2014 Fiscal Year Research-status Report
mTOR関連細胞生存シグナルの制御による慢性閉塞性肺疾患発症およびその機序の解明
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24591127
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
安尾 将法 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (20402117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花岡 正幸 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20334899)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 肺気腫 / 炎症 / 病因 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は主として、ラット肺に起こっていた気腔の拡大および小円形細胞の集簇の内、小円形細胞の集簇が肺に何らかの炎症を起こしているのかについて検討した。また3W、6W、12WのSirolimus投与ラットを作成したが、3,12Wのラットの解析が途上であったため、これについてVEGF, phospho-Aktを中心とした細胞生存シグナルについてウエスタンブロット法による解析を行った。 小円形細胞の集簇による炎症について:免疫組織化学的検討の結果、集簇している細胞の主体がCD3, CD8陽性T細胞であったため、CD8陽性細胞に関連する炎症惹起因子としてのGranzyme Bの活性をラット肺および血清を用いて測定した。結果は3W投与ラットではGranzyme Bの上昇なし。6W, 12Wのラット肺組織で有意にGranzyme Bの活性が上昇していた(血清のGranzyme Bは有意変化なし)。またこの炎症にはNFκBの関与はないと考えられた。 細胞生存シグナルについて:SirolimusがmTORのシグナルを抑制していることの証左であるphospho-S6K1はSirolimus投与3Wで有意に低下していた。VEGF, phospho-Aktについては3Wから低下が始まっていたが、アポトーシスの亢進はみられなかった。12Wでは細胞生存シグナルの有意な低下に加えて、アポトーシスも有意に亢進していた。 以上の結果から、気腔の拡大は細胞生存シグナルの抑制によって起こることが推定された。一方、Sirolimusの長期投与は文献的にもCD8陽性T細胞の増加を招くことが報告されており、CD8陽性T細胞の増加は細胞生存シグナルの抑制とは別に肺に炎症を来している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由:当初、CD8陽性T細胞の集簇は一般的にCOPD肺でも見られる炎症細胞の一部と予想したが、文献的検索によりSirolimus長期投与によってCD8陽性T細胞の一部のクローンがモノクローナルに増殖してくること、またこのCD8陽性T細胞はSirolimusの細胞生存シグナル抑制を受けないことがわかってきた。このことと、3W、6W、12Wの時系列による今回の我々の検討結果から、細胞生存シグナル抑制による気腔の拡大とCD8陽性T細胞の集簇とは別機序によるものと考えた方が良いと予想された。したがって、CD8陽性T細胞の集簇は臨床的に経験されるSirolimusによる薬剤性肺障害と関連があるのではないかと思われ、これを検討するために研究費の延長申請を行い受理された。当初予定よりもすでに1年計画を延長しているためやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.臨床的に経験されるSirolimusによる薬剤性肺障害を想定し、ラット肺組織および血清でのKL-6の上昇の有無を検討する。 2.これらの研究成果を海外国際学会にて報告する。
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Causes of Carryover |
当初計画に加えて、肺における炎症細胞浸潤の実態とそれが与えている影響を評価する必要が生じ、期間延長をしたため予定していた学会発表を行うことができず、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記ラット肺組織および血清でのKL-6上昇の有無を検討するために、次年度使用額をH27年度請求額を併せて使用する。これら研究成果を海外及び国内での学会にて報告する。
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