2013 Fiscal Year Research-status Report
酸化的DNA塩基損傷修復と熱ショック蛋白修飾による心血管リモデリング抑制の研究
Project/Area Number |
24591031
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
長谷部 直幸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30192272)
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Keywords | 酸化ストレス / 心血管リモデリング / DNA塩基損傷 / APE1 / 内皮前駆細胞 |
Research Abstract |
酸化的DNA塩基損傷修復(base excision repair:BER)機構の活性修飾と熱ショック蛋白(Heat Shock Protein: HSP)の相加的な心血管保護効果を利用して心血管リモデリングを制御する新規手法の確立をめざす本研究は、動脈硬化性心血管病変に対する新たな治療法の確立をめざすものである。本研究の標的多機能タンパクはApurinic/apyrimidinic Endonuclease 1(APE1)である。APE1は、核内において酸化的DNA塩基損傷の修復を担い、レドックス制御の転写活性を促進させ、核外において酸化ストレス軽減効果を発揮する。本年度は血管リモデリングに必須の内皮前駆細胞(EPCs)を用いて、その機能解析とリモデリングに及ぼす影響を明らかにした。マウス骨髄からEPCsを採取調整し、ヒト末梢白血球ゲノムからクローニングしたAPE1を遺伝子発現用アデノウイルスに組み入れ、これを用いてAPE1過剰発現細胞を調整した。また、APE1特異的SiRNAを作製し、lipofectamin法にて核酸導入することによりAPE1発現抑制細胞を調整した。本研究により、EPCsはAPE1を比較的豊富に発現する細胞であることを明らかにすることができた。過酸化水素(H2O2; 100~1000M)の暴露によってもEPCsのviabilityは保たれたが、接着能は濃度依存性に減弱した。すなわち、酸化ストレス環境下でEPCsは機能障害を呈することが示された。APE1過剰発現細胞では、酸化ストレス環境下での接着能低下が阻止され、逆にAPE1発現抑制細胞では接着能低下が促進された。 これらのことは、血管リモデリングの第一段階であるEPCsの局所への接着能の維持はAPE1依存性であることを示唆するものである。さらに、この機序には局所の活性酸素消去機構の活性亢進が重要な役割を担っていることも明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、酸化的DNA塩基損傷修復(base excision repair:BER)機構の活性修飾と熱ショック蛋白(Heat Shock Protein: HSP)の相加的な心血管保護効果を利用して心血管リモデリングを制御する新規手法を確立し、動脈硬化性心血管病変に対する新たな治療法としての発展をめざすものである。現在までのところ、心血管リモデリングの第一段階で機能する内皮前駆細胞を標的に、酸化的DNA塩基損傷修復活性とレドックス制御を持つ多機能タンパクであるAPE1の心血管リモデリングにおける機能と意義を明らかにした。 我々の仮説どおり、APE1は内皮前駆細胞の機能維持に重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。すでに、ヒト末梢白血球ゲノムからクローニングしたAPE1を、遺伝子発現用アデノウイルスに組み入れ、これを用いてAPE1過剰発現細胞を調整しており、これを生体の動脈硬化病変の酸化ストレス環境下に適用することによって、心血管リモデリングの抑制効果を検証する予定であり、ほぼ計画どおりに研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにした酸化ストレス環境下における内皮前駆細胞でのAPE1の意義を踏まえ、次段階のin vitro研究を進め、さらにin vivoでの検証を行う。 すなわち、多機能性抗酸化ストレス蛋白であるAPE1のいかなる機能が、血管リモデリング制御に最も重要であるのかを、APE1のレドックス制御特異的阻害剤であるE3330を用いて検討し、さらに過剰発現細胞、ノックダウン細胞での各機能変化を検証することによって明らかにする。その後、APE1過剰血管内皮前駆細胞をマウスのワイヤー血管障害モデルの障害局所に導入することによって、血管リモデリング抑制効果を検証する。 次年度、研究費は、上記のEPCsをターゲットにしたAPE1の機能解析をin vitroで進めることと、in vivoでのリモデリング抑制効果を検証するために使われる。ほぼ全ては、研究材料と解析の消耗品に当てられる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、当初より3年計画で立案されており、現在2年次終了時点で計画通りに進行しており、来年度の最終年で完成をめざすものである。 次年度の研究費は、当初の計画通り、上記のEPCsをターゲットにしたAPE1の機能解析をin vitroで進めることと、in vivoでのリモデリング抑制効果を検証するために使われる。ほぼ全ては、研究材料と解析の消耗品に当てられる。
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Research Products
(19 results)