2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性閉塞性肺疾患におけるフェノタイプ解析と分子病態解析による新規診断治療法の確立
Project/Area Number |
24591139
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
中山 勝敏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (40321989)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 肺機能 / 肺機能早期減衰 / 全身性炎症 / TNF-alpha |
Research Abstract |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙を主因とし気道炎症から進行性の気流閉塞を呈する病態である。これまで我々は、ヒト手術検体を用いた細胞レベルの検討や当院外来COPD 患者のコホート研究を行ってきた。これらを発展させ、血液サンプル等による分子細胞レベルの表現型とCOPDの臨床表現型の関連を検討することが課題である。臨床表現型の中でも早期に肺機能が低下する群(Rapid Decliner:肺機能早期減衰群)は、予後の観点からも重要である。今回我々は、COPDのRapid Decliner群を規定するリスク因子を検討した。 当院呼吸器内科を受診しているCOPD患者45名について、肺機能の減衰と各種因子との関連を検討した。各種因子としては、年齢、性別、肺機能の他、BMI、Smoking index、治療薬、併存症、さらに全身炎症指標(TNF-a、hrCRP)、酸化ストレス指標(8-OHdG/Cr)を調べた。1年後に肺機能の再検し、FEV1の年間減少量が60mL以上の場合を肺機能早期減衰群、それ以外を非肺機能早期減衰群とした。 結果、肺機能早期減衰群は15名、非肺機能早期減衰群は30名であった。多変量解析の結果、肺機能早期減衰に関与する因子としてはチオトロピウムの使用がOR= 0.095 (95%CI= 0.012- 0.725) P=0.023、TNF-a初期値 <1.0pg/mL であることがOR=20.8 (95% CI= 1.77- 250.0) P=0.016であった。即ち、チオトロピウムによる治療は早期減衰を予防する可能性が示され、TNF-a初期値が高値でない方が早期減衰となる可能性が示された。後者についてさらに検討すると、肺機能早期減衰群はTNF-a初期値は低値であるが、1年後には高値となっており、将に全身性炎症が発現しようとしている状態であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで我々は、ヒト手術検体を用いた細胞レベルの検討や当院外来COPD 患者のコホート研究を行ってきた。これらを発展させ、血液サンプル等による分子細胞レベルの表現型とCOPDの臨床表現型の関連を検討することが課題である。臨床表現型の中でも早期に肺機能が低下する群(Rapid Decliner:肺機能早期減衰群)は、予後の観点からも重要である。 今回我々は、COPDの肺機能早期減衰群を規定するリスク因子を検討することで、全身性炎症が将に発現する時に肺機能の早期減衰が起こる可能性が示唆された。全身性炎症が顕在化していないCOPD患者にチオトロピウム等LAMAの治療介入をするとで、肺機能早期減衰を回避できる可能性が示唆されたと云える。これはCOPDの治療戦略の考察において重要なポイントとなる事象であり、研究目的の一つの領域(肺機能早期減衰と云う表現型に関する解析)の達成ともいえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として重要な点がいくつかあげられる。以下に5つのポイントを挙げる。 1)登録患者数をより増大させる事、2)観察期間を長くして、予後としての急性増悪・入院・死亡・肺機能早期減衰を全て検討する事、3)これを用いたクラスター分類等により臨床表現型の確立を目指す事、4)一方、分子細胞レベルの表現型として、全身炎症指標・酸化ストレス指標以外に、老化加速指標、過疲労指標等を検討する事、5)臨床表現型と分子細胞レベル表現型の関連を検討し、診断・治療への応用へと展開する事。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度同様、患者登録、患者サンプルの収集を行う。分子細胞レベルの表現型の解析の為、細胞培養、PR-PCR、ウエスタン、免疫組織染色等をおこなう。 当初の予定通り、消耗品のみで165万円を予定している。
|
Research Products
(6 results)