2013 Fiscal Year Research-status Report
肝癌におけるエピゲノム変化の解析とヒストンアセチル化を標的とした新規治療の探索
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24590993
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 英胤 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (80186949)
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Keywords | 肝細胞癌 / ヒストン修飾 / エピジェネティクス / マイクロRNA / EZH2 / レプリコン細胞 / C型肝炎ウイルス |
Research Abstract |
ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬SAHAのHCV RNA増幅抑制効果を昨年度検討したレプリコン細胞OR6以外で検討した結果、AH1R細胞やHCV JFH株(脇田ら)をHuh7.5細胞に導入した細胞においてもOR6同様、細胞障害を認めない濃度でHCV増殖抑制が認められた。他のORL6, ORL11細胞では細胞障害が強く、細胞障害を認めない濃度でのHCV増幅抑制効果はみられず、レプリコン産生細胞株によってSAHAの作用が異なることがわかった。 SAHAの癌細胞株HepG2に対する効果をアレイにて検討し、SAHAが、癌細胞の維持に必要で、発現亢進しているEZH2 (enhancer of zeste homologue 2) 発現を強力に抑制することを発見した。さらに網羅的検討にて、これがmiR-1246, miR-302aの発現亢進によるものであることを明らかにした。これらmiRNAの標的遺伝子であるDYRK1A, CDK2, BMI-1, Girdin発現はSAHA添加により低下し、アポトーシス、細胞周期停止、遊走能低下をきたした。ChIPアッセイを行ない、EZH2がmicroRNAのプロモーター領域へ結合する現象をSAHAが抑制することを確認した。杉山博士の樹立したHCV持続感染細胞HPIでは、細胞障害作用が強く、HCV増殖抑制効果をみることはできなかった。 以上から、SAHAのHCV 増殖抑制作用と癌細胞障害活性のバランスは、細胞のEZH2の発現に左右されることが推定された。 DNA脱メチル化剤である5-AZA (5-aza-2‘-deoxycitidine) がHCV 増殖に及ぼす影響をレプリコン細胞OR6を用いて検討した。その結果、5-AZAはHCV増殖を抑制した。その作用はSAHAとは異なり、HCV増殖を制御するmiR-122を直接減少させるためであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に述べられた、観察変化の大きかった薬物SAHAに焦点を絞り、標的となる遺伝子をマイクロアレイにて網羅的に検討し、さらにChIPアッセイも行ない、キーファクターと考えられるEZH2、および数種のmicroRNAを見つけることができ、さらにこれらの発現変化を検証し、当初の予定をほぼ達成できた。しかし、HCV増殖制御をヒト癌細胞にて観察しているため、SAHAの作用は細胞障害作用とのバランスにより細胞間で異なることがわかり、計画していた杉山博士の樹立したHPI細胞での観察が不十分であった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に則り、特定された遺伝子(今回はEZH2)やmicroRNAの作用を直接導入などの方法にて検証する。 EZH2に関しては、今回得られた仮説を検証するために、細胞株毎に発現量とSAHA誘導性細胞障害との関係を調べていきたい。 SAHA以外の薬物の作用については、今年度は、やはりSAHAと同様ヒストンタンパクの修飾薬であるヒストンメチル化酵素阻害薬DGNep (3-deazaneplanocin A) の効果をSAHAで検討したものと同様に行ない、ヒストンタンパクの修飾とウイルス制御、細胞障害との関連を追求する。 また、HPI細胞を用いてHCVの感染維持に重要な因子を追求する。さらにキメラマウスなどを用いて、SAHAなどの薬物のin vivo効果を検討する。
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[Journal Article] Anti-influenza activity of c60 fullerene derivatives.2013
Author(s)
Shoji M, Takahashi E, Hatakeyama D, Iwai Y, Morita Y, Shirayama R, Echigo N, Kido H, Nakamura S, Mashino T, Okutani T, Kuzuhara T.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 8
Pages: e66337
DOI
Peer Reviewed
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