2012 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティクス制御をターゲットとした脂肪性肝炎の病態進展抑制の検討
Project/Area Number |
24590995
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
今 一義 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20317382)
川上 恭司郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90589227)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂肪肝 / 非アルコール脂肪肝炎 / 高脂肪食 / 食事療法 / 運動療法 / 遊離脂肪酸 |
Research Abstract |
Vivoの実験系では当初の計画通りに肥満モデルマウスの雄性KK-Ayマウスを用いた実験を行ったが、通常食では12週齢の時点でも肝脂肪化が軽微であったため、よりヒトの脂肪肝に近い病態を再現するために高脂肪食摂取による負荷を与えることにした。それに合わせ、次年度の予定であった低脂肪食摂取+トレッドミル負荷モデルの作成を今年度に繰り上げた。8週齢のKK-Ayマウスに高脂肪食を4週間投与したところ、肝組織に著明な小滴性+大滴性の脂肪沈着が得られた。そこで、4週間の高脂肪食負荷後に低脂肪食に切り替えて食餌制限もしくはトレッドミル装置による運動負荷をさらに4週間与えた。その結果、食餌制限のみ、もしくは運動療法単独では肝脂肪化、体重、肝体重比、血清ALT値のいずれもが改善しなかった。一方、食餌制限と運動負荷を共に行った群では肝組織上の脂肪滴はほぼ消失し、顕著かつ有意な体重および肝体重比の低下が得られ、血清ALT値に関しても有意な改善が得られた。この結果から、ヒトの脂肪肝に対する食事運動療法の効果を見る上で極めて有効な疾患治療モデルと考えられた。現在、エピゲノムの変化に関する解析を行っている。 Vitroの実験系に関しては、C57Bl6マウスよりコラゲナーゼ還流法にて肝細胞を単離して初代培養肝細胞の系を作成し、同濃度のオレイン酸(不飽和シス脂肪酸)、エライジン酸(不飽和トランス脂肪酸)、パルミチン酸(飽和脂肪酸)を加えて遊離脂肪酸の質の変化による肝細胞障害の相違について検討した。その結果、オレイン酸負荷では肝細胞死は軽微であったのに対し、エライジン酸およびパルミチン酸では有意な肝細胞死を惹起した。この結果は以前KKAyマウス+フルクトース負荷モデル(in vivo)で得られた結果と同様であり、脂肪酸の質による肝細胞障害の変化を見る上で有効なモデルであることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では平成24年度に解析系の確立、平成25年度にモデル動物の作成を目指していたが、実際に実験を行って得られた結果から、モデル動物の作成を優先して行うように順序を変更した。その結果解析系の確立に関しては未達となったが、目的を達成するのに有効なモデルを作成することができた。よって、計画全体でみるとおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はvivo、vitro共に疾患治療モデルの作成を優先したため、エピジェネティクス解析に関しては報告するレベルにまで到達することができなかった。このため、次年度は本年度に作成したモデルに関してエピジェネティクス解析を中心とした解析を優先的に引き続き行っていく予定である。肝組織および筋組織は採取済みであり、核蛋白を用いたウエスタンブロット法によるヒストン修飾蛋白の発現の変化、RT-PCR法によるエネルギー代謝関連のシグナルの解析を中心に研究を遂行していく予定である。さらに、ミトコンドリア機能および酸化ストレス応答性変化の解析を行い、インスリン抵抗性の解析、ミトコンドリア機能解析のために動物モデルを追加する。また、Vitroに関しては初代培養肝細胞の系を用いて共焦点型レーザー顕微鏡、マイクロプレートリーダーを用いたストレス応答、ミトコンドリア機能、肝細胞死の解析を行う。また、vivoと同様に、核蛋白を採取しウエスタンブロット法によるヒストン修飾蛋白の発現の変化、RT-PCR法によるエネルギー代謝関連のシグナルの解析を行う。その上で、平成26年度の薬物治療の試みにつながる研究データをだしていく方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品は主にヒストン修飾関連蛋白およびRNAの検出のための抗体・試薬の購入、細胞培養関連試薬・器具に充てる。動物モデルの追加が必要であり、実験用動物を購入する。また、データ解析のためにPC1台および解析用ソフトを購入する予定である。実験結果の発表および情報交換のため、国内および海外の学会への参加を予定している。
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