2012 Fiscal Year Research-status Report
C型肝炎ウイルスと腫瘍ニッチ関連分子による肝癌幹細胞制御機構の解析
Project/Area Number |
24590994
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
足立 雅之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70338028)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肝臓学 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実施計画として、以下の2つの検討を提案し、実行した。 【肝癌細胞株における癌幹細胞マーカーの同定と肝癌幹細胞に対するHCV感染の役割】 肝癌細胞株Huh7細胞を用いて検討したところ、CD133陽性のSide Population(SP)細胞がin vivo腫瘍造成能、Sphere形成能、抗癌剤耐性能といった癌幹細胞の特性を持つことが分かった。以上の結果を基に、高HCV複製感受性株Huh7.5細胞、HCV subgenomic repliconを発現するHuh-FL細胞、さらにHCVによるウイルス増殖や肝発癌に重要とされるHCV-core蛋白、HCV-NS5A蛋白を発現するアデノウイルスをHuh7細胞に感染導入し癌幹細胞マーカーの発現変化を解析したところ、HCV感染により癌幹細胞の特性が増強し、この変化はインターフェロンによるウイルス排除によりHuh7と同等まで回復した。このHCVによる癌幹細胞の増強には、hypoxia-inducible factorが関与していることを見出し、現在論文準備中である。 【細胞外マトリックス液性分子Periostinによる肝癌幹細胞に対する機能解析】 次に、本研究では、腫瘍ニッチや線維化に重要なPeriostinに注目し、Periostin KOマウスを用いて、癌幹細胞の自己複製能・未分化性維持機構におけるPeriostin関与を検討する。 まず、四塩化炭素によるマウス肝硬変モデルおよびDEN誘発肝癌モデルを用いて、検討を行ったところ、Periostin KOでは肝線維化が抑制され、DEN誘発肝癌で腫瘍数、腫瘍径何れも少なかった。現在更なる解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究では、①肝癌幹細胞の自己複製能、未分化維持能・腫瘍形成能・アポトーシス抵抗性といったstemness維持機構に対するHCVの役割の解明、さらに②腫瘍ニッチや線維化に重要な因子Periostinに注目し、癌幹細胞の自己複製能・未分化性維持機構におけるPeriostin関与を検討するものである。 上述の通り、平成24年度の研究実施計画は計画通り実施され、①の肝癌幹細胞におけるHCVの役割を解明した(論文準備中)。Periostinの役割については、化学物質を用いた肝癌モデル、および肝線維化モデルで、Periostinの重要性が示唆される結果を得ることが出来た。現在更なる解析を行っている。 上記のことから、平成24年度の研究計画は概ね計画通りに遂行でき、平成25年度以降も順調に研究計画を実現できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の実施計画として、【肝癌幹細胞における癌幹細胞マーカーの同定と肝癌幹細胞に対するHCV感染の役割】および【細胞外マトリックス液性分子Periostin による肝癌幹細胞に対する機能解析】を提案した。 【肝癌幹細胞における癌幹細胞マーカーの同定と肝癌幹細胞に対するHCV感染の役割】については、既に24年度にこれによりHCV による肝癌幹細胞制御に関わる分子としてHypoxia inducible factorを同定し、論文準備中である。 次の【細胞外マトリックス液性分子Periostin による肝癌幹細胞に対する機能解析】については、原発性肝癌における腫瘍浸潤筋線維芽細胞の分離と腫瘍浸潤筋線維芽細胞の機能解析として、①Periostin ノックアウトマウスと野生型マウスを用いてDEN誘発肝癌モデルを用いて肝癌を作成し、形成された腫瘍をコラゲナーゼ処理後、既報の方法をもとに腫瘍浸潤筋線維芽細胞を単離する。さらに、Periostinノックアウトマウスの肝臓より単離し培養皿上で活性化した肝星細胞についても単離する。さらに分離した筋線維芽細胞の機能解析を行う。特に、増殖能、遊走能、マトリックス産生能(Collα1(I), MMPs 産生など)、癌浸潤、転移、血管新生や幹細胞維持に重要な液性因子(SDF-1, Ang1, VEGF, HGF, FGF2 など)の発現を検討する。recombinant periostin を用いて、Periostin の作用を検討することを検討している。平成24年度の研究結果より、上記計画は実行可能と思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験試薬等で130万円、実験器具の修理等で間接費39万円を使用予定
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