2012 Fiscal Year Research-status Report
B7-H1発現の薬物的制御によるCOPD・喘息の増悪の治療を目指す基盤研究
Project/Area Number |
24591132
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松元 幸一郎 九州大学, 大学病院, 講師 (60325462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 聡 九州大学, 大学病院, 助教 (50380530)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
ヒト気道上皮培養株BEAS-2Bを合成2本鎖RNAであるpoly ICあるいは呼吸器合胞体ウィルス(RSV)で刺激することによってB7-H1発現を誘導させる実験系を使用し、汎PI3-kinase阻害剤、選択的PI3-kinase-gamma阻害剤、および選択的PI3-kinase-delta阻害剤の影響を検討した。 poly IC刺激によるB7-H1発現誘導は汎PI3-kinase阻害剤投与で強力に抑制され、選択的PI3-kinase-delta阻害剤で部分的に阻害され、選択的PI3-kinase-gamma阻害剤は影響を与えなかった。Western blottingによってBEAS-2B細胞におけるPI3-kinase-delta蛋白発現を認め、その蛋白発言はPI3-kinase-deltaに対するsiRNA処置を48時間おこなうことによって抑制され、またB7-H1発現も部分的に抑制された。B7-H1発現は転写因子NF-kappaB活性化を介するが、PI3-kinase-delta阻害剤投与はNF-kappaBの活性化には影響しないことをWestern blottingおよび蛍光免疫法で確認した。また、PI3-kinase-deltaの活性化はオキシダント産生と密接に関連していることがしられているが、poly IC刺激によってBEAS-2B細胞にオキシダントが産生されること、抗オキシダント剤であるN-アセチルシステイン投与がB7-H1発現を抑制することを確認した。さらにこのpoly ICによるオキシダント産生はキサンチンオキシダーゼ系の活性化を介することを確認した。 これらの実験結果から、ウィルス感染によるB7-H1発現誘導にはキサンチンオキシダーゼ系活性化によるオキシダント産生とPI3-kinase-delta活性化が関与することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はB7-H1発現をsiRNAによって制御する基礎実験を先行させる予定であったが、予備実験として行っていたPI3-kinase-delta系の解析データ結果により、同酵素系に対する低分子化合物がウィルス感染によるB7-H1発現の人為的制御に有望である可能性が示された。従って、siRNAもPI3-kinase-delta系およびそれに関連する分子群を標的として作成し、効果を検証することがより治療的視点からはのぞましいと考えた。おおむね順調としたのは、in vitroの実験系の遂行に多くの時間的・資金的努力を要し、in vivoでの実験系によるスクリーニングを次年度に先延ばししたことを考慮したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究により、ウィルス感染による気道上皮でのB7-H1発現の制御におけるPI3-kinase-deltaの関与が明らかになったため、siRNAを含めた低分子化合物のスクリーニングを行う。なお、併用による治療効果の増強や減弱は臨床的に重要であるため、抗コリン薬やPDE4阻害薬、長時間作用型beta2刺激薬、ステロイド薬などとの併用効果を検証する。また、マウスのpoly IC気管内投与による気道炎症モデルを使用し、in vitroの研究でスクリーニングした低分子化合物のB7-H1発現抑制効果および疾患表現型への治療効果を検証する。さらに卵白アルブミンを抗原とするマウス喘息モデルにおいて抗原暴露相でpoly ICを気管内投与し、増悪の解析モデルとする。本モデルで低分子化合物のスクリーニングを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費(1200000円を予定)および間接経費(360000円を予定):気道上皮培養株を用いたin vitroスクリーニング系の運用費、各種低分子化合物の購入、マウスpoly IC気管内投与によるin vivoスクリーニング系の運用費(マウス購入費を含む)に充当する。すなわち、siRNAを含めた低分子化合物のスクリーニングを行う。なお、併用による治療効果の増強や減弱は臨床的に重要であるため、抗コリン薬やPDE4阻害薬、長時間作用型beta2刺激薬、ステロイド薬などとの併用効果を検証する。また、マウスのpoly IC気管内投与による気道炎症モデルを使用し、in vitroの研究でスクリーニングした低分子化合物のB7-H1発現抑制効果および疾患表現型への治療効果を検証する。
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