると考えられた。 また、thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)欠損マウスにCCl4を長期間投与する実験を行ったところ、TAFI欠損マウスでは線維化が促進されていた。さらに、ヒト血漿を用いてTAFIと臨床検査値との関係を検討したところ、肝病変進展例でTAFI値が低く、TAFIと補体、特にC5とは逆相関していた。以上より、慢性肝疾患では肝で産生されるTAFIの低下が起こり、TAFIが有する補体制御能が低下した結果、炎症、線維化が進展するとの考えに至り、検証実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは、以前から炎症性肺疾患(J Thromb Haemost 2010; Eur J Immunol 2006)、肥満症(Diabetes Care 2006; Diabetes Care 2004)、糖尿病性腎症(Diabet Med 2007)の病態進展における凝固線溶因子の関与に着目し、活性化プロテインC、トロンビン、thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)などの炎症抑制作用、動脈硬化・腎症進展抑制効果(J Thromb Haemost 2008; J Clin Endocrinol Metab 2003)を報告してきた。即ちプロテインS(PS)は活性化プロテインCの補助因子として抗凝固因子として働くが、PS自体が炎症調整作用やアポトーシス抑制作用を持つことを明らかにした(J Thromb Haemost 2009)。そこで、今回、PSの肝線維化抑制作用を想定し検討を行ったが、四塩化炭素(CCl4)投与慢性線維化モデルでは、一定の結論が得られなかった。しかし、急性アルコール性肝障害(ALD)モデルでは、PSはNKT細胞のアポトーシスを抑制するとともに、肝細胞のCD1dの発現を増強することによりNKT細胞の活性化を高め、ALDを増悪させるという新しい知見が得られ、PSの制御によりALDの治療に繋がる可能性が示唆された。現在、論文投稿準備中である。さらに、thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)欠損マウスにCCl4を長期間投与する実験、ヒト血漿を用いたTAFIの測定から、慢性肝疾患ではTAFI低下が起こり、TAFIによる補体制御が困難となった結果、炎症、線維化が進展するという結果が得られつつある。 以上、申請時の作業仮説とは異なる部分があるものの新たな知見も得られており、満足できる結果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
急性アルコール性肝障害(ALD)モデルでは、プロテインS(PS)はNKT細胞のアポトーシスを抑制するとともに、肝細胞のCD1dの発現を増強することによりNKT細胞の活性化を高め、ALDを増悪させるという知見が得られたので、論文作成を行う。thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)欠損マウスに四塩化炭素を長期間投与する実験、ヒト血漿を用いたTAFIの測定から、慢性肝疾患ではTAFI低下が起こり、TAFIによる補体制御が困難となった結果、炎症、線維化が進展することが示唆されたため、26年度研究実施計画に従い、これを検証する実験を行う。以下に検討項目を記す。 TAFI遺伝子改変マウスを用いたTAFIの肝線維化に及ぼす影響 培養細胞を用いたTAFIによる炎症性サイトカイン産生の検討 培養細胞を用いたTAFIの線維化に及ぼす影響 ヒト肝組織を用いたTAFI、補体の免疫染色
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
急性アルコール性肝障害(ALD)モデルでは、プロテインS(PS)はNKT細胞のアポトーシスを抑制するとともに、肝細胞のCD1dの発現を増強することによりNKT細胞の活性化を高め、ALDを増悪させるという知見が得られた。この研究の解釈に時間を要し、研究計画では並行して進める予定であったthrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)欠損マウスの実験に若干の遅延を生じた。 PSに関しては実験を終了し、論文作成を行う。 thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)欠損マウスについては、26年度研究実施計画に従い、以下の検討項目を急ぎ施行する。TAFI遺伝子改変マウスを用いたTAFIの肝線維化に及ぼす影響、培養細胞を用いたTAFIによる炎症性サイトカイン産生の検討、培養細胞を用いたTAFIの線維化に及ぼす影響、ヒト肝組織を用いたTAFI、補体の免疫染色
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Research Products
(2 results)