2013 Fiscal Year Research-status Report
Toll様受容体システムによる抗原依存的な気道分泌調節機構の解明
Project/Area Number |
24591150
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
玉田 勉 東北大学, 大学病院, 講師 (80396473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 正之 東北大学, 大学病院, 教授 (70374999)
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Keywords | 気道粘膜下腺 / パッチクランプ / Toll様受容体 / アセチルコリン / 粘膜免疫 / 電解質分泌 / 一酸化窒素 / Flagellin |
Research Abstract |
COPDなどの難治性の慢性気道炎症疾患における気道感染はしばしば気道過分泌を招き、病態の増悪に深く関与することが知られている。気道分泌は気道に分布する迷走神経末端からのアセチルコリンなどの神経伝達物質によって調節されていると考えられている。しかし、ウイルス感染時に比して細菌感染時により強い気道分泌増強が認められる調節機序など詳細には解明されていない点も多い。本研究では、Toll様受容体 (TLR)システムを利用した抗原依存的な気道分泌調節機序が存在しているとの仮説のもとに研究を行っている。最終的にはそれぞれの認識抗原によって惹起される分泌調節の臨床的意義を完全解明し、気道分泌異常が深く関与する難治性慢性気道炎症疾患に対する新規治療戦略を確立することを目標としている。今年度も昨年に引き続き、TLR2, 3, 5, 7, 9の候補サブタイプによる網羅的な機能解析を行った。慢性気道感染の増悪には、グラム陽性菌、グラム陰性菌、ウイルス感染など多くの病原菌が関与するため、今回はTLR 2,3,4,5のリガンドとしてそれぞれPGN, LTA, Poly(I:C), LPS, Flagellinを用いた。ヒトと類似した性質をもつブタ気管粘膜下腺細胞を単離し、パッチクランプ法を用いて水分分泌の程度をイオンチャンネルから流出する電荷量によって評価した。これらの中でLPSとFlagellinがそれぞれ気道分泌腺表面に発現するTLR4やTLR 5を刺激し、細胞内カルシウムの更なる上昇を伴わない機序で分泌増強因子として機能することが明らかになった。気道過分泌を特徴とする慢性気道炎症疾患においてはしばしば緑膿菌が気道表面へ定着しているが、LPSとFlagellinを共に有することが気道過分泌と関連している可能性が考えられた。以上の研究成果は、米国生理学学会雑誌に投稿し掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の当初の計画であった、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR9を候補として選択し、それぞれのリガンドであるPeptidoglycan(PGN)、poly (I:C)、Flagellin、Imiquimod(R-837)あるいはR-848、CpG DNAを用いて機能解析を行うことができた。今年度はFlagellinの増強効果が初めて確認され、TLR5中和抗体あるいは特異的結合阻害剤などで前処理した状態で同様の実験を繰り返し、増強効果/抑制効果が解除されることも確認できた。この効果に関する細胞内細胞内シグナル経路にはNO/cGMP/PKG系が重要であることも解明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画よりも進展があったったため、平成26年度に購入予定であった高速度カメラ付き倒立顕微鏡を平成25年度中に導入することができた。このことにより、気道分泌だけでなく気道表面における粘液線毛輸送の直接的な観察が可能となり、本研究の主要な目的であるTLRおよびそれぞれのリガンド認識によって惹起される分泌調節の臨床的意義の完全解明が可能となる。平成26年度はTLR5のリガンドであるflagellinが気道表面の粘液線毛運動に対する影響を確認する予定である。一方でTLR2、TLR3、TLR4リガンドの粘液線毛運動対する長期的影響に関しても確認する予定である。さらにいまだ未解明であるTLR7、TLR8の気道粘膜下腺細胞での発現および分泌機能への影響を確認する予定である。影響が確認されれば細胞内メカニズムについても解明を進め、さらには粘液線毛運動に対する影響も確認する。このように気道分泌および気道粘液線毛運動系に対するTLRsサブタイプの影響を網羅的に解析することで、本研究の主要な目的であるTLRおよびそれぞれのリガンド認識によって惹起される分泌調節の臨床的意義の完全解明が可能になり、将来的に気道分泌異常が深く関与する難治性慢性気道炎症疾患に対する新規治療戦の基礎を得ることができるものと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。 平成25年度に購入した機器を用いてTLR5のリガンドであるflagellinが気道表面の粘液線毛運動に対する影響を確認する予定である。一方でTLR2、TLR3、TLR4リガンドの粘液線毛運動対する長期的影響に関しても確認する予定である。さらにいまだ未解明であるTLR7、TLR8の気道粘膜下腺細胞での発現および分泌機能への影響を確認する予定であり、これらの研究を遂行するために使用する予定である。
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