2013 Fiscal Year Research-status Report
不全心筋におけるミトコンドリア品質管理因子の制御機構解明及び治療への応用
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24591102
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小原 幸 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80275198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
的場 聖明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10305576)
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Keywords | ミトコンドリア / 心筋細胞 / 品質管理因子 / 心不全 / GLP-1 / ミトファジー |
Research Abstract |
本年度もラット新生仔培養心筋細胞を用いて検討した。昨年度、低酸素再酸素化刺激ではミトコンドリア障害に伴うParkin発現増加を認めたため、本年度は同刺激下におけるミトコンドリアmembrane potential、ミトコンドリア量、ミトコンドリア形態、fusion促進因子 (OPA1, Mitofsin2)、fission促進因子(Drp1, Fis1)を検討した。また、事前実験でGLP1作動薬(exendin4)が低酸素再酸素化障害をapoptosis、necrosisともに抑制していたためミトコンドリアへの影響もあわせて検討した。結果、刺激による細胞死増強に合わせミトコンドリア形態は断片化を示し、膜電位の低下を伴っていた。Tom20発現によるミトコンドア量の減少は認めなかった。品質管理因子発現ではfusion因子のmitofsin2 は変化なく、OPA1はやや増加していた。一方断片化因子のDrp1は有意に増加していた。それとともに、障害ミトコンドリアを処理するParkin発現も増加しミトファジーの亢進が考えられた。GLP1作動薬は細胞死を抑制するとともに、fusion因子をさらに有意に増強、Drp1の増加を緩和し、Parkin発現の減少を認めた。また膜電位の維持されたミトコンドリアが多く、断片化が軽減していた。このGLP1analogueの作用機序の検討までは至らなかったが、Akt活性化の関与を既報より考えている。またミトコンドリアの機能検討として、細胞内ATP含量を測定し同様の傾向を認めている。 さらに、in vivoの実験としては、脂肪酸の一種であるEPA投与が心筋梗塞後心不全モデルにおいてOPA1発現を維持するとともに、形態学的にも心筋梗塞辺縁部残存心筋細胞において断片化ミトコンドリアの減少を観察し得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度、昨年度の実験結果を受け神経体液性因子刺激と比し低酸素再酸素化障害がミトコンドリア障害系として適当と考えられ、実験計画に従いミトコンドリア品質管理因子として知られる(Parkin、mitofsin2、OPA1、Drp1)の検討を行った。Fission因子とされていたFis1の発現も当初検討していたが、その後の報告でfissionへの関与が少ないことが報告され、検討を中断した。今年度、品質管理因子を制御し得る薬剤としてGLP1analogueを見いだした。ミトコンドリア機能評価としてのATP産生量の測定も予定通り行えた。しかし共同研究施設である京都府立医大にて行う予定であった酸化的リン酸化複合体活性の測定は、実験器具が他実験と競合し行えなかった。但し、ミトコンドリアは凍結保存してあるためそれを用いて、26年度4月より開始している。品質管理因子の制御に関与するGLP1の細胞内シグナルは検討出来ておらず、SiRNAを用いた阻害実験、in vovo心不全モデルでの検討とともに、26年度に行う。 本来26年度に予定していたEPAのミトコンドリア形態への影響は、前倒しで25年度に行えたたが、培養実験が低酸素モデルでの実験のみとなったため行えておらず、26年度に行う。 従って、一部実験予定の前倒し、及び実験の順序変更による26年度への変更はあるものの、おおむね順調に研究は遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度の継続として培養心筋細胞を用い、未実施項目である酸化的リン酸化複合体活性の測定を行う。またGLP1analogueによるfusion因子増強、fission因子減弱が薬剤固有作用か、二次性の作用か、またその細胞保護への関与度を調べるための阻害実験を行う。さらに細胞内シグナルを検討する。同様の検討を、GLP1analogue に変わりEPA投与心筋(慢性、急性投与)においてもミトコンドリア保護、品質管理因子への影響を検討し、in vivo心筋梗塞モデルで認めたOPA1の保持機構が直接の作用か否かを検討し、直接作用の場合には作用機序の同定を行う。 in vivo 心不全モデルでの検討は、培養細胞で保護作用を見いだしたGLP1analogueを用いて行う予定であった。しかし、既報においてGLP1受容体analogueの心筋保護は報告されているものの、2014年に入り心室筋に同受容体発現を認めないとの報告が他施設より複数なされた。当研究室においても成獣心、及び新生仔ラット心筋における受容体発現を検討し、新生仔ラット心筋にはGLP1受容体発現を認めるものの、成獣心には発現を認めなかった。さらに、虚血刺激を加えてその発現レベルが変化するか否かも検討したが、発現が増強されることはなかった。従って、心不全モデルでの検討は、細胞内second messenger同定後、にその細胞内シグナルを動かしうる系を用いて検討することを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
in vivoのSDラット心不全モデルを用いた検討を次年度に持ち越したため、実験動物相当額が次年度に繰り越しとなった。また脂肪酸EPAの投与実験も、in vivo実験を優先し、培養細胞実験を次年度としたため、EPAの試薬代金も次年度に繰り越しとしている。 心不全モデルラットを作成、及び培養細胞にのミトコンドリア脂質プロファイルの変更実験を行い、当初の実験計画を遂行し繰り越した金額を適正に使用できる見込みである。
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