2013 Fiscal Year Research-status Report
肺高血圧症血管平滑筋におけるNotch-TGFbeta-PIAS1経路の解明
Project/Area Number |
24591108
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小和瀬 桂子 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50594264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉林 正彦 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00215047)
中原 健裕 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (00599540)
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Keywords | 肺高血圧症 |
Research Abstract |
肺動脈性肺高血圧(PAH)の病態にはtransforming growth factor (TGF)-betaが深く関与している。私たちは以前、血管平滑筋細胞において、TGFbetaが平滑筋分化マーカーを誘導する機序に、ユビキチン様修飾(SUMO)化E3リガーゼのprotein inhibitor of activated STAT1 (PIAS1)が関与することを見出した。また、Notchシグナルも平滑筋分化マーカーの発現を誘導することを示した。本研究は、PAHの発症と進展には、血管平滑筋細胞の形質変換や分化誘導の調節異常が本質的な役割を持つとの観点から、Notch-TGFbeta-PIAS1経路を解明することを目的とする。 培養ヒト平滑筋細胞(PASMC)をTGFbetaで刺激したところ、平滑筋分化マーカーが誘導され、PIAS1とSUMO化E3リガーゼであるubc9のsiRNAを用いたところ、この誘導は抑制された。さらに、血管の石灰化を抑制し肺高血圧患者中の血清で高値を示すosteoprotegerin (OPG)の発現も、PIAS1のsiRNAで抑制された。さらに、OPGプロモーター/レポーターコンストラクトを作成したところ、PIASファミリーやSRFの過剰発現によりOPGプロモーターは著明に活性化された。私たちは過去に、血管平滑筋において、TGFbetaがSRFを誘導し、PIAS1とSRFが相乗的に平滑筋マーカーを誘導する事を示しているため、OPG発現にもこれらの因子が関与している可能性が示唆された。 また、今回、低酸素に加え、VEGF-R抗体を用い、より病態に近いマウスモデルの作成を行い、既報の通り、肺動脈周囲の炎症性細胞の浸潤と、肺血管平滑筋増生を認めた。また、膠原病肺のモデルとして、fibrillin-1ノックアウトマウスを用い、同様に肺血管平滑筋増生を認めた。これらのマウスモデルを用い、今後組織学的検討を行っていく予定である。 さらに、上記の結果を元にし、肺高血圧症例に対する臨床学的検討も併せて行う予定であり、当院のIRB審査が終了したため、検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肺高血圧症例やマウスモデルを用いた免疫染色において、抗体の非特異的反応が目立つため、現在適切な抗体を検討しているところである。また、マウスモデルを作成するのに当たり、低酸素刺激だけではなく、VEGFレセプター抗体を用いる方法がより適切なモデルとなるため、その作成法を検討するのに時間を有した。さらに、肺高血圧症例の剖検例が多くないため、ヒト剖検例でのNotchシグナルやPIAS1、TGFbeta等のシグナルの免疫染色の結論を出すには難しい段階である。そのため、今後、剖検例だけではなく、肺高血圧症例の血清を用い、上記因子と肺高血圧の程度との関連を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素誘発性肺高血圧モデルマウスやfibrillinノックアウトマウスを用い、その際のNotch1, Dll4, HERP1, TGFbeta, TGFbetaRII, BMP2, BMP2R等の発現変化を免疫染色やreal-time PCR法等で検討する。また、平滑筋分化マーカー発現も同時に測定し、これらの因子が、平滑筋のどの分化段階で発現しているかも明らかにする。同様に、OPG発現変化やそれに伴う石灰化因子の発現の変化も検討し、平滑筋の形質変換・分化転換についても検討する。また、これらのモデルマウスにNotchシグナルを阻害するγセクレターゼ阻害薬を投与し、肺高血圧の程度の変化や、上記因子の発現変化の検討を行う。 PASMCにおいて、TGFbetaによる平滑筋分化マーカーの誘導やOPG発現にPIASファミリーやSRFが関与することを示したため、種々の転写因子が結合する部位に変異を持つ平滑筋マーカーやOPGのプロモーター/レポーターコンストラクトを用いて、ルシフェラーゼアッセイにてNotchシグナルやTGFbetaシグナルの反応部位を検討し、ChIPアッセイにて結合する転写因子を同定する。さらに、その因子に対して、SUMO化の検討も行う。また、近年、肺高血圧症の発症の仮説として、末梢血管にある前駆細胞群の増殖や分化転換が提唱されている。そのため、上記の検討を肺血管内皮細胞でも行い、これらのシグナルが平滑筋様細胞やtransitional cellsへの分化転換を誘導するか否かを検討する。また、低酸素刺激についても、上記検討を進める。 また、ヒト剖検例での検討も進める予定であるが、症例数が少ないため、今後、さらに肺高血圧症例の血清を用い、上記シグナルに関わる因子の測定と肺高血圧の重症度について、検討を進める予定である。既に本学のIRBで審査承認済みである。
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