2013 Fiscal Year Research-status Report
心不全に対する金ナノロッドを用いた心臓限局温熱療法の開発
Project/Area Number |
24591098
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋口 義洋 九州大学, 大学病院, 助教 (40404032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 雅孔 九州大学, 大学病院, 助教 (00325474)
前田 豊樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (30264112)
牧野 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60157170)
新留 琢郎 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (20264210)
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Keywords | 循環器 / 心不全 / 温熱療法 / ナノテクノロジー / トランスジェニックマウス / サイトカイン |
Research Abstract |
[具体的研究内容] 昨年度行った正常マウスの心嚢膜内に金ナノロッドを注入する方法を、心不全を発症している疾患モデルマウスに応用した。具体的には心不全発症した12週齢マウスに全身麻酔し気管内挿管した後、開胸し直接心嚢膜内に極細注射針で金ナノロッドを50μL注入。注射後の心嚢膜の穴は手術用接着剤で閉鎖した。心臓部位のレーザー照射は近赤外レーザーを200から360mWまで段階的に変化させ、高感度サーモメーターにより表面温度を測定。さらに直腸内温度センサーで深部体温を測定した。その結果、260mW照射により照射部位の表面温度は約42℃に上昇することがわかった。直腸温度には変化は認められなかった。ただし、心不全マウスのため手術中に死亡する率が高く、レーザー照射までできたマウスは非常に少なかった。開胸せずに心嚢膜内に金ナノロッドを注入する方法の必要と考えられる。 [意義・重要性] 本研究で使用する心不全マウスは、人の心不全と同様の経過をたどり、半年程度で約半数のマウスが心不全死する。この心不全マウスで金ナノロッドを用いた心臓局所温熱治療による心不全改善効果が認められれば、人への応用に一歩近づくことになる。これまでの全身温熱治療に対し心臓局所温熱治療の優位性を示すことができれば、より良い心不全治療の開発につながるものと期待される。 [今後の研究計画]心嚢膜内投与がうまくいかない場合の対応として提案していた静脈内投与による心不全心筋内への金ナノロッド取り込み実験を行う。心筋内への取り込みが確認できれば、近赤外線レーザー照射により心臓自体の温熱が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
マウスの心嚢膜は、当初の予想より破れやすく、金ナノロッドの心嚢膜内注入法は極細シリコンチューブ留置法から直接心嚢膜に注射する方法に変更した。しかし、正常マウスに比べ、心不全マウスは予想以上に術中、術後の死亡率が高いため、心不全マウスの実験が滞っている。したがって、より侵襲の少ない方法の開発が急務である。
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Strategy for Future Research Activity |
心嚢膜内投与がうまくいかない場合の対応として提案していた静脈内投与を行う。連携研究者らは、ポリエチレングリコール(PEG)修飾することにより生体適合性を有した金ナノロッドを開発し、静脈投与による血中半減期は数時間にも及ぶことを明らかにしている。さらに担癌マウスを用いた実験で、静脈内投与した金ナノロッドはEPR(enhanced permeability and retention)効果により腫瘍組織に分布する。本モデルマウスでは心筋炎を生じているため、炎症部位での血管内皮や微小血管障害により金ナノロッドが血管外へ漏出するのであれば、心筋に金ナノロッドが集積される可能性がある。金ナノロッドを静脈投与した際の心臓を含む組織内分布は、組織を王水で溶解後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)で金の定量、あるいは、組織薄膜切片の銀増感による染色にて行うことができる(連携研究者に依頼)。具体的には下記実験項目行う。 対象:12週齢マウス(正常マウスと心不全マウスそれぞれ3匹) 投与量:金ナノロッド(PEG:gold molar ratio 1.5)300μL、尾静脈投与。 検体:投与後72時間後に心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、血液を採取。 解析:誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)で金の定量、病理所見で組織内分布確認。心不全心筋内に取り込み確認できれば、近赤外線レーザー照射により心臓局所の温熱が可能か実験を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の使用額が少ないため試薬購入資金、検査代金支払い確保のため使用を控えた。 次年度は、追加実験の消耗品、論文作成費用や学会発表・打ち合わせ旅費などに使用予定。
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Research Products
(1 results)