2012 Fiscal Year Research-status Report
不全心筋におけるミトコンドリア品質管理因子の制御機構解明及び治療への応用
Project/Area Number |
24591102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小原 幸 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80275198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
的場 聖明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10305576)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 心筋細胞 / 品質管理因子 / 心不全 / オートファジー |
Research Abstract |
本年度はラット新生仔培養心筋細胞を用いて検討した。酸化ストレス負荷としてH2O2 100microM、ミトコンドリATP感受性Kチャネル開口薬であるDiazoxiside 100microMを24時間投与した。ミトコンドリアROS産生の指標であるMitoSOXredはH2O2負荷群において明らかに増加し、ミトコンドリア膜電位指示薬であるTMRMの蛍光源弱を来した。しかし、diazoxide投与細胞では、ともに有意な変化を認めなかった。また電子伝達系阻害を行うantimysinAは100microM、2時間の投与で細胞死が誘導され、より低濃度での検討を行った。5-10 microM、2時間で顕著なMitoSOX蛍光増強と、膜電位の消失を来した。一方ミトコンドリア量の指標とされるTom20は逆に増加していたが、形態学的ミトコンドリア量と解離しており、細胞障害に伴う細胞内他蛋白減少との相対比によるみかけの増加を疑っている。 次に、体液性因子のangiotensin IIを投与して検討した。100nM 6時間ではミトコンドリア膜電位低下を認めないものの、24時間負荷で低下した。これに伴い心筋細胞アポトーシスも24時間で有意に増加した。またミトコンドリア量の指標とされるTom20が24時間付与後には有意に減少していた。ミトコンドリア量減少にミトファジーの関与を疑い、その指標とされるParkin発現を検討した。しかし、angiotensin II100 nM、10microMともにParkin発現に影響を与えずミトファジーは来していないと考えられた。 さらに培養心筋細胞に低酸素・再酸素化刺激を負荷し同様にミトコンドリア障害を検討したところ、低酸素・再酸素化後の心筋細胞において、明らかなミトコンドリアROS産生増強、膜電位の低下を認め、ミトコンドリアの形態的断片化を顕著に認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度研究実施計画のうち 当初の予定通り心不全関連ミトコンドリア障害因子としてH2O2、Diazoxide、antimysin A等を負荷しミトコンドリア障害を誘導、その程度を検証した。Ca overloadの負荷も行ったが、障害がきつく、当初予定していた心不全レベルの障害にあわせたCa負荷条件の設定は断念した。 また、ミトコンドリア品質管理因子としてParkinの発現を検討した。本年度に他のミトコンドリア分裂・融合関連因子の発現検討を行う。ミトコンドリア産生に関わるPCG1は抗体が発売元で出荷が遅れており、2013年7月購入可能と聞いているので、入手次第検討を開始する。またミトコンドリア機能解析に関わるATP産生量、酸化的リン酸化複合体活性の測定が他実験と器具が競合し行えておらず、本年度に行う。 本来25年度に予定していた神経体液性因子を用いた同様のミトコンドリア障害検討を前倒して24年度に行えた。さらに、低酸素・再酸素化の器具が使用可能であったため、これも前倒しで24年度に行うことが出来た。従って、一部実験予定の前倒し、及び器具使用の競合による25年度への変更はあるものの、おおむね順調に研究は遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も24年度に引き続き培養心筋細胞での検討を継続する。 1)心不全関連心障害因子(ROSアンジオテンシン、アルドステロン、低酸素・再酸素化)誘導性ミトコンドリア障害下における、培養心筋細胞におけるMQC関連因子の変化及び役割の検討 24年度検討において、H2O2やantimysinA負荷でミトコンドリアROS産生を増加させ、膜電位を消失し、ミトコンドリアの断片化も形態学的に観察された。本年度はまずこの断片化率を定量評価する。また障害の顕著であったantimysin負荷においてTom20を指標としたミトコンドリア量の検討では、予測に反し発現増強を認めた。本年は、ミトコンドリアDNA量の変化をreal-time PCRを用いて確認する。さらに、これらROS関連ミトコンドリア障害誘導系に加えangiotensinやaldosterone、低酸素・再酸素化刺激系も含め、昨年度行ったParkin発現検討に加え、PCG1α、mitofusin2、OPA1、Drp1発現を各刺激系で検討する。さらに高エネルギーリン酸化合物の心筋細胞内含量、ミトコンドリア酸化的リン酸化能を検討しミトコンドリア機能を測定する。さらにミトコンドリア品質管理因子の変動結果をもとにこれら因子の阻害、過剰発現を行いその影響を検討する。 2)脂肪酸構成の変化によるミトコンドリア品質管理因子への影響 飼料中脂肪酸組成量を変化させ、母親ラットに投与する。培養心筋細胞の脂肪酸構成の変化をガスクロマトグラフィ質量分析装置(GC-MS)により測定する。脂肪酸構成の変化を確認した細胞において、ミトコンドリア障害刺激下の障害レベル及びミトコンドリア品質管理因子への影響を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度も昨年同様消耗品費で全額を予定している。ラット新生仔心筋細胞培養を行うため、動物の購入に約40万円(仔付き母親ラット8,000x50匹)を予定している。抗体は昨年購入しており、本年度は不足分を4種類約20万で予定している。遺伝子改変関連試薬はLipofectamine 2種類及びshRNA購入費などで30万円を予定している。HPLCカラム及びその他一般試薬、消耗器具(MitoSOXred、glass based dish等)に約20万予定している。経費は必要最低限であり妥当と考えている。
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Research Products
(2 results)