2012 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮増殖因子Cの動脈硬化における役割と心血管イベントとの関連
Project/Area Number |
24591082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
和田 啓道 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 展開医療研究部, 研究室長(先端医療技術開発) (20416209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 哲子 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 糖尿病研究部, 研究室長(臨床代謝栄養) (80373512)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 動脈硬化 |
Research Abstract |
血管新生因子VEGF-Aは肥満に密接に関連するが、その血中レベルが動脈硬化に及ぼす影響はわずかであった。我々はリンパ管新生因子VEGF-CがVEGF-Aよりも脂質異常、動脈硬化と密接に関連することを見出した。しかしながら、VEGF-Cレベルは冠動脈疾患重症度に従ってむしろ有意に低下していた。VEGF-Cは、高食塩食負荷に対してマクロファージから代償的に分泌されるが、脂質異常でも同様に、脂質や炎症細胞をドレナージするために、代償的に分泌されるのかもしれない。重症冠動脈疾患では、その代償機構が破綻している可能性がある。 初年度は、動脈硬化におけるVEGF-Cの役割を検討するために、ApoE欠損マウスに高脂肪食を負荷して、合成VEGF-C, VEGF-A, VEGFR-2, VEGFR-3蛋白,または生食を投与して、血清と大動脈のサンプルを確保した。また、ヒトマクロファージの機能の動脈硬化の関連を検討するために、ヒトの末梢血単球からRNAを抽出した。今後PCR法によりVEGF-Cの発現レベルを測定する。 最後に、VEGF-Cレベルと心血管イベント発症の関連を明らかにするため、安定した外来患者511名から同意を得て登録し、前向きコホート試験を実施した。フォローアップは3年間、一次アウトカムは主要心血管イベントとした。フォローアップの中央値は873日 (IQR: 384-1,080)であった。主要心血管イベントは61名(12%)に発症した。患者をROC解析により得られたVEGF-Cの最適なカットオフ値で2群に分けて比較検討した。カプランマイヤー解析の結果、主要心血管イベント発症率は低VEGF-Cグループの方が有意に高かった。危険因子を含む多重Cox比例ハザード解析の結果、低VEGF-Cは主要心血管イベントと独立した関連を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験、ヒト末梢血単球の確保次年度のデータ収集につながるものであった。動物実験は高脂肪食を約2か月投与する必要があり、時間がかかるが、計画的に血清と大動脈を確保できており、予定通りと言える。ヒト末梢血単球については、試行錯誤の末、何とかRNAを回収できるところまできた。次年度には測定、解析出来る。また、特に、コホート研究については目標の700例に達する前の中間解析ながら、良いデータが得られており、この点のみについて言えば、予想以上の成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験についてはApoE欠損マウスに高脂肪食(あるいは正常食)を16週間負荷した後に摘出した大動脈起始部の動脈硬化巣におけるVEGF-Cとマクロファージの局在が一致するかどうかを凍結切片の二重染色により確認する。また、可能であればマクロファージ染色した切片からレーザーマイクロダイセクション法を用いてマクロファージ陽性細胞を切り出し、Q-PCR法でVEGF-Cの発現を定量化する。さらに、プラークにおける血管新生をCD31染色で、リンパ管新生をLyve-1染色で評価し、両者のバランスと動脈硬化重症度の関連について検討する。その他、Oil red O染色による動脈硬化の定量も行う。血清のVEGF-CレベルもELISA法で測定して、リンパ管新生、血管新生との関連を検討する。 ヒト末梢血単球実験については、肥満外来患者、冠動脈造影患者、対照患者の末梢血単球から抽出したRNAを用いて、M1/M2マーカー、VEGF-Cの発現レベルをQ-PCR法で定量化する。また、M1/M2マーカー、VEGF-Cの発現レベルと肥満における脂質異常との関連、冠動脈疾患における重症度(病変数)との関連を検討する。 コホート研究については、さらに多くの患者についてフォローアップデータを収集するとともに、ベースラインの血清VEGF-Cレベルを測定する。さらに、Framingham risk score、NT-proBNPレベル、高感度CRPレベルといった、良く知られた心血管イベント予知因子についても計算、測定する。既存の危険因子とこれらのバイオマーカーによって計算される心血管イベントの予測能が、VEGF-Cレベルを付加することによって、向上するかどうかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫染色試薬 100,970円, 抗CD31抗体 80,000円, 抗Lyve-1抗体 80,000円, PCR primer 50,000円, PCR試薬 300,000円, ヒトVEGF-C ELISA kit 780,000円, マウスVEGF-C ELISA kit 150,000円 合計 1,540,970円
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