2012 Fiscal Year Research-status Report
心腎連関の原因物質としての尿毒症毒素の血管傷害メカニズム
Project/Area Number |
24591111
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
吉田 雅幸 東京医科歯科大学, 生命倫理研究センター, 教授 (80282771)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坂 瑞子 東京医科歯科大学, 生命倫理研究センター, 助教 (00581711)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 慢性腎臓病 |
Research Abstract |
慢性腎臓病は心血管疾患発症の独立した危険因子であるが,なぜ腎臓病の悪化が心血管に与える影響はほとんどわかっていなかった.申請者は最近、尿毒症毒素の一種であるインドキシル硫酸が血管内皮細胞,および単球を活性化させ、血管傷害を悪化させることを見出した。本研究はインドキシル硫酸による炎症惹起メカニズムを明らかにし、慢性腎臓病において高率に合併する心血管疾患発症の予防を目指した研究基盤を確立することが目的である。 申請者はインドキシル硫酸がアリルハイドロカーボン受容体(AhR)に結合することに着目した.AhRは2,3,7,8-tetrachrolodibenzo-p-dioxin (TCDD) に代表されるダイオキシン類の核内受容体であり,AhRの活性化は動脈硬化を進展させることが報告されている.ヒト臍帯静脈内皮細胞のAhRをノックダウンさせたところ,インドキシル硫酸で誘導される白血球接着および接着分子発現の上昇が著明に抑制された.このメカニズムを検討したところ,インドキシル硫酸で誘導される酸化ストレス,およびNFkB, JNKなどの細胞内シグナル伝達系に影響は及ぼさなかった.しかしながら,転写領域の活性化を介し,接着分子の発現を上昇させていることが明らかとなった.これらの結果からインドキシル硫酸は酸化ストレスだけではなく,転写因子の活性化を介して炎症を増強していることが示唆された.インドキシル硫酸が転写レベルで炎症を悪化させる報告は初めてである. 慢性腎臓病においては全身が慢性炎症状態にあることによって心血管疾患を起こしやすくなっていると考えられる.本研究において,インドキシル硫酸がこの炎症を増強するメカニズムが詳細に明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではインドキシル硫酸の受容体としてのアリルハイドロカーボン受容体(AhR)の機能解析を目的に検討を行った.培養ヒト臍帯静脈内皮細胞において,インドキシル硫酸の炎症増強作用において,AhRが酸化ストレス,細胞内シグナルに関与せず,直接転写領域を活性化させ,炎症を増強させることを見出した.さらにin vivoにおけるインドキシル硫酸の役割を解析するため,血管内皮細胞特異的AhRノックアウトマウスの作製を完了した.本成果は当初予定した計画より進展があったものと考える. 一方で,炎症性単球に与えるインドキシル硫酸の影響を解析していたが,インドキシル硫酸をマウスに飲水投与すると,他の抱合体が血中で上昇することが明らかとなった.本方法ではインドキシル硫酸の影響が解析できないと判断した.浸透圧ポンプを用いることでインドキル硫酸のみを上昇させることを見出したため,本方法を用いて検討中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
In vivoにおいて,インドキシル硫酸の受容体としてのAhRの機能を解析するために検討を行う.まず,血管内皮特異的AhRノックアウトマウス,ないしは対照マウスに片側尿管結紮を施し,腎機能低下による炎症状態を惹起する.生体内可視化システムIVMにより血管壁へ接着する炎症性単球数および白血球数を測定し、インドキシル硫酸の影響を検討する。また,同処置を施したマウスより血管を採取し,接着分子や炎症性サイトカイン,ケモカインの発現を検討する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず実験に供するマウスの購入・飼育費用を確保し、さらにマウス血管,白血球におけるAhR,接着分子等の発現を解析するために種々の抗体・生化学用試薬を購入する。
|
Research Products
(1 results)