2012 Fiscal Year Research-status Report
グレリンの多面的効果による難治性非虚血性心疾患治療法の開発
Project/Area Number |
24591056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
添木 武 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (60393211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐田 政隆 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (80345214)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 循環器 / ペプチド / 心筋炎 |
Research Abstract |
生理活性ペプチドであるグレリンには、従来から示されているGH分泌促進作用や摂食調節などのホルモンとしての作用以外に、最近の研究により心血管への直接作用、サイトカインなどへの抗炎症作用、自律神経の調節作用など多面的な作用があることが示されている。一方で、急性心筋炎、拡張型心筋症は死亡率が高く予後不良であるにもかかわらず、未だ確立された根本的治療法がない疾患である。本研究ではグレリンの投与がT細胞の反応を調節し自己免疫性心筋炎の進展を抑制するという仮説を立て検証した。 雄Lewisラットにブタ心臓ミオシンを皮下投与し自己免疫性心筋炎モデルを作製した。第4週目より、グレリン(100mg/kg皮下、1日2回)または溶媒のみ(対照群)の投与を3週間行った。6週間後に、心エコー、左心カテーテルによる血行動態検査を行い、心臓摘出後に組織学的評価を行い遺伝子発現を調べた。心エコー検査では、グレリン投与群において左室径の拡大並びに左室内径短縮率の減少が有意に抑制されていた。また、グレリン投与により左室拡張末期圧の上昇が有意に抑制され、dP/dtは増加した。さらに、グレリン投与の心筋では1型ヘルパーT細胞より分泌されるTh1サイトカインであるinterferon-γやinterleukin (IL)-2のmRNAの発現が減少し、2型ヘルパーT細胞からのTh2サイトカインであるIL-4とIL-10のmRNAの発現が増加していた。TNF-αおよびCollagenIIIのmRNA発現も抑制された。 これらの結果より、グレリン投与は自己免疫性心筋炎の進展を抑制したといえる。この機序として、ヘルパーT細胞のTh1/Th2バランス修飾の可能性が示された。なお、さらなる機序解明のため、本テーマについて平成25年度も引き続き研究を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己心筋炎モデル作成については過去の経験があり、ほぼ障害なく可能であった。しかしながら、グレリンの投与時期・期間と生理学的・生化学的評価時期については、それらの時期および期間をずらすことにより予備実験にて検証する必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット自己免疫性心筋炎モデルを用いたグレリン投与の効果とメカニズム解明を引き続き行う。現在進行中の検討に加えて、心臓並びに浸潤細胞(特にリンパ球、マクロファージ)でのグレリン並びにその受容体(GHS-R)の発現を免疫細胞染色等により調べる。そして、同モデルでのグレリン投与の効果について組織学的に検証する。すなわち、Hematoxylin-eosin染色により炎症の程度をスコア化し、Sirius Red染色により形態学的コラーゲン密度を定量する。 続いて、拡張型心筋症におけるグレリンの抗心臓リモデリング効果について検討する。拡張型心筋症モデルのハムスター(Bio TO2)を用いる。グレリンおよびGHS-Rの発現を調べた後、グレリンの投与を行う(200μg/kg/日 2~4週間)。心臓リモデリングへの効果は、①心臓組織(Sirius Red染色、TUNEL染色等)、②心臓形態と機能(Aplio 80, Toshiba Medical system、15MHzプローブを用いた心エコーを使用)、③血行動態(AD Instruments社製PowerLab systemを用いたカテーテル検査)、④心臓での遺伝子発現(Applied Biosystems 7500)等にて行う予定である。さらに、グレリン投与後の心臓交感神経系あるいは副交感神経系の活性を調べる。具体的には、①生体電位および血圧を記録できる送信機をモデル動物の体内に埋め込み、ハイエンドデータ取得・実時間解析システムHEM(Notocord社)により無麻酔無拘束下に心拍変動スペクトル解析等の心臓自律神経活性を評価する。また、②血中・尿中カテコールアミン濃度(およびその代謝産物)なども調べ、多面的に自律神経系の評価を行い、前述の心臓リモデリングの評価との比較検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラット自己免疫性心筋炎モデルにおいては、ラットの購入・飼育費、自己免疫をおこすための精製ブタミオシン・adjubant等の費用、グレリンおよびその受容体(GHS-R)の発現をみるための生化学的試薬、超音波検査・心内圧測定時の備品、グレリン投与後の心筋での遺伝子発現をみるための定量PCR用試薬・組織学的試薬、等に研究費を使用する予定である。 また、拡張型心筋症におけるグレリンの効果をみるためにモデル動物であるハムスター購入のも研究費を使用する予定である。さらに、同モデルにおいても、グレリンおよびその受容体(GHS-R)の発現をみるための生化学的試薬、超音波検査・心内圧測定時の備品、グレリン投与後の心筋での遺伝子発現をみるための定量PCR用試薬・組織学的試薬、等に研究費を使用する予定である。そして、生体電位および血圧を記録できる送信機(DATA SCIENCES INTERNATIONAL社製TA11PA-C40)やハイエンドデータ取得・実時間解析システムHEM(Notocord社)関連製品にも研究費を使用予定である。また、血中・尿中カテコールアミン濃度測定用試薬も購入予定である。
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