2012 Fiscal Year Research-status Report
胆嚢癌の細胞内シグナルネットワークに対する分子標的治療の臨床への橋渡し的検討
Project/Area Number |
24591008
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 隆 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10569106)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 大 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (20582513)
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70463841)
池上 恒雄 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (80396712)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 胆嚢癌 / MAPKシグナル / PI3Kシグナル / MEK阻害剤 / mTOR阻害剤 |
Research Abstract |
胆道癌のなかで最も予後不良であり、治療の分子標的も明らかとなっていない胆嚢癌について、我々はこれまでに臨床検体においてMAPKシグナルおよびPI3Kシグナルの活性化がみられることをリン酸化ERK、リン酸化S6の免疫染色により見出している。したがって、これらのシグナルが治療の標的となる可能性がある。ヒト胆嚢癌培養細胞株のin vitroでの増殖を検討すると、MEK阻害剤およびmTOR阻害剤はそれぞれ単独にても増殖抑制効果を示し、併用するとさらに強い増殖抑制効果を示した。そこで、この胆嚢癌細胞株をヌードマウスの皮下に移植しin vivoにおけるこれらの阻害剤の抗腫瘍効果を検討した。その結果、無治療群に比べ、MEK阻害剤、mTOR阻害剤とも、単独投与にて有意に皮下腫瘍volumeの抑制がみられ、これらの併用では単剤投与よりもさらに強い抑制効果を示す傾向がみられた。皮下腫瘍の免疫組織学的検討でも、MEK阻害剤投与によりリン酸化ERK発現の減弱、mTOR阻害剤投与によりリン酸化S6発現の減弱がみられ、両者の併用では、リン酸化ERK・リン酸化S6の双方の発現が減弱していた。細胞増殖を示すPCNAの核染色も阻害剤投与群で抑制されていた。以上より、MEK阻害剤、mTOR阻害剤は、各々単独でも有効な治療法である可能性が示唆され、またそれらの併用により治療効果が高まる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ヒト胆嚢癌細胞株のin vitroにおける増殖に対するMEK阻害剤、mTOR阻害剤それぞれの単独投与および併用投与の増殖抑制効果の追試と、ヒト胆嚢癌細胞株のヌードマウスへの皮下移植モデルに対するMEK阻害剤、mTOR阻害剤それぞれの単独投与および併用投与のin vivoでの抗腫瘍効果の検討を行った。in vitroでの胆嚢癌細胞株の増殖は、各々の阻害剤単独投与にて抑制され、併用によりさらに抑制効果が上がる結果を得た。細胞周期の変化を検討すると、MEK阻害剤単独投与にてsub G1 phaseの割合が上昇した。mTOR阻害剤単独ではsub G1 phaseの増加は有意とは言えなかった。各単独投与に比べ、MEK阻害剤とmTOR阻害剤の併用では、有意にsub G1の増加がみられた。胆嚢癌細胞株のヌードマウス皮下移植モデルにおいてこれらの阻害剤投与によるin vivoの抗腫瘍効果を検討したところ、無治療群に対し、MEK阻害剤、mTOR阻害剤とも単独投与にて有意に腫瘍volumeの抑制がみられた。その効果は、mTOR阻害剤の方が強い傾向であった。MEK阻害剤とmTOR阻害剤の併用投与を行うとより強い腫瘍volume抑制効果がみられた。これらの皮下腫瘍を摘出し免疫組織学的検討を加えたところ、MEK阻害剤投与にてリン酸化ERKの減弱、mTOR阻害剤にてリン酸化S6の減弱が確かめられ、併用投与にてその両方の減弱がみられた。PCNA核染色も阻害剤投与群で無治療群に比べ減弱しており、細胞増殖の抑制がin vivoでもみられていた。以上の結果から、胆嚢癌に対するMAPKシグナルおよびPI3Kシグナルの阻害は、有力な治療法となることが示唆され、その併用療法によってより効果が上がる可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
実臨床への本研究の応用を念頭におくと、現在の標準治療薬と比較してMEK阻害剤+mTOR阻害剤併用療法が優越性を持つかという点が重要となってくる。そこで、標準治療薬gemcitabineの抗腫瘍効果をここまで用いてきた胆嚢癌モデルで評価し、MEK阻害剤+mTOR阻害剤併用療法の成績と比較する必要がある。in vitroのヒト胆嚢癌細胞株及びin vivoの皮下移植xenograftに対し、胆嚢癌の標準治療薬gemcitabineを投与し、MEK阻害剤+mTOR阻害剤併用治療の抗腫瘍効果とのインパクトの相違・組織学的変化・細胞内シグナル変化の相違を比較検討する。 我々は、これまでに膵癌細胞を用い、gemcitabineがEGFR-MAPKシグナルの活性化を起こすという現象を見出している。胆嚢癌でも同様の現象がみられるとしたら、MEK阻害剤を併用することは理論上も合目的的である。そこでgemcitabine+MEK阻害剤+mTOR阻害剤三者併用療法によって、in vitro及びin vivoにおいて更なる上乗せ効果がみられるかを検討する。in vitroでの細胞増殖能の変化、シグナル伝達系の免疫組織学的・生化学的検討、in vivoにおける腫瘍サイズの経時的観察、4週投与後の腫瘍組織の組織学的・生化学的検討を行っていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、胆嚢癌細胞株のin vivo移植モデルにてgemcitabine投与効果およびgemcitabine+MEK阻害剤+mTOR阻害剤三者併用療法の効果をみるために、動物購入・飼育費に年間約40万円、in vitroのgemcitabine投与効果およびgemcitabine+MEK阻害剤+mTOR阻害剤三者併用療法の効果をみるための細胞培養関連に年間約50万円、投与薬剤代および培養細胞内シグナル変化や皮下腫瘍の免疫組織学的変化をウエスタンブロットや免疫組織化学にて検討する試薬類に年間約70万円と試算している。
|
Research Products
(4 results)