2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性心不全における東洋医学的アプローチの有用性に関する検討
Project/Area Number |
24591042
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊澤 淳 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (50464095)
|
Keywords | 慢性心不全 / 慢性腎臓病 / 心腎連関 / 東洋医学 |
Research Abstract |
【目的】心腎連関を呈する慢性心不全症例を対象とした東洋医学的アプローチとして防已黄耆湯を選択し,その内服治療による安全性と有効性を評価する。 【方法】ステージBまたはCの代償期慢性心不全でステージ3以上の慢性腎不全を合併する26例を対象とした。従来の薬物治療に加えて防已黄耆湯を2.5または5.0 g/日で併用開始し,最大7.5 g/日まで増量した。投与3.5ヵ月後および9.4ヵ月後に腎機能の指標(BUN, 血清クレアチニン, 推算糸球体濾過量(eGFR))および心不全の指標(脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)と重症度分類(NYHA分類))の推移を解析した。 【結果】投与3.5ヵ月後および9.4ヵ月後における防已黄耆湯の平均1日投与量は,それぞれ5.2±1.2 gおよび5.9±1.5 gだった。評価項目について投与前→投与3.5ヵ月後→9.4ヵ月後の平均値はそれぞれeGFR: 40.02±10.54→44.60±10.76→45.93±11.57 (mL/分/1.73m2), BNP: 241.5±196.6→195.5±145.7→163.3±130.2 (pg/mL)であり,いずれの改善も有意であった。観察期間中にはその他の腎機能指標およびNYHA分類にも有意な改善を認め,有害事象は認めなかった。 【結語】心腎連関を呈する慢性心不全において,少数例ではあるが従来の薬物治療に追加した防已黄耆湯の内服は,心不全および腎機能の両面において有効性を示した。引き続き多施設共同研究による検証が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って実施された先行研究をまとめ,英文論文を発表した(The Traditional Japanese Medicine (Kampo) Boiogito has a Dual Benefit in Cardiorenal Syndrome: A Pilot Observational Study. Shinshu Medical Journal, 62(2): 89-97, 2014)。 本研究では,心腎連関を呈する慢性心不全症例を対象として防已黄耆湯を追加投与した結果,約92%の症例でeGFRが増大,また約72%の症例でBNP値が低下し,腎機能および心不全の両面への有益性が示された。心不全症例で使用頻度の高いループ利尿薬は,腎機能障害を進行させる可能性があるため,漢方薬の利水作用が心腎の両面に有益であることは意義が大きい。この先行研究は単施設における少数例の観察研究であったため,症例を重ねて有効性と安全性を検証する必要がある。 現在当科では,心不全症例を登録(レジストリ)する多施設共同研究を計画している。そのレジストリから本研究課題にあらたに約50例の追加を目指し,投与前と投与後の詳細な臨床評価を行い,防已黄耆湯の作用メカニズムの解明を目指している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の先行研究では症例数が少なかったことが課題であったが,信州大学医学部循環器内科では,入院を要した心不全症例の登録(レジストリ)研究を長野県内の基幹病院を中心とした多施設共同研究として計画し,信州大学医学部医倫理委員会に提出している。この心不全レジストリ研究に登録される症例から本研究課題の対象となる症例をさらに集め,以下の多施設共同研究に発展させることを今後の推進方策とする。 1.対象:外来で標準的薬物治療中の代償期心不全患者(NYHA分類I度からIII度,BNP≧100 pg/mLかつ観察期間中のBNPの変化が100 pg/mL以内に安定)のうち,eGFR 60 mL/分/1.73㎡未満の慢性腎臓病を合併し,心腎連関を呈する約50例。 2.試験デザイン:防已黄耆湯の非投与期間(12週間)と投与期間(12週間)に分け,2群間でクロスオーバー試験を行うことにより非投与例および投与例の2群間の比較を行う。防已黄耆湯の投与量は1日5.0-7.5 g(2~3回に分割)とし,食前または食間に内服する。投与前に4-8週の観察期間を設定し,0週(投与前),12週,24週の3点で以下の項目を評価する。 3.検査項目:心不全レジストリ研究で計画している評価項目に準じ以下を予定する:自覚症状,重症度分類;心電図,心臓超音波検査;血液生化学:腎機能評価,NT-proBNP,高感度CRP,高感度トロポニンT,炎症性サイトカイン,リンパ球分画;尿中アルブミンと酸化ストレス;心臓自律神経機能評価:Holter心電図による心拍変動解析,心筋MIBGシンチグラフィー。 4.エンドポイントと中止基準:(1) エンドポイント:全死亡,心臓死,心不全入院,有害事象。(2) 中止基準:患者の自由意志による辞退,有害事象,主治医判断による中止。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画よりも安価で研究が遂行できたため、次年度使用額が生じた。 残額と26年度経費は臨床検査データの標準化と集約のために使用する。検査項目のうちの特殊検査は測定を委託するため,その費用とする。また,測定予定の酸化ストレスと抗酸化力のキット試薬(BAPテストおよびd-ROMsテスト)や測定に用いる備品(ピペットなど)の購入を予定している。さらに研究成果の発表のため学会出張を予定している。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
[Journal Article] Serum High-density Lipoprotein Cholesterol Level and Lifestyle Habits among Japanese Junior High School Students.2013
Author(s)
Hongo M, Hidaka H, Sakaguchi S, Nakanishi K, Terasawa F, Ichikawa M, Hirota N, Tsuruta G, Tanaka N, Izawa A, Yazaki Y, Ikeda U, Koike K, on behalf of the Investigators of the Study Project on Prevention of Metabolic Syndrome among Children, Adolescents, and Young Adults in Shinshu.
-
Journal Title
Shinshu Med J
Volume: 61(4)
Pages: 205-215
Peer Reviewed
-
-
-
-
[Presentation] Regulatory T cell is associated with lipid plaque in coronary artery using intravascular ultrasound.2013
Author(s)
Saigusa T, Kashima Y, Izawa A, Hioki H, Karube K, Yaguchi T, Abe N, Miura T, Ebisawa S, Tomita T, Miyashita Y, Koyama J, Ikeda U.
Organizer
米国心臓学会議
Place of Presentation
サンフランシスコ
Year and Date
20130309-20130311