Outline of Annual Research Achievements |
QRS波形加算微分解析システムソフトウェアを開発,分裂性QRS(fQRS)の意義を様々な心疾患で検討した。fQRS波形は心室筋興奮伝播が障害心筋・線維化により様々な方向に変化し,不整脈発生の基質や心機能障害の推測に有用であると考えられ,解析ソフトによりfQRS検出感度を高め,各種心筋疾患の予後推定に応用が可能である。 Brugada症候群321例で,fQRS解析が経過中の心室細動発生の予測因子として有用であることが判明。単変量解析ではfQRS以外にも,自然type 1波形,下側壁早期再分極,ST自然変動,心房細動,QRS延長,QT延長(V1),ST増高(V1)が単変量解析で心室細動発生の予測因子であった。多変量解析ではこれらの指標のうち,fQRS,早期再分極,ST自然変動が独立した予後予測因子となることが判明,それぞれハザード比が2.7、3.0、10.7で,fQRSは高い予後予測率を示した。さらにfQRSと再分極異常の指標の組合わせで,いずれの異常も,心室細動発生の強い予測因子となった(ハザード比4.7倍)。また心室細動の新規発症例では発症時にはPQ間隔,STレベルの変化は発症前と比べ有意差は認めなかったが,発症時には有意なfQRS波形の増悪,QRS幅の延長がみられ,心室細動発生には潜在的な心筋障害の進行が重要であることを報告した。 心筋症におけるfQRSの意義として,拡張型心筋症78例では,fQRSの存在は心不全の有意な予測因子となった。特にQRS分裂が著明な場合,心不全再発率が非常に高率であった (オッズ比5.73)。サルコイドーシスは主に呼吸器病変で発見されること多く心筋病変がその予後を規定し,心室内に肉芽腫性病変および線維化病変を形成し,心機能低下,心不全,房室ブロック,心室頻拍などを生じる。サルコイドーシス127例でfQRSの意義を検討したところ,心室頻拍例ではfQRS陽性率が高率で,心室頻拍発生の予測因子であった(オッズ比 4.94)。
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