2013 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化性血管障害へのS100A12タンパク質の関与とその機序の解明
Project/Area Number |
24591078
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
小崎 篤志 摂南大学, 看護学部, 教授 (40330188)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 泰清 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40268371)
|
Keywords | S100A12 / 心血管イベント / 末期腎不全 / 動脈硬化 / 血管平滑筋細胞 / 石灰化 |
Research Abstract |
我々はこれまで、横断的研究により末期腎不全患者550症例において血中S100A12タンパク質濃度が過去の血管障害イベントに関連している可能性を明らかとした。次に、同症例において、総死亡と新規血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)の発生および死亡をエンドポイントとして、血中S100A12タンパク質濃度がその寄与因子となるかを前向き観察研究で2年間行い、①新規総死亡群の血中S100A12タンパク質濃度は非死亡群より有意に高値であること、②血中S100A12タンパク質濃度の中央値にて2分割して生存率を解析すると、S100A12濃度高値群において有意に生存率が低い事、③総死亡への寄与因子をCox比例ハザードモデルにて解析すると、血中S100A12濃度が高値である事が有意な寄与因子の一つであること(HR=2.267)、を発見し報告した。 これらの疫学的結果より今年度は、S100A12タンパク質が血管障害を引き起こす病態生理学的機序を明らかにするのを目的に、合成S100A12タンパク質のマウス血管平滑筋細胞への直接作用をin vitroで観察したところ、S100A12タンパク質は、①ERK1/2リン酸化を促進した、②Ki67陽性率を上昇させた、③骨形成マーカーのRunt-related gene 2(Runx2)・組織非特異的alkaline phosphatase(Akp2)・Osteocalcin(OCN)の遺伝子発現を促進した、④細胞内カルシウム含量を増加させた、という結果を得た。以上より、S100A12タンパク質は、血管平滑筋細胞の増殖、骨芽細胞化およびカルシウム沈着を促進することにより、動脈の石灰化への関与する可能性が示唆され報告した。 また、in vivoでの動物実験を可能とするために、S100A12タンパク質過剰発現マウスの作成に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・研究目的1:RAGEのリガンドであるS100A12タンパク質の糖尿病や慢性腎臓病等による血管障害への関与を明らかにする。 目的1に関しては、これまでに900例規模の臨床データベースの作成が終了し、症例登録後の2年間の前向きコホート研究を行い、新規総死亡と血中S100A12タンパク質濃度との関連を明らかに出来た。しかし、他のエンドポイントである、血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)の新規発生および死亡との関連はKaplan-Meier法やCox比例ハザードモデル解析で現時点で有意とはならなかったが、有意傾向には至っている事象がある。 ・研究目的2:動脈硬化性血管障害の機序の一つと考えらえている慢性炎症へのS100A12タンパク質の関与を検討するために、ヒトの白血球におけるS100A12のフローサイトメトリー解析を確立する。 目的2に関しては、フローサイトメトリー解析にてヒト白血球のS100A12タンパク質発現の定量化を試たが、バックグラウンドが高値であり確立を一旦中断した。 目的2の代替え研究として、マウス血管平滑筋細胞へのS100A12タンパク質のin vitro での作用を観察し新知見を得て報告した。
|
Strategy for Future Research Activity |
・研究目的1:RAGEのリガンドであるS100A12タンパク質の糖尿病や慢性腎臓病等による血管障害への関与を明らかにする。 2年間の前向きコホート研究では、エンドポイントである血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)の新規発生および死亡との関連はKaplan-Meier法やCox比例ハザードモデル解析で現時点では有意となっていないが、有意傾向には至っているものがある。有意に至っていない原因は、主に事象発生数が未だ10%未満と少ないためと考えられる。本年度に3~4年目のイベントの調査を行いて統計解析してゆく予定である。 ・研究目的2:動脈硬化性血管障害の機序の一つと考えらえている慢性炎症へのS100A12タンパク質の関与を検討するために、ヒトの白血球におけるS100A12のフローサイトメトリー解析を確立する。 フローサイトメトリー解析にてヒト白血球のS100A12タンパク質発現の定量化を試みたが、バックグラウンドの高値を改善できず一旦実験を中止している。 現在、他の検証方法としてS100A12タンパク質の過剰発現トランスジェニックマウスを作製中であり、動物実験によりS100A12タンパク質の慢性炎症や石灰化作用への関与を検証してゆく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
翌年度分と合わせた助成金にて大型機器の購入を計画したため。 2014年度に100万円程度の遠心分離機を購入予定である。
|
Research Products
(1 results)