2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24591034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関口 幸夫 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90447251)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 不整脈 |
Research Abstract |
巨大な震災後には、短期的および長期的観察期間内に血圧上昇、急性心筋梗塞、脳卒中といった重大な心血管イベントの増加が世界各地から報告されている。 災害に際して心血管イベントが増加する背景には、災害によって生じる恐怖や不眠などによる急性ストレスが第一に挙げられる。ストレスによって交感神経が活性化され、また凝固促進因子が増加することで、動脈硬化性プラークが破綻し心血管イベントが生じる。そのほかの機序としては、災害における身体運動の制限や食事の偏りなどを背景とした慢性ストレスによって惹起される自律神経失調および免疫システムの障害、心血管ホメオスターシスの破綻によって引き起こされる炎症の進展による心血管障害、などが報告されている。 本邦では、1995年に発生した阪神淡路大震災、2004年に発生した新潟県中越地震において急性心筋梗塞をはじめとする心血管イベントの増加が報告されている。今回、我々は東日本大震災の被災を受けた茨城県、福島県、岩手県、山形県において、器質的心疾患を有しICDが植え込まれている患者を対象として、被災前後における不整脈イベントの変化についてICD装置内に残されているデータをもとに短期的および長期的に評価し、震災が及ぼす心疾患患者への影響を不整脈の観点から明らかにすることとした。 まずは、preliminary studyとして、当院に通院しているデバイスが植え込まれている35症例(ICD;24例、CRT-D;11例)(男性23例、女性12例)を対象として、震災発生前後1ヶ月間の不整脈イベントについて比較を行ったところ、持続性心室頻拍(前:後);1例:0例、非持続性心室頻拍;5例:4例、心房細動;4例:2例であり、震災前後で不整脈イベントの有意差を認めなかった。今後、症例数や検討項目を増やして検討を続ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の予定としては、茨城県、福島県、岩手県、山形県の東日本大震災被災各地区からの該当症例をピックアップし、短期的なデータとなる震災発生1ヶ月以内のイベントに関するデータ収集を行うことである。茨城県においては、県南地区を筑波大学、県央地区を茨城県立中央病院、水戸済生会総合病院、県北地区を日立総合病院がそれぞれ担当し、福島県は福島県立医科大学が、岩手県は、岩手県立医科大学が、山形県は山形大学がそれぞれデータ収集を担当することとした。 各施設に調査を依頼し、データの収集を行っているところであるが、データ収集内容が途中で変更となるなどの問題もあって、進行状況としては予定よりはやや遅れているところである。本年度は、震災発生後急性期の収集データをもとに危険因子などの解析も行っていく予定であるが、データ収集と併せて予定通りの日程で調査を遂行するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究における当初の目的は、東日本大震災の被災を受けた茨城県、福島県、岩手県、山形県の植え込み型除細動器(ICD)植え込み患者を対象として、被災前後における不整脈イベントの変化についてICD装置内に残されているデータをもとに短期的および長期的に観察し、震災が及ぼした心疾患患者への影響について不整脈の観点から明らかにすることであるが、昨年、東日本大震災前後における心室性不整脈イベントが震災後に有意に増加していたとする報告があった。我々の研究ではまだ一定の結論を得ていないが、より広範囲の地域で長期間の経過での不整脈イベント変化を観察すること、また他の不整脈イベントやデバイスで記録された情報を詳細に比較検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東日本大震災の被災を受けた茨城県、福島県、岩手県、山形県の各施設と密接に連携をとり情報を共有しながら作業を進めていく。 また、不整脈をはじめとする関連学会に積極的に参加し震災によって生じる心的ストレスと不整脈との関連について検討すること、そして、データを定期的にまとめていき、場合によっては中間報告の段階での報告書を作成し学会で報告することを考慮する。 ある程度の結果が出た段階で、統計を駆使することで、不整脈イベントを誘発する因子の抽出を行い、今後の震災発生時の対応に役立てることができるように努力する。
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