2013 Fiscal Year Research-status Report
急性冠症候群発症に関わるPSGL-1陽性CD4T細胞の責任冠動脈における役割
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24591073
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 加代子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20246482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敦 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00625626)
沢辺 元司 東京医科歯科大学, その他の研究科, 教授 (30196331)
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Keywords | PSGL-1 / 動脈硬化 / 急性冠症候群 / 炎症 / 免疫 / 接着分子 / T細胞 / 白血球 |
Research Abstract |
前年度研究により、急性冠症候群(ACS)の責任冠動脈血および粥腫では、接着分子P-selectin glycoprotein ligand-1(PSGL-1)を強く発現するCD4 T細胞を多く認め、P-selectin、E-selectinを介し血管内皮細胞にアポトーシスが誘導されることが明らかとなった。本年度は、動脈硬化進展および粥腫不安定化におけるPSGL-1の役割を詳細に検討するため、動脈硬化モデルマウスであるApoEノックアウトマウス(ApoEマウス)および我々が確立したPSGL-1/ApoEダブルノックアウトマウス(DKOマウス)を用いて検討した。その結果、高脂肪食負荷ApoEマウスでは、1. 著しい動脈硬化進展を認め、末梢単核球を単離し解析したところ、CD69陽性の活性化したINFγ陽性Th1細胞、IL17陽性Th17細胞が増加していた。さらに、大動脈弁輪部粥腫の免疫染色では、多数のPSGL-1陽性CD4 T細胞とPSGL-1陽性マロファージ、少数のPSGL-1陽性好中球の浸潤が認められた。2.次に、動脈硬化粥腫進展に伴い粥腫内にPSGL-1のリガンドであるE-selectin、P-selectin発現が増加しているか免疫染色で検討した。その結果、粥腫内には著しいE-selectin陽性の血管内皮細胞および血管平滑筋細胞、P-selectin陽性の血管平滑筋細胞が増加していた。3.また、動脈硬化進展に伴い粥腫内にTUNEL陽性アポトーシス細胞が多く認められた。一方、DKOマウスでは、4.高脂肪食負荷による動脈硬化進展、粥腫へのPSGL-1陽性炎症細胞浸潤、TUNEL陽性アポトーシスがいずれも抑制され、粥腫は安定化していた。すなわち、PSGL-1/E-selectin・P-selectinシグナルは炎症細胞浸潤による動脈硬化進展と粥腫不安定化に重要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.動脈硬化進展におけるCD4 T細胞サブセットと接着分子発現の検討:ApoEノックアウトマウス(ApoEマウス)に高脂肪食を与え大動脈を検討した結果、著明な動脈硬化進展とT細胞の活性化、炎症性サイトカインIFNγ産生Th1細胞とIL17産生Th17細胞の増加と粥腫への浸潤を認めた。また、多数のPSGL-1陽性CD4 T細胞、PSGL-1陽性F4/80陽性マクロファージ、Integrinβ2陽性CD4 T細胞の粥腫浸潤が認められた。また、動脈硬化進展に伴いPSGL-1のリガンドであるE-selectinが粥腫内の血管新生に伴い血管内皮細胞および血管平滑筋細胞に強く発現し、TUNEL陽性アポトーシス細胞も多く認められた。また、血管平滑筋におけるP-selectin発現の増強が認められた。これらの結果は、昨年度のヒトACS患者の研究結果を裏付けるものであった。 2. PSGL-1/ApoEダブルノックアウトマウス(DKOマウス)における動脈硬化進展の検討: PSGL-1をノックアウトすることにより、高脂肪食負荷ApoEマウスで認められたT細胞活性化、Th1細胞、Th17細胞、マクロファージ、好中球浸潤による動脈硬化進展が抑制された。また、Integrinβ2はPSGL-1/selectin signalにより増強される事が知られているが、DKOマウスではIntegrinβ2陽性CD4 T細胞浸潤も抑制された。すなわち、PSGL-1/selectinシグナルは動脈硬化進展や粥腫不安定化に関与すると考えられた。DKOマウスにおける粥腫安定化の評価をさらに詳細に解析する。 3.ApoE 10週コントロール、高脂肪食負荷ApoEマウス18週、DKOマウス18週より単離したCD4 T細胞のtranscriptome analysisを行い、PSGL-1ターゲット遺伝子候補の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策: 本年度研究結果で接着分子PSGL-1およびPSGL-1陽性CD4 T細胞が動脈硬化粥腫進展や粥腫不安定化に重要であることを確認した。H26年度はH25年度研究結果を総括し不十分な点を検討すると伴に、ApoEノックアウトマウス、PSGL-1/ApoEダブルノックアウトウスでの動脈硬化進展におけるPSGL-1陽性CD4 T細胞の役割をさらに検討する。 ApoEノックアウトマウス、PSGL-1/ApoEダブルノックアウトウスの動脈硬化粥腫における血管新生、αSMC陽性細胞、膠原繊維、E/P-selectin陽性細胞、アポトーシス陽性細胞など免疫染色し粥腫安定性を比較検討する。また、各群の凍結保存している血清中サイトカインをLuminexにて網羅的に測定し、本年度行った、CD4 T細胞よりpoly(A)RNAを作成し次世代型シーケンサーでのtranscriptome analysisの網羅的解析と照らし合わせ、PSGL-1/selectin以下のシグナルとCD4 T細胞サブセットの分化誘導、アポトーシスシグナルの関係を明らかにしていく。本年度までの結果を総括し既存の動脈硬化診断治療を再検討するとともに、動脈硬化進展と粥腫不安定化の新たな診断方法や創薬の可能性を考案する。 次年度の研究費の使用計画: 研究費は研究遂行に必要な消耗品、人件費、旅費などに本年同様適切に使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に使用する試薬を注文していたが、納期が遅れ次年度に納入予定となったため。 次年度に物品費として使用する。
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Research Products
(11 results)