2013 Fiscal Year Research-status Report
膵炎発症における小胞体ストレスの関与と新規治療法の検討
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24591021
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
西尾 彰功 関西医科大学, 医学部, 准教授 (50362463)
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Keywords | 急性膵炎 / 小胞体ストレス / セルレイン / エンドトキシン |
Research Abstract |
膵臓は体内で最も蛋白合成の盛んな臓器のひとつで、膵腺房細胞では消化酵素を含めた多量の蛋白合成が行われる。それ故、膵炎を引き起こすような過剰な刺激は容易に腺房細胞の小胞体機能障害につながり小胞体ストレスを引き起こすと推定される。膵炎発症における小胞体ストレスの関与について、セルレイン/リポポリサッカライド(LPS)を投与して作製したマウス実験的膵炎モデルを用いて検討を行った。膵炎群では対照群と比較して膵臓で小胞体ストレス関連蛋白の発現が増加していた。生体には小胞体ストレス応答経路の一つであるeukaryotic initiation factor-2α(eIF2α)のリン酸化を介して蛋白合成におけるmRNAから蛋白の翻訳を制御する防御機構が存在する。膵炎マウスにeIF2aの脱リン酸化抑制薬を投与して膵炎の重症化について検討したところ、薬剤投与群では無治療群と比較して炎症性サイトカイン上昇が抑制され膵炎の軽減が認められた。膵炎の軽減機序についてさらに解析するためにマウスの単離膵腺房細胞を用いて検討を行った。単離膵腺房細胞を用いた実験においても、動物実験と同様にセルレイン/LPS添加により細胞培養上清中の炎症性サイトカインが増加し、腺房細胞における小胞体関連ストレス蛋白の発現増加が認められた。培養液中にeIF2aの脱リン酸化抑制薬を添加することにより、炎症性サイトカイン増加および小胞体ストレス関連蛋白の発現増加が抑制された。以上の結果より、実験的膵炎モデルを用いた検討と同様に単離膵腺房細胞を用いた実験においても、薬剤投与でUPRを増強させることにより膵炎が軽減することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単離膵腺房細胞を用いた実験に加えて、野生型マウスを用いたセルレイン/LPS誘発膵炎モデルの実験においてeIF2a脱リン酸化抑制薬の投与量の変化による膵炎改善効果の追加検討を行ったため、遺伝子改変マウスを用いた検討は十分に行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.遺伝子改変マウス(C57BL/6由来CD4, CD8, RAG2各欠損マウス)にセルレイン/LPSを投与して、免疫不全状態での膵炎発症と小胞体ストレスの検討を行う。 2.野生型マウスを用いてエタノール/LPS投与によるアルコール性膵炎モデルを作製して、血中炎症性サイトカインの動態と小胞体ストレスについて検討する。 3.野生型マウスを用いたアルコール性膵炎モデルを用いて、小胞体ストレスを軽減させる薬剤を投与して膵炎軽減効果について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定された実験計画よりマウス購入数が少なくなったため。 マウス購入費用に使用する。
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Research Products
(8 results)