2012 Fiscal Year Research-status Report
C型肝炎治療効果を修飾するインターフェロンλのメカニズム解明と個別化医療への応用
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24590988
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
渡邊 綱正 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20338528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅内 文中 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20405161)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / 遺伝子多型 / IL28B / インターフェロン誘導遺伝子 / 自然免疫応答 / IFN-λ / PEG-IFN-α治療 |
Research Abstract |
C型肝炎治療効果予測因子としてIL28B(IFN-λ3)の遺伝子多型(SNPs)が報告されたが、C型肝炎患者におけるIL28B遺伝子すなわちIFN-λがどのような機序でIFN-α投与の治療効果に影響するかは未だ不明である。C型肝炎治療に対する生体応答を明らかとするために、まず獲得免疫が除去されたSCID(免疫不全)マウスを背景とするヒト肝細胞置換キメラマウスのC型肝炎ウイルス(HCV)感染モデルを用いて自然免疫応答を検討した。 HCV持続感染が成立したキメラマウスにPEG-IFN-αを投与すると、血中ウイルス量の減衰パターンと肝内インターフェロン誘導遺伝子(ISGs)発現パターンはIL28B SNPによる差を認めなかったが、唯一、IL28B SNPのメジャータイプで肝内IFN-λs発現量が有意に高値を示した。 一方、PEG-IFN-α投与時SNPsにより発現量に差を認めたIFN-λsが、肝細胞ISG誘導を付加的に増強させて抗ウイルス作用を修飾する可能性が示唆される。そこで、I型IFN(IFN-α/β)受容体およびIII型IFN(IFN-λs)受容体ノックアウト(KO)マウスを用いて、I型およびIII型IFNの細胞内ISG干渉作用を検討した。結果、I型ないしIII型IFN単独による誘導能が弱いISGsでは同時投与によるISG相加作用を認めたが、単独投与で十分な誘導を呈するISGsでは同時投与を行っても増強作用は認めなかった。したがって、ヒト肝細胞ではPEG-IFN-α投与による誘導IFN-λsの付加的作用が加わったとしてもISGsは劇的な増強をきたす可能性は低いと判断された。 以上の実験から、PEG-IFN-α投与により肝内で誘導されるIFN-λsを介した獲得免疫応答がHCV排除に重要であり、この応答がIL28B SNPsにより異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
肝内自然免疫応答を解析できるキメラマウスモデルを使用して、PEG-IFN-α治療に伴うIFN-λの機能解析が順調に進展した。しかし、当初の予定通りIFN-λの獲得免疫修飾作用の重要性がより明瞭となり、次年度以降の研究が重要となってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、次年度はIFN-λsによる獲得免疫応答メカニズムを明らかとする予定である。IFN-λ受容体KOマウスの脾臓をコラーゲン処理し、MACSカラムを用いてmPDCA-1マイクロビーズにて樹状細胞(DC)を、mCD3/mCD4マイクロビーズにてCD4+T細胞を分離する(適宜FCMにて細胞回収率を確認)。抽出したDCをex vivoでIFN誘導能(IFN-α/βおよびIFN-λs)を有するpolyI:Cで刺激した後にCD4+T細胞と共培養する。その後、培養上清中のTh1/Th2サイトカインをELISAにて測定する。またTh1転写因子であるT-bet発現をリアルタイムPCRで解析する。さらにTh1優勢肝炎モデルであるConA誘導型肝炎をwildマウスとIFN-λ受容体KOマウスで発症させ、IFN-λsのT細胞応答(Th1/Th2バランス)に与える影響をin vivo にて解析する。最終的には、養子細胞移入療法によりKOマウスにIFN-λ受容体発現wild typeマウスDCを移植し、肝炎の程度をin vivoで検討する。これら各種実験により、DCから産生されるIFN-λsによるTh1サイトカインバランス偏向性、Th1型ConA肝炎におけるIFN-λsの影響、および同Th1型肝炎を修飾するIFN-λsの機能解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度同様、実験動物飼育費用と実験補助の人件費が予算の大半を占める。そのほかに、免疫学的解析を行うための抗体や細胞保存用の液体窒素、また最新の解析技術を習得するための書籍や論文投稿用の費用が必要となる予定である。
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Research Products
(8 results)