2012 Fiscal Year Research-status Report
C型肝炎ウイルスのコア領域アミノ酸変異が関わる薬剤耐性と肝発癌メカニズムの解明
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24591000
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
加藤 孝宣 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (20333370)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 慢性肝炎 / C型肝炎ウイルス / インターフェロン / 肝発癌 / 薬剤感受性 |
Research Abstract |
C型肝炎ウイルス(HCV)core領域アミノ酸70と91の変異は、インターフェロン(IFN)治療に対する抵抗性と肝発癌に関与していることが知られている。しかしその機序についてはよくわかっていない。そこでHCV JFH-1 株(genotype 2a)とTH株(genotype 1b)のキメラウイルスを用い、そのCore領域アミノ酸70/91に変異を導入し、これらのアミノ酸変異がHCV増殖やIFN感受性に与える影響について検討を行った。 JFH-1 株の構造領域をTH株由来に置換したキメラウイルスを作成し、さらにcore領域にaa70(R/Q)とaa91(L/M)の変異を導入した(TH/JFH1-RL株、RM株、QL株、QM株)。合成したこれらの変異株の全長RNAをHuh7.5.1細胞に導入し、HCV陽性細胞陽性率とそれぞれの細胞内のHCVコア蛋白室量をFACSを用いて解析した。その結果、aa70の変異株(QM株, QL株)でを導入した細胞ではHCV陽性細胞の割合は低下していたが、HCV陽性細胞中のコア蛋白質量は増加していることが明らかになった。そこで、変異株を導入したHuh7.5.1細胞をIFN刺激し、細胞表面に発現するMHC ClassIの発現を評価した。すると、HCVのコア蛋白質の蓄積を認めたQM株、QL株では細胞表面でのMHC ClassI発現が強く抑制されていた。 この研究により、Core領域アミノ酸70番の変異はHCV蛋白質の細胞内への蓄積を誘導し、さらにMHC Class1による抗原提示能を強く抑制していることが明らかとなった。これらの結果は、Core領域70番アミノ酸に変異を有するウイルスが、宿主細胞内に蓄積し抗原提示能を抑制することで宿主リンパ球による細胞障害を逃れることで、IFN治療に対する抵抗性を獲得していることを示していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討により、コア領域aa70の変異株(QM株, QL株)ではウイルスの産生量が低いことがわかった。さらに本年度は、HCVのレセプター分子が発現していない細胞(Huh7-25細胞)を用い、これらの変異がHCVのライフサイクルに与える影響を詳細に評価し、これらのコア領域aa70の変異株が細胞内での感染性ウイルス粒子の生成効率の低下に関わっていることを明らかにした。また、FACSを用いた解析により、これらの変異株の導入細胞ではコア蛋白質が細胞内に蓄積していることも示した。そして、この細胞ではMHC Class1の細胞表面への発現が強く抑制されており、免疫細胞による感染細胞の排除に対して抵抗性になっていると考えられた。これらの知見は、このコア領域のアミノ酸変異が関与するIFN感受性や肝発癌について、その機序を説明できるものであり意義深いと考える。今後はこの得られた知見が、他のgenotype 1bの株においても普遍的に観察できるか検討を行う。本年度の研究により、上記のような新しい知見が得られたことから、研究は順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見から、このコア領域aa70の変異はHCV粒子生成に影響を与え、さらに免疫細胞による感染細胞の排除に対する抵抗性に関わっていることが明らかになった。そこで、今後はこれらの現象がどのように誘導されているのか、その機序を明らかにする。まず、これらの変異株導入細胞でコア蛋白質を免疫染色することにより、コア領域aa70の変異を持ったコア蛋白質の局在を評価する。特に粒子形成の場として知られている細胞内脂肪滴との共局在について検討を行う。さらにMHC Class1の発現に影響を与えている宿主因子を同定する。また、これらの知見がgenotype 1bの株において普遍的に観察されるか検討するために、他のgenotype 1b株とのキメラウイルスを用いた検討も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記研究のために、主に分子生物学的試薬や器具、細胞培養や遺伝子導入、ウイルス感染実験を行うための試薬や器具などの消耗品を購入する。また研究成果発表のための学会出張用予算も計上したい。
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Research Products
(2 results)