2012 Fiscal Year Research-status Report
肥満における動脈周囲脂肪組織の挙動と粥状硬化巣の病勢との関連に関する研究
Project/Area Number |
24591057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
大森 浩二 香川大学, 医学部, 准教授 (00263913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
アリフ ウル ハサン 香川大学, 医学部, 外国人研究者 (00570368)
河野 雅和 香川大学, 医学部, 教授 (20153489)
野間 貴久 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (20363202)
山下 洋一 香川大学, 医学部, 講師 (80363208)
井町 仁美 香川大学, 医学部, 准教授 (80380187)
石原 靖大 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (80532689)
堀井 泰浩 香川大学, 医学部, 教授 (90423425)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血管新生 / 脂肪細胞 / レニンアンジオテンシン系 / 腫瘍抑制因子 / 血管内皮成長因子 / 肥満 / 多価不飽和脂肪酸 |
Research Abstract |
肥満における血管周囲脂肪組織のリモデリングに際する血管新生が粥状硬化の病勢に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、24年度は、まず、当初計画のステージ1の培養脂肪細胞(3T3-L1)を用いた実験を行った。 ①肥満時の脂肪細胞の機能低下と腫瘍抑制因子Arfの役割に関する実験:肥大した脂肪細胞ではArfの転写が促進し、NADPH oxidaseの要素であるgp91と炎症のマーカーであるIL-6のmRNA発現が増加し、アディポネクチン、Slcsa4の発現が低下した。しかし、かかる細胞でArfを過剰発現させると、むしろこれらが抑制され、Arf増加は肥大・老化による酸化ストレスの影響を減弱する代償機構である可能性が示唆された。 ②脂肪細胞の分化に及ぼす脂肪酸の影響に関する実験:分化開始と同時に、培養液に不飽和脂肪酸:DHA、EPA、アラキドン酸(AA)、あるいは、飽和脂肪酸:パルミチン酸(PA)を添加すると、7日目の血管内皮成長因子(VEGF-a) mRNAは不飽和脂肪酸群でいずれも対照より低下したが、飽和脂肪酸では不変であった。IL-6 mRNAはn-3系のDHA、EPAでは低下、n-6系のAAではむしろ増加した。また、アディポネクチンの発現はDHA、EPAでは維持されたが、AAでは著しく低下した。脂肪細胞の分化の過程で、各種脂肪酸は異なる効果を示し、少なくともVEGFの発現にも影響することが示された。 ③脂肪細胞の炎症・血管新生促進におけるRAASの役割と、ARBの効果に関する実験:成熟脂肪細胞の培養液中にアンジオテンシンIIを添加するとVEFG-a、IL-6の発現が増加した。いずれもバルサルタンの同時投与により、抑制された。 ①~③で得られた肥大脂肪細胞における炎症・血管新生促進傾向と、その治療的介入に関するデータは、次年度以降のin vivo実験の基礎資料として重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、初年度に動物実験に着手すべきであるが、研究代表者が他の業務を余儀なくされて、エフォートを当初計画通り、本課題に傾注できなかったことに加えて、3T3-L1細胞を用いた実験で、見いだされたVEGF以外のファクターの変動にも新規性があり、また、治療介入として、最近注目されている多価不飽和脂肪酸の影響などの実験を追加したため、時間を要している。 また、当初計画では、十分なサイズの冠動脈周囲脂肪組織の確保できる肥満ラットモデル(OLETFラット)を用いる計画であった。しかし、この動物の提供が停止されてしまい、代替のモデルを模索している。施設内の動物実験計画書は変更して提出した。一方、臨床研究については、ある程度の動物実験のデータがないと、倫理審査を受けるに値しないため、現段階では進行していない。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪細胞を用いたin vitro実験を引き続き推進する。まだ評価できていない、MMPsやHif1などのファクターについて、検索するとともに、これまで変動が認められたVEGF、IL-6、MCP-1、アディポネクチンなどのタンパクレベルの評価も追加する。また、動物実験に着手し、臨床研究の準備を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度内には現有の蛍光顕微鏡用の細胞カウント機能などの具備された解析ソフト(細胞計測モジュール)を購入予定であった。しかし、消耗品の購入のため、わずかに、経費が不足してしてしまった。平成25年度の経費の配分を待って、この一部と合わせて、交付早々に購入したい。これは、今後、どのステージのサンプルにも利用できるものである。また、プライマーなどの試薬は予定通り、購入する必要があり、部分的な結果の報告、関連情報の収集などのための旅費は必要である。
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