2012 Fiscal Year Research-status Report
B型肝炎症例への核酸アナログ製剤による薬剤耐性と新規治療薬の検討
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24590999
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okinaka Memorial Institute for Medical Research |
Principal Investigator |
鈴木 文孝 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (80322642)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | B型肝炎 / ラミブジン / アデホビル / エンテカビル / 多剤耐性ウイルス / テノホビル / 次世代シークエンサー |
Research Abstract |
ラミブジン治療に抵抗性を示した症例からの多剤耐性ウイルスの出現と治療効果について検討した。ラミブジン抵抗例406症例(ラミブジン治療中に血清HBV DNA量が最低値より1 log copies/mL以上続けて上昇した症例、または、ラミブジン治療1年以降でDNA量が5 log copies/mL以上の症例)において、アデホビルとの併用療法を行った。ラミブジンとアデホビルの併用療法(観察期間中央値5.4年)では、HBV DNAの陰性化率(<2.6 log copies/mL)は1年目63%、3年目75%、5年目81%、7年目86%と良好であった。一方併用療法開始時に多剤耐性ウイルス(ラミブジン+アデホビル耐性、エンテカビル耐性)を認めた症例は11例(2.7%)であった。内訳はrtM204の変異を伴わないrtA181S/Tを認めた症例が4例、rtM204の変異を同じcloneに伴わないrtA181Tを認めた症例が3例、rtA181Tと rtM204V/Iの変異を認めた症例が2例、エンテカビル耐性変異を認めた症例が2例であった。11例中4例のみが併用療法中に陰性化が得られたが、3例では十分な効果が得られずテノホビルの投与を必要とした。一方、併用療法開始後12例(3%)でラミブジンとアデホビル両剤に対する耐性ウイルスの出現を認めた。RtA181S/Tの変異を11例に認め、rtT184I またはrtM250Iの変異を4例に認め、rtA181TとN236T のdouble mutationを2例に認めた。併用療法中5例でDNA量の再上昇を認めテノホビル等の他の治療に移行した。この5例中2例はrtA181TとN236T のdouble mutationであり、残り3例では多彩な変異が出現した症例であった。多剤耐性ウイルスの出現は、ラミブジンとアデホビルの併用療法に抵抗性を示す可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究では、 ① ラミブジン治療抵抗例および抵抗例に対するラミブジンとアデホビル併用療法施行例における多剤耐性ウイルスの出現頻度とその後の臨床経過についての検討。 ② エンテカビル耐性の頻度や耐性パターンと臨床経過についての検討。 ③ 多剤耐性ウイルスの出現例に対する次世代シークエンサーを用いた高感度の耐性ウイルスの検討。 ④ 多剤耐性ウイルスによる肝炎出現例に対するテノホビル治療の効果。が目的である。現在①の研究は終了し、論文投稿中である。②と④の研究は現在解析中である。③の研究は、今年度中に解析を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、 ①エンテカビル耐性の頻度や耐性パターンと臨床経過についての検討を行う。耐性ウイルスの検討は、invader assay, direct-sequence法にてスクリーニングを行い、最終的にはcloning法にて各耐性変異がどのように関係しているか把握する予定である。 ②多剤耐性ウイルスの治療後出現例において、invader assay, direct-sequence法、cloning法による測定では治療開始時に耐性ウイルスを認めていない。そこで多剤耐性ウイルスが出現した症例での治療開始時の血清から高感度の測定系である次世代シークエンサーを用いた解析を行う。この検討により、核酸アナログ製剤で多剤耐性ウイルスが治療前から検出されるかどうかを明らかにすることができる。 ③多剤耐性ウイルスによる肝炎出現例に対するテノホビル治療の効果。新規治療薬であるテノホビルの多剤耐性ウイルスに対する効果を臨床的、およびウイルス学的に検討する。テノホビル投与後の耐性ウイルスの動態については、direct-sequence法以外にも次世代シークエンサーを用いた解析を行い詳細な検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、PCRに使用する試薬類(BigDyeTerminator vl.1 CycleSequencingKit 4337451, FAST START HIGH FEDLITY PCR SYSTEM, QIAGEN QIAamp DNA mini kitなど)やシークエンサーに使用する試薬類(3100/3130バッフォリザーバ用ゼブタストリップなど)に使用する。 また次世代シークエンサー(Ion Torrent [TM])による測定も行うため、測定用の試薬類、チップ等にも使用する。
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