2012 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージ極性変化による動脈硬化病変進展の分子機序解明と制御法の開発
Project/Area Number |
24591109
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武田 憲彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40422307)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / 血管新生 / マクロファージ |
Research Abstract |
マクロファージM1/2極性変化と動脈硬化病変進展の関連性 動脈硬化進展およびその不安定化の過程において、プラーク内の未熟な血管造生とその破綻が重要な役割を果たしていると考えられている。本研究では未熟な血管造生による動脈硬化病変進展モデルとしてApoEノックアウトマウスを用いたAngiotensinII負荷を行い動脈瘤進展過程において血管病変に集積する炎症細胞、マクロファージの解析を開始した。しかしながら現在までの検討により、動脈拡張部よりフローサイトメーターを用いて解析するのに十分な炎症細胞数を得ることが困難であることが分かった。そこでもう一つの動脈瘤進展モデルとして、局所の炎症をより強く誘発するCaCl2負荷モデルでの解析に着手している。 上述のように、動脈硬化病変の安定性にはプラーク内血管の成熟、未成熟さが重要な役割を果たしていると考えられている。本研究での研究仮説はマクロファージM1/M2極性が血管の成熟度を制御することにより動脈硬化病変の安定性に貢献していることを明らかにすることであるが、残念ながらAngII負荷による動脈瘤進展モデルを用いた本仮説の検証が困難であることが分かった。そこで引き続きCaCl2負荷による解析を開始しており、現在まで既に動脈瘤の進展を確認している。今後、血管病変に集積する炎症細胞を回収し、そのマクロファージ極性を解析する予定である。併せて、未熟な血管造生のモデルとして確立されている腫瘍内血管新生モデルを用いた解析も今後開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画においては、動脈硬化病変不安定化におけるマクロファージM1/M2極性の役割を、動脈硬化進展モデル、腹部動脈瘤発症モデルを用いて検証することを目的としていた。特に動脈硬化プラークの不安定化には、プラーク内血管の未成熟な発達が大きな役割を果たしていると考えられている。当初の計画通り、動脈瘤発症モデルとして、ApoEノックアウトマウスにおけるAngiotensinII負荷を行い、既報通りの動脈瘤の進展を確認した。しかしながら、動脈瘤局所に集積する炎症細胞、マクロファージ数がフローサイトメーターでの解析に十分な量を得ることができなかった。 その為、別の手法として動脈局所の炎症を惹起するCaCl2負荷モデルを用いて動脈瘤発症の誘導を行い、動脈径の拡大を確認している。今後本モデルを用いて、マクロファージ極性が血管の成熟度、動脈硬化病変の安定性にどのような役割を果たしているかを検証する予定である。 更に未熟な血管新生におけるマクロファージ極性の役割を検証するために、動脈硬化モデルとは異なるものの、血管の成熟度を測るモデルとして良く用いられているTumor xenograftモデルを用いて、腫瘍内血管リモデリング過程におけるマクロファージ極性の変化を解析することとした。今後、M1/M2極性変化を経時的に解析することにより、マクロファージ極性が血管リモデリングにおいて果たしている役割の解析を遂行する予定である。当初予定していた動物実験モデルは残念ながら本研究仮説の検証に最適とは言えなかったが、異なる2つのモデル(CaCl2による動脈瘤進展モデルおよび腫瘍内血管新生モデル)を用いた解析に既に着手しており、本研究仮説の検証に貢献すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
血管リモデリングにおけるM1/M2マクロファージ極性変化の役割を検証する。これまでの経過より、CaCl2負荷による腹部大動脈瘤モデルに加えて、未熟な血管新生モデルとして腫瘍内血管新生モデル過程におけるM1/M2マクロファージ極性の経時的変化を観察する。更にHIF1, HIF2を介して制御される標的遺伝子がM1/M2極性においてどのような役割を果たしているかを解析することで、M1/M2マクロファージの役割、および介入する手法の開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
CaCl2負荷による動脈瘤進展モデルに加えて、未熟な血管新生モデルとして、腫瘍血管新生モデルを用いた解析を行う。具体的にはマウス飼育、皮下腫瘍モデル、病理学的解析およびフローサイトメーターによる解析を行う。マクロファージ特異的HIF1, HIF2欠失マウス、およびHIF標的遺伝子の役割について解析を継続する。 上記研究経過につき関係する学会への参加、発表を行うことにより適切な情報収集を継続する。
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