2012 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化性血管障害へのS100A12タンパク質の関与とその機序の解明
Project/Area Number |
24591078
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
小崎 篤志 摂南大学, 看護学部, 教授 (40330188)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 泰清 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40268371)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | S100A12 / 心血管イベント / 末期腎不全 / 動脈硬化 / 慢性炎症 |
Research Abstract |
これまで我々は、横断的研究により末期腎不全症例において血中S100A12タンパク質濃度が過去の血管障害イベントに関連している可能性を明らかとした。今回、これまでにデータベース化された末期腎不全患者550症例において、血中S100A12タンパク質濃度の心血管イベント発生や予後への関与を明らかにするために、症例登録後の総死亡と新規血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)の発生および死亡をエンドポイントとして、前向き観察研究を2年間行った。 観察した2年間に50症例(9%)が死亡した。死因は心血管イベント19例、感染症10例、悪性疾患8例、消化管出血などその他の疾患13例であった。死亡群の血中S100A12タンパク質濃度は非死亡群より有意に高値を示した(25.1 vs 17.9ng/ml, p<0.001)。血中S100A12タンパク質濃度の中央値(18.79ng/dl)にて2分割してKaplan-Meier法にて生存率を解析すると、S100A12濃度高値群において有意に生存率が低かった(p=0.001)。総死亡への寄与因子をCox比例ハザードモデルにて解析すると、血中S100A12濃度高値(≧18.79ng/dl, HR=2.267)・年齢(≧65歳, HR=1.961)・血中アルブミン濃度低値(<3.5g/dl, HR=2.198)・心血管疾患の既往(有, HR=2.068)が有意な因子であった。またこれら4因子の累積点数化を行い、新たにデータベース化した303症例において、累積点数別の総死亡率を検討した。この新規登録群においても累積点数の増加に伴って死亡率は有意に増加した。以上より、血中S100A12タンパク質濃度を含めた4因子は、末期腎不全患者の予後の推定に有用である事を発見し報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・研究目的1:RAGEのリガンドであるS100A12タンパク質の糖尿病や慢性腎臓病等による血管障害への関与を明らかにする。 目的1に関しては、これまでに900例規模の臨床データベースの作成が終了し、症例登録後の2年間の前向きコホート研究を行い、新規総死亡と血中S100A12タンパク質濃度との関連を明らかに出来た。しかし、他のエンドポイントである、血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)の新規発生および死亡との関連はKaplan-Meier法やCox比例ハザードモデル解析で現時点で有意とはならなかった。 ・研究目的2:動脈硬化性血管障害の機序の一つと考えらえている慢性炎症へのS100A12タンパク質の関与を検討するために、ヒトの白血球におけるS100A12のフローサイトメトリー解析を確立する。 目的2に関しては、フローサイトメトリー解析にてヒト白血球のS100A12タンパク質発現の定量化を試みているが、バックグラウンドが高値であり未だ確立に至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
・研究目的1:RAGEのリガンドであるS100A12タンパク質の糖尿病や慢性腎臓病等による血管障害への関与を明らかにする。 2年間の前向きコホート研究では、エンドポイントである血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)の新規発生および死亡との関連はKaplan-Meier法やCox比例ハザードモデル解析で現時点では有意となっていないが、有意傾向には至っているものがある。有意に至っていない原因は、主に事象発生数が未だ10%未満と少ないためと考えられる。したがって、引き続き観察年数を増やして統計解析を続けていく予定である。 ・研究目的2:動脈硬化性血管障害の機序の一つと考えらえている慢性炎症へのS100A12タンパク質の関与を検討するために、ヒトの白血球におけるS100A12のフローサイトメトリー解析を確立する。 フローサイトメトリー解析にてヒト白血球のS100A12タンパク質発現の定量化を試みているが、バックグラウンドが高値であり未だ確立には至っていない。引き続き研究を継続してゆくが、使用している抗体の特性に由来する可能性が高く確立は困難かもしれない。その時は、他の検証方法としてS100A12タンパク質の過剰発現トランスジェニックマウスを作製し、動物実験によりS100A12タンパク質の慢性炎症作用へ関与を検証してゆく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Prognostic utility of plasma S100A12 levels to establish a novel scoring system for predicting mortality in maintenance hemodialysis patients: a two-year prospective observational study in Japan.2013
Author(s)
Shiotsu Y, Mori Y, Nishimura M, Hatta T, Imada N, Maki N, Iida K, Iwamoto N, Matsuoka E, Tamagaki K, Kosaki A.
-
Journal Title
BMC Nephrol.
Volume: 16
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed
-