2013 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティクス制御をターゲットとした脂肪性肝炎の病態進展抑制の検討
Project/Area Number |
24590995
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
今 一義 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20317382)
川上 恭司郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, 研究員 (90589227)
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Keywords | 小胞体ストレス / 化学シャペロン / NAFLD / NASH / 肝細胞癌 / エピジェネティクス / 肝線維化 |
Research Abstract |
本年度は、脂肪性肝炎の病態の進展過程とエピジェネティックな変化を解析するため、脂肪性肝炎+肝発癌モデルのストレプトゾトシン+高脂肪食投与マウス(NASH-BL6N)を用いた研究を行った。NASH-BL6Nマウスは12週令で肝細胞の脂肪肝・肝細胞膨化・炎症を来たしてヒトの非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に酷似した病理像を呈し、16週令で肝線維化、肝がんを発症する。NASH-Bl6Nマウスの肝組織から酸抽出した核蛋白に対してアセチル化およびメチル化ヒストン抗体を用いたウエスタンブロット法で解析したところ、12週令のNASH-Bl6Nマウスの肝組織にてヒストンH3の27番目のリジン残基(H3Lys27)アセチル化の亢進を認めた。また、肝組織の蛋白を用いた実験ではDNAメチル化に寄与するDMNT1の発現が亢進していた。同マウスの肝組織で小胞体ストレスマーカーのeIF2αのリン酸化およびGRP78の発現亢進も認められ、小胞体ストレスが病態進展に深く寄与している可能性が示された。そこで我々は、化学シャペロンのフェニル酪酸(PBA)の効果を検討した。NASH-BL6NにPBAを8週令より連日腹腔内投与したところ、12週令の時点でのeIF2αのリン酸化、GRP78の発現はいずれも有意に抑制され、肝脂肪化、炎症、線維化が軽減し、16週令の肝線維化、肝発癌も有意に抑制された。アセチル化H3Lys27はコントロールレベルにまで減少し、DMNT1の発現も有意に抑制された。このことから、NASH-Bl6Nマウスにおける肝発癌のプロセスには小胞体ストレスの亢進を介した病態進展とエピジェネティックな変化が関与しており、化学シャペロンによる小胞体ストレスの軽減はそれらを全て抑制し得ることが示された。これらの結果は、欧州肝臓病学会(EASL)第49回総会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回は、前年度まで未達であった核蛋白を用いたヒストンアセチル化・メチル化の解析を起動に乗せることができた。また、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)のモデルマウスについて前年度から実験モデルを変更し、脂肪性肝炎から線維化、肝癌に進展するストレプトゾトシン+高脂肪食摂取マウスを用いた。その結果、同モデルについて病態進展の経過を解析・評価し、エピジェネティクス解析の有効性について確認するだけでなく、化学シャペロンであるPBAが同モデルマウスの病態を軽減することを示すことができた。これらの結果から、化学シャペロンによる抗小胞体ストレス療法がNASHの病態進展、特に肝発癌に至る病態進展を抑制し得ることが示された。本年度はNASHの進展した病態を評価するために実験モデルマウスを当初の予定から変更し、病態の評価を行った。その結果、同モデルがNASHおよびNASH関連肝発癌の解析に有効なモデルであることを確認し、小胞体ストレスおよびエピジェネティクス解析のNASH病態への関与を解析するのに適したモデル動物であることを示すことができた。さらに、化学シャペロンによる病態の抑制効果を示すことができ、計画全体としては概ね順調に推移していると評価した。しかしながら、クロマチンIPによるエピジェネティクス解析にまでは至らなかった。また、エピジェネティクスな変化を直接抑制することによる影響の評価やvitroの系による検討もできておらず、次年度の課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今回のNASH-Bl6N+PBAのモデルについては、アセチル化ヒストン抗体でIP-シークエンスを行うことによりエピジェネティックな変化をより厳密に評価していく。また、PBAによる脂肪性肝炎の病態進展に対する抑制効果が他の化学シャペロンでも有効な現象であるのかを確認するため、タウロソデオキシコール酸など他の化学シャペロンによる効果も検討する。vitroの系として初代培養肝細胞を作成し、エピジェネティックな変化が生じた際のエネルギー代謝関連シグナルの変化と治療効果についての解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗状況から次年度に持ち越す必要があるため 実験用マウス購入および消耗品の購入に充てる。
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